前回は「申請を受けるとき」のルールでした。今回は逆に、役所が不利益処分(許可の取消しなど)をするときのルールです。
キーワードは「言い分を聞いてから処分する」。その聞き方に聴聞と弁明の2コースがあります。あわせて届出と意見公募(パブリックコメント)も片づけて、第7章を完結させます。
処分の前に言い分を聞く ― 聴聞と弁明の2コース
いきなり「許可取消し!」では、言い分のある人がかわいそうです。そこで行政手続法は、不利益処分の前に意見を言うチャンスを保障しています。コースは2つです。
- 聴聞(ちょうもん)=フルコースの面談。許認可の取消しや資格の剥奪など、重い処分のとき。本人が出席して意見を述べられ、役所の持っている資料(文書)を見る権利があり、代理人も頼める
- 弁明の機会の付与=書面のあっさりコース。それ以外の軽めの処分のとき。書面の提出が原則
聴聞で認められる手厚い権利(意見陳述・文書等閲覧・代理人選任)は、そのまま出題ポイントです。
振り分けはシンプルに「重い処分=聴聞/軽い処分=弁明」。
「許認可の取消しは弁明の機会の付与で足りる」は誤り(聴聞が必要)。「弁明は公開の口頭審理が原則」も誤り(書面が原則)です。
不利益処分の理由は「同時」に示す
前回、申請拒否の理由提示は義務と学びました。不利益処分も同じく理由の提示が必要で、ポイントは原則として処分と同時に示すこと。「処分してから、あとで理由を郵送します」はNGです。
罰を受ける側からすれば、「なぜ?」が分からないままでは反論も準備もできません。だから理由は処分とセット、と覚えましょう。
「不利益処分の理由は、処分後に追って示せばよい」は誤り。原則として処分と同時に示します。
届出は「届いた時点」で完了
届出は役所への「お知らせ」。ここでのルールはひとつだけです。
書式などの形式要件を満たした届出が、提出先に到達した時点で、届出の義務は果たされたことになります。役所の「受理」というハンコを待つ必要はありません。ポストに投函が完了した瞬間にミッション完了、のイメージです。
「行政庁が受理して初めて義務を履行したことになる」——この受理ひっかけが定番の誤りです。
「届出は、行政庁が受理して初めて義務を履行したことになる」は誤り。形式に適合した届出が提出先に到達した時点で、義務は履行されたものとされます(37条)。
意見公募手続 ― ルールを作る前の「ご意見箱」
意見公募手続(パブリックコメント)は、役所が命令等(政令・省令・審査基準・処分基準など)を作るときに、案を公表してみんなの意見を募るしくみです。透明性確保の柱ですね。
注意したいのは対象。あくまで「ルール(命令等)を作るとき」の手続であって、「個別の処分をするたびに行うものではない」という点です。
最後に、第6回で学んだ行政指導のルールも、この行政手続法に入っていることを思い出しておきましょう。従わなくても不利益取扱い禁止・求めがあれば書面交付・行き過ぎたお願いには中止等の求め、の3点セットでした。
「意見公募手続は、個別の不利益処分をするたびに必ず行われる」は誤り。命令等の制定時に行う手続です。
重い処分=聴聞(文書閲覧・代理人)/軽い処分=弁明(書面が原則)
不利益処分の理由は、原則として処分と同時に提示する
届出=到達で完了(受理不要)/意見公募=命令等を作るときの手続
📒 この記事のまとめ
不利益処分は「言い分を聞いてから」が基本です。
- 重い処分=聴聞(文書閲覧・代理人OK)/軽い処分=弁明(書面が原則)
- 不利益処分の理由は原則として処分と同時に提示
- 届出=到達で完了(受理不要)/意見公募=命令等を作るときの手続
これで第7章「行政手続法」は完結です。前編(第10回)の「義務・努力義務」とあわせて総復習しておきましょう。
確認問題(全5問)
問 1
不利益処分の手続に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 不利益処分の意見陳述手続には、聴聞と弁明の機会の付与がある。
- 弁明の機会の付与は、書面の提出が原則である。
- 許認可の取消しのような重い不利益処分では、弁明の機会の付与で足りる。
- 不利益処分をするときは、原則として同時に理由を示さなければならない。
💡 ヒント
天秤の「重い側」から伸びていた矢印の先は、聴聞と弁明のどちらでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
許認可の取消しや資格の剥奪のような重い不利益処分では、弁明の機会の付与ではなく聴聞が行われます(13条)。
問 2
聴聞と弁明の機会の付与に関する記述として、正しいものはどれか。
- 聴聞では、意見陳述・文書等閲覧・代理人選任が認められる。
- 聴聞は書面提出が原則で、弁明は公開の口頭審理が原則である。
- 弁明の機会の付与は、許認可の取消しのような重い処分で行われる。
- 聴聞・弁明のいずれも、行政指導に対して行われる手続である。
💡 ヒント
フルコースの面談で認められていた3つの権利を思い出してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
聴聞では意見陳述・文書等閲覧・代理人選任という手厚い権利が認められます。重い処分は聴聞・軽い処分は弁明(B・Cは誤り)、これらは不利益処分の手続です(Dは誤り)。
問 3
不利益処分の理由の提示に関する記述として、正しいものはどれか。
- 不利益処分の理由は、処分の後に追って示せば足りる。
- 不利益処分をするときは、原則として同時に理由を示さなければならない。
- 不利益処分に理由の提示は必要とされていない。
- 理由の提示は、相手方から求めがあった場合に限り必要となる。
💡 ヒント
処分書と理由は、別々に渡してよかったでしょうか。
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正解:B
不利益処分には、原則として処分と同時に理由を示さなければなりません(14条)。あとで追って示す、というのは認められません。
問 4
行政手続法上の届出に関する記述として、正しいものはどれか。
- 届出は、行政庁が受理して初めて手続上の義務が履行されたものとされる。
- 届出は、形式上の要件に適合していれば、提出先に到達した時に手続上の義務が履行されたものとされる。
- 届出には、常に行政庁の許可が必要である。
- 届出は、口頭で行うのが原則である。
💡 ヒント
受理のハンコには✕マークが付いていました。完了はいつの時点でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
形式要件に適合した届出が提出先に到達した時点で、届出の義務は履行されたものとされます(37条)。受理という別個の行為は必要ありません。
問 5
行政手続法上の意見公募手続に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 意見公募手続は、命令等を定めるときに案を公示して意見を募る制度である。
- 意見公募手続は、行政運営の透明性を確保するための制度である。
- 意見公募手続は、個別の不利益処分をするたびに必ず行われる。
- 命令等には、政令・省令のほか審査基準・処分基準等が含まれる。
💡 ヒント
ご意見箱は「ルールを作るとき」のものでした。個別の処分ごとだったでしょうか。
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正解:C
意見公募手続(パブリックコメント)は命令等の制定時に行うもので、個別の不利益処分のたびに行うものではありません。


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