第11回:聴聞と弁明の違いは? ― 不利益処分・届出・意見公募をやさしく解説

行政法
聴聞と弁明の違いは?不利益処分・届出・意見公募をやさしく解説 消防昇任試験対策

前回は「申請を受けるとき」のルールでした。今回は逆に、役所が不利益処分(許可の取消しなど)をするときのルールです。

キーワードは「言い分を聞いてから処分する」。その聞き方に聴聞弁明の2コースがあります。あわせて届出意見公募(パブリックコメント)も片づけて、第7章を完結させます。

処分の前に、言い分を聞く。いきなり取消しを突きつけるのは✕、まず言い分をどうぞと話を聞くのが○
いきなり処分ではなく、まず言い分を聞くのがルール
1

処分の前に言い分を聞く ― 聴聞と弁明の2コース

いきなり「許可取消し!」では、言い分のある人がかわいそうです。そこで行政手続法は、不利益処分の前に意見を言うチャンスを保障しています。コースは2つです。

  • 聴聞(ちょうもん)フルコースの面談。許認可の取消しや資格の剥奪など、重い処分のとき。本人が出席して意見を述べられ、役所の持っている資料(文書)を見る権利があり、代理人も頼める
  • 弁明の機会の付与書面のあっさりコース。それ以外の軽めの処分のとき。書面の提出が原則
聴聞=フルコースの面談。重い処分(取消し・剥奪)。弁明=書面のあっさりコース。軽い処分。書面が原則
聴聞はフルコース、弁明は書面のあっさりコース

聴聞で認められる手厚い権利(意見陳述・文書等閲覧・代理人選任)は、そのまま出題ポイントです。

聴聞=手厚い手続。①意見を述べる ②文書を見る(文書等閲覧権)③代理人を頼める
聴聞では「意見陳述・文書閲覧・代理人」が認められる

振り分けはシンプルに「重い処分=聴聞/軽い処分=弁明」。

重い処分=聴聞/軽い処分=弁明。天秤の重い側(取消し・資格剥奪)は聴聞、軽い側は弁明
処分の重さで「聴聞か弁明か」を振り分ける
試験での注意

「許認可の取消しは弁明の機会の付与で足りる」は誤り(聴聞が必要)。「弁明は公開の口頭審理が原則」も誤り(書面が原則)です。

2

不利益処分の理由は「同時」に示す

前回、申請拒否の理由提示は義務と学びました。不利益処分も同じく理由の提示が必要で、ポイントは原則として処分と同時に示すこと。「処分してから、あとで理由を郵送します」はNGです。

罰を受ける側からすれば、「なぜ?」が分からないままでは反論も準備もできません。だから理由は処分とセット、と覚えましょう。

不利益処分の理由は原則同時に示す。処分書だけ渡して理由はあとで郵送は✕。処分書と理由をセットで同時に手渡すのが○
処分書と理由はセット。「あとで郵送」はNG
試験での注意

「不利益処分の理由は、処分後に追って示せばよい」は誤り。原則として処分と同時に示します。

3

届出は「届いた時点」で完了

届出は役所への「お知らせ」。ここでのルールはひとつだけです。

書式などの形式要件を満たした届出が、提出先に到達した時点で、届出の義務は果たされたことになります。役所の「受理」というハンコを待つ必要はありません。ポストに投函が完了した瞬間にミッション完了、のイメージです。

届出=届いた時点で完了。ポストに投函した届出書が役所に到達した瞬間に完了。役所の受理のハンコを待つ必要はない
形式が整った届出は、到達した時点で完了

「行政庁が受理して初めて義務を履行したことになる」——この受理ひっかけが定番の誤りです。

定番ひっかけ:受理は不要。受理のハンコを構えても、届出書はすでに到達=完了。受理を待つ必要なし
「到達=完了」。受理を待つ必要はない
試験での注意

「届出は、行政庁が受理して初めて義務を履行したことになる」は誤り。形式に適合した届出が提出先に到達した時点で、義務は履行されたものとされます(37条)。

4

意見公募手続 ― ルールを作る前の「ご意見箱」

意見公募手続(パブリックコメント)は、役所が命令等(政令・省令・審査基準・処分基準など)を作るときに、案を公表してみんなの意見を募るしくみです。透明性確保の柱ですね。

注意したいのは対象。あくまで「ルール(命令等)を作るとき」の手続であって、「個別の処分をするたびに行うものではない」という点です。

意見公募=ルールを作る前のご意見箱。命令等の案(政令・省令・審査基準)を公示し、市民が意見をご意見箱に入れる。個別の処分をするたびに行うものではない
パブコメは「命令等を作るとき」の手続。個別処分ごとではない

最後に、第6回で学んだ行政指導のルールも、この行政手続法に入っていることを思い出しておきましょう。従わなくても不利益取扱い禁止・求めがあれば書面交付・行き過ぎたお願いには中止等の求め、の3点セットでした。

試験での注意

「意見公募手続は、個別の不利益処分をするたびに必ず行われる」は誤り。命令等の制定時に行う手続です。

★ ここだけ覚えればOK ★ 行政手続法(後編)は3カードで!
ここだけ覚えればOK。①重い処分=聴聞(文書閲覧・代理人)/軽い処分=弁明(書面)②不利益処分の理由は原則同時に提示 ③届出=到達で完了(受理不要)/パブコメ=命令等を作るとき
聴聞と弁明

重い処分=聴聞(文書閲覧・代理人)/軽い処分=弁明(書面が原則)

理由は同時

不利益処分の理由は、原則として処分と同時に提示する

届出とパブコメ

届出=到達で完了(受理不要)/意見公募=命令等を作るときの手続

📒 この記事のまとめ

不利益処分は「言い分を聞いてから」が基本です。

  • 重い処分=聴聞(文書閲覧・代理人OK)/軽い処分=弁明(書面が原則)
  • 不利益処分の理由は原則として処分と同時に提示
  • 届出=到達で完了(受理不要)/意見公募=命令等を作るときの手続

これで第7章「行政手続法」は完結です。前編(第10回)の「義務・努力義務」とあわせて総復習しておきましょう。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

不利益処分の手続に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 不利益処分の意見陳述手続には、聴聞と弁明の機会の付与がある。
  2. 弁明の機会の付与は、書面の提出が原則である。
  3. 許認可の取消しのような重い不利益処分では、弁明の機会の付与で足りる。
  4. 不利益処分をするときは、原則として同時に理由を示さなければならない。
💡 ヒント

天秤の「重い側」から伸びていた矢印の先は、聴聞と弁明のどちらでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

許認可の取消しや資格の剥奪のような重い不利益処分では、弁明の機会の付与ではなく聴聞が行われます(13条)。

問 2

聴聞と弁明の機会の付与に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 聴聞では、意見陳述・文書等閲覧・代理人選任が認められる。
  2. 聴聞は書面提出が原則で、弁明は公開の口頭審理が原則である。
  3. 弁明の機会の付与は、許認可の取消しのような重い処分で行われる。
  4. 聴聞・弁明のいずれも、行政指導に対して行われる手続である。
💡 ヒント

フルコースの面談で認められていた3つの権利を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

聴聞では意見陳述・文書等閲覧・代理人選任という手厚い権利が認められます。重い処分は聴聞・軽い処分は弁明(B・Cは誤り)、これらは不利益処分の手続です(Dは誤り)。

問 3

不利益処分の理由の提示に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 不利益処分の理由は、処分の後に追って示せば足りる。
  2. 不利益処分をするときは、原則として同時に理由を示さなければならない。
  3. 不利益処分に理由の提示は必要とされていない。
  4. 理由の提示は、相手方から求めがあった場合に限り必要となる。
💡 ヒント

処分書と理由は、別々に渡してよかったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

不利益処分には、原則として処分と同時に理由を示さなければなりません(14条)。あとで追って示す、というのは認められません。

問 4

行政手続法上の届出に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 届出は、行政庁が受理して初めて手続上の義務が履行されたものとされる。
  2. 届出は、形式上の要件に適合していれば、提出先に到達した時に手続上の義務が履行されたものとされる。
  3. 届出には、常に行政庁の許可が必要である。
  4. 届出は、口頭で行うのが原則である。
💡 ヒント

受理のハンコには✕マークが付いていました。完了はいつの時点でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

形式要件に適合した届出が提出先に到達した時点で、届出の義務は履行されたものとされます(37条)。受理という別個の行為は必要ありません。

問 5

行政手続法上の意見公募手続に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 意見公募手続は、命令等を定めるときに案を公示して意見を募る制度である。
  2. 意見公募手続は、行政運営の透明性を確保するための制度である。
  3. 意見公募手続は、個別の不利益処分をするたびに必ず行われる。
  4. 命令等には、政令・省令のほか審査基準・処分基準等が含まれる。
💡 ヒント

ご意見箱は「ルールを作るとき」のものでした。個別の処分ごとだったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

意見公募手続(パブリックコメント)は命令等の制定時に行うもので、個別の不利益処分のたびに行うものではありません。

← 第10回:行政手続法って何? 第12回:近日公開 →

コメント

タイトルとURLをコピーしました