ここまでは、採用・服務・処分と「職員としての立場」に関わる話でした。
今回からは、働く条件そのものに入ります。給料はどう決まり、どう払われるのか。そもそも「勤務条件」とは、どこまでを指す言葉なのか。
今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。
「勤務条件」は思ったより広い
勤務条件とは、ひとことでいえば働く条件の全般です。給与や勤務時間はもちろん、休日・休暇、昇任や懲戒の基準、さらに労働に関する安全衛生や災害補償まで含みます。
「安全衛生や災害補償は勤務条件ではない」と切り離してしまうのは、まちがいです。買い物かごに、給料袋も時計もヘルメットも救急箱も入っている、とイメージしてください。
「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。」
「地方公共団体は、この法律に基いて定められた給与、勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように、随時、適当な措置を講じなければならない。
2 人事委員会は、随時、前項の規定により講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告することができる。」
つまり、勤務条件は住民の代表である議会が決める条例で定めます(勤務条件条例主義)。長が規則で勝手に決めることはできません。
そして、いったん決めたら終わりではなく、世間の実情とかけ離れないよう随時見直します。その見直しを促す役目が、人事委員会の勧告です。相手は議会と長の両方です。
「安全衛生や災害補償は勤務条件に該当しない」「勤務条件は規則で定める」「人事委員会は勤務条件について勧告できない」は、いずれもまちがいです。
給与の決め方は、2本のものさし(第24条)
「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」
つまり、給与を決めるときのものさしは2本です。
- 職務給の原則…重い仕事・重い責任には、それに見合う給与を(第1項)
- 均衡の原則…暮らしに必要な費用や、国・他の自治体・民間の給与とかけ離れないように(第2項)
1本目は「その人の仕事の重さ」を測るものさし、2本目は「まわりとのバランス」を測るものさしです。
そして給与も、勤務条件と同じく条例で定めます(給与条例主義)。条例に基づかずに、金銭や有価物を職員に支給することはできません(第25条第1項)。
支給の3原則は「通貨・直接・全額」(第25条)
「職員の給与は、法律又は条例により特に認められた場合を除き、通貨で、直接職員に、その全額を支払わなければならない。」
つまり、給与はお金で・本人に・満額払う、という3つの原則です。裏を返すと、次の3つは原則としてできません。
- 現物支給…お米や日用品で支払う
- 代理受領…家族など本人以外が受け取る
- 勝手な天引き…法律や条例の定めなく一部を差し引く
働いた人に、確実にお金が届くようにするための決まりです。民間の労働基準法にも同じ考え方の原則があります。
「給与は現物支給が原則」「代理人に支払うのが原則」「一部を控除して支払うことが常に認められる」は、いずれもまちがいです。
兼務しても、給料は二重に出ない(第24条第3項)
「職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、これに対して給与を受けてはならない。」
つまり、ある職員が別の職を兼ねることになっても、その兼務分の給与は受け取れません(重複支給の禁止)。同じ勤務時間に対して二重に給与を払うのは、筋が通らないからです。
机も名札も2つになるけれど、給料袋は1つのまま、というイメージです。
「職員が他の職を兼ねる場合、兼務する職についての給与が支給されなければならない」はまちがいです。
安全衛生・災害補償も含む。定めるのは条例
通貨で・直接職員に・その全額を
重複支給の禁止
📒 この記事のまとめ
勤務条件も給与も、条例で定め、世間の情勢に合わせて見直されます。
- 勤務条件には、給与・勤務時間のほか休日・休暇、昇任や懲戒の基準、安全衛生・災害補償も含まれる
- 勤務条件・給与は条例で定める(勤務条件条例主義・給与条例主義)
- 情勢適応の原則により随時見直され、人事委員会は議会及び長に勧告できる
- 給与は職務と責任に応じ(職務給の原則)、生計費や国・他団体・民間の給与を考慮して定める(均衡の原則)
- 支給の3原則は「通貨で・直接職員に・その全額を」
- 他の職員の職を兼ねても、その職について給与は受けられない(重複支給の禁止)
「範囲は広い」「決めるのは条例」「払い方は3原則」の3点を押さえておけば十分です。
確認問題(全5問)
問 1
地方公務員法が定める勤務条件に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 給与・勤務時間は勤務条件である
- 労働に関する安全衛生や災害補償は、勤務条件には該当しない
- 勤務条件は条例で定められる
- 人事委員会は、勤務条件について議会及び長に勧告することができる
💡 ヒント
買い物かごの中身に、ヘルメットや救急箱は入っていたでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
勤務条件には、休日・休暇や昇任・懲戒の基準のほか、労働に関する安全衛生や災害補償も含まれます。「該当しない」とするBが誤りです。
問 2
地方公務員法が定める給与に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない
- 給与は、生計費や国の職員の給与などの事情を考慮して定められなければならない
- 職員が他の職員の職を兼ねる場合には、兼務する職についての給与が支給されなければならない
- 給与は、条例で定める
💡 ヒント
同じ勤務時間に対して、給料袋はいくつ渡されていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
他の職員の職を兼ねても、これに対して給与を受けてはなりません(第24条第3項、重複支給の禁止)。「支給されなければならない」とするCが誤りです。
問 3
給与の支給原則に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 給与は、現物支給を原則とする
- 給与は、家族など代理人に支払うことを原則とする
- 給与は、一部を控除して支払うことが常に認められる
- 給与は、通貨で、直接職員に、その全額を支払わなければならない
💡 ヒント
3つの言葉で覚えた原則を思い出してみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
給与は、法律又は条例で特に認められた場合を除き、通貨で・直接職員に・その全額を支払わなければなりません(第25条第2項)。現物支給・代理受領・自由な控除は原則できません。
問 4
勤務条件・給与に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 給与・勤務時間その他の勤務条件は、社会一般の情勢に適応するよう措置される
- 勤務条件には、災害補償や安全衛生は含まれない
- 給与は条例で定める
- 職員が他の職を兼ねても、兼務する職について給与は二重に支給されない
💡 ヒント
勤務条件は「広い」概念でした。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
勤務条件には災害補償や安全衛生も含まれます。「含まれない」とするBが誤りです。
問 5
情勢適応の原則と人事委員会の勧告に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 人事委員会は、勤務条件について議会及び長に勧告することができる
- 人事委員会が勧告できる相手は、長のみである
- いったん条例で定めた勤務条件は、社会情勢が変わっても見直す必要はない
- 勤務条件を社会一般の情勢に適応させる措置は、人事委員会が単独で決定する
💡 ヒント
条文では、勧告の相手が2つ並べて書かれていました。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
人事委員会は、随時、講ずべき措置について議会及び長に勧告できます(第14条第2項)。措置を講じるのは地方公共団体であり、情勢に適応するよう随時見直す必要があります。


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