「申請したのに、いつまでも返事が来ない」「なぜ断られたのか教えてくれない」——昔はこんな不満がたくさんありました。
そこで平成5年にできたのが行政手続法。役所の仕事の進め方(手続)を決めたルールブックです。目的は公正の確保と透明性の向上。つまり「国民が納得できる形で仕事をしてね」という法律です。
行政手続法がカバーする5つの場面
行政手続法が面倒を見るのは、次の5つです。
- 申請に対する処分:「許可してほしい」という申請への対応
- 不利益処分:許可の取消しなど、不利益を与える処分
- 行政指導:お願いベースの行政(第6回で学びました)
- 届出:役所への「お知らせ」
- 意見公募手続:パブリックコメント。ルールを作る前にみんなの意見を聞く
逆に、刑事事件の手続や、国会・裁判所の手続には適用されません(適用除外)。
「刑事事件手続は行政手続法が規律する手続である」は誤り(適用除外)。「処分のみを規律する」も誤り(行政指導・届出・意見公募も規律)です。
申請のルール① ― 審査基準は「義務」
窓口で申請を受ける側の役所には、守るべきルールがあります。
まず審査基準(合格・不合格の判断基準)。これは定めなければならない=義務です。しかも「できる限り具体的に」。さらに、行政上特別の支障がある場合を除き、原則として公にしておく必要があります。
たとえるなら、テストの採点基準を先生があらかじめ作って、教室に貼り出しておくイメージ。基準を隠したまま採点してはいけないのです。
「審査基準の設定は努力義務である」は誤り。審査基準は義務です(行政手続法5条)。
申請のルール② ― 期間は「努力義務」、拒否の理由は「義務」
標準処理期間(審査にかかるおおよその日数)は、定めるよう努める=努力義務。ただし定めたときは公表が義務になります。
そして申請が役所に到達したら、遅滞なく審査を開始しなければなりません。「あとまわしにして寝かせておく」のはNGです。
申請を拒否するときは、理由の提示が義務。書面で処分するなら、理由も書面で示します。「なんとなくダメ」は許されません。
まとめると——審査基準=義務/標準処理期間=努力義務/拒否の理由提示=義務。
「標準処理期間の設定は義務」→誤り(努力義務)。「拒否処分の理由提示は努力義務」→誤り(義務)。義務と努力義務を入れ替えるひっかけが定番です。
「義務か努力義務か」を見抜くコツ
条文の言い回しで判別できます。「〜しなければならない」=義務、「〜努めなければならない」=努力義務です。
覚え方のイメージは、基準と理由は約束(義務)、日数は目標(努力義務)。「何を基準に判断するか」と「なぜダメだったか」は国民の納得に直結するから絶対の約束。「何日かかるか」は事案によって変わるから目標どまり、と理解すると忘れません。
申請処分・不利益処分・行政指導・届出・意見公募。刑事・国会・裁判所は除外
審査基準=義務・原則公開/標準処理期間=努力義務(定めたら公表義務)
拒否の理由提示=義務。申請が届いたら遅滞なく審査開始
📒 この記事のまとめ
行政手続法は「役所の仕事の進め方」を定めたルールブックです。
- カバーは5場面。刑事・国会・裁判所の手続は適用除外
- 審査基準=義務・原則公開/標準処理期間=努力義務(定めたら公表義務)
- 拒否の理由提示=義務。届いたら遅滞なく審査開始
次回は後編、「不利益処分(聴聞と弁明)・届出・意見公募」です。
確認問題(全5問)
問 1
行政手続法が規律する手続として、誤っているものはどれか。
- 行政指導
- 刑事事件手続
- 届出
- 意見公募手続
💡 ヒント
5つの場面に含まれない、✕マークが付いていたものはどれでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
刑事事件手続や国会・裁判所の手続には行政手続法は適用されません(3条)。行政指導・届出・意見公募手続は規律対象です。
問 2
行政手続法の目的・性格に関する記述として、正しいものはどれか。
- 行政手続法は、行政運営の公正の確保と透明性の向上を目的とする。
- 行政手続法は、国会・裁判所の手続にも適用される。
- 行政手続法は、処分以外の手続を一切規律しない。
- 行政手続法は、意見公募手続を規律しない。
💡 ヒント
この法律が生まれた理由(国民の不満)を思い出してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
行政手続法は行政運営の公正の確保と透明性の向上を目的とする一般法です。国会・裁判所の手続は適用除外(Bは誤り)、行政指導・届出・意見公募も規律します(C・Dは誤り)。
問 3
行政手続法上の申請に対する処分に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 行政庁は、審査基準をできる限り具体的に定めなければならない。
- 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければならない。
- 行政庁は、申請が到達しても、審査の開始を任意の時期まで遅らせることができる。
- 行政庁は、申請を拒否する処分を書面で行うときは、理由も書面で示さなければならない。
💡 ヒント
申請書を引き出しに「寝かせておく」ことは許されていたでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
申請が事務所に到達したときは、遅滞なく審査を開始しなければなりません。審査開始を任意に遅らせることはできません。
問 4
審査基準・標準処理期間に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 標準処理期間は、定めるよう努めなければならない。
- 標準処理期間を定めたときは、公にしておかなければならない。
- 審査基準の設定は、行政庁の義務である。
- 標準処理期間の設定は、行政庁の義務である。
💡 ヒント
「日数は目標」でした。目標は義務だったでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
標準処理期間の設定は努力義務です(6条)。ただし定めた場合の公表は義務。審査基準の設定は義務です(5条)。
問 5
申請を拒否する処分の理由の提示に関する記述として、正しいものはどれか。
- 申請を拒否する処分の理由の提示は、努力義務である。
- 申請を拒否する処分をするときは、原則として理由を示さなければならない。
- 書面で処分する場合でも、理由は口頭で示せば足りる。
- 理由の提示は、申請者から求めがあった場合に限り必要となる。
💡 ヒント
「なんとなくダメ」は許されるでしょうか。基準と理由は「約束」でした。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
申請拒否処分には理由の提示が義務づけられています(8条)。書面で処分するときは理由も書面で示します。求めの有無にかかわらず必要です。


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