前回は、地方公共団体がお金をどう集め、どう予算に組み込むかを見てきました。
今回は、そのお金を実際に「何かを買うとき(契約)」と「何を持っているか(財産)」という視点から見ていきます。工事の発注や土地の管理など、日常の行政運営に欠かせないルールです。
そもそも「契約」と「財産」ってなに?
地方公共団体も、工事を発注したり、物品を購入したりするときには、民間企業と同じように契約を結びます。ただし、税金を使う以上、公正さと透明性を確保するための特別なルールがあります。
また、地方公共団体は庁舎や公園、現金や有価証券など、さまざまな「財産」を持っています。これらをどう区分し、どう管理するかにもルールがあります。この記事では、契約・入札のルールと、財産の区分、そして住民から徴収するお金の種類(分担金・使用料・手数料)を見ていきます。
契約・入札
地方公共団体が契約を結ぶ方法は、一般競争入札が原則です。
これは、広く条件を公告して、参加を希望する誰もが競争に加われる方法です。指名競争入札(あらかじめ指名した者だけで競争させる)、随意契約(競争入札によらず、任意の特定の相手方を選んで契約する)、せり売り(動産の売払いで、買受人が口頭で価格を競争する)は、いずれも政令で定める場合に限り認められる例外です。
ここで押さえておきたいのが、最低制限価格制度です。
一般競争入札・指名競争入札では、原則として最も有利な価格を示した者と契約しますが、あまりに安すぎる価格での落札(ダンピング)は、工事の手抜きなど品質低下を招くおそれがあります。そこで、あらかじめ最低制限価格を設けておき、それ以上の価格で申し込んだ者のうち、最も安い価格の者を落札者にできる、という仕組みです。つまり、必ずしも「一番安い価格を出した人」が落札するとは限りません。「例外なく最も有利な価格を示した者を落札者とする」という説明は誤りです。
たとえるなら、一般競争入札は「誰でも参加できるオークション」、随意契約は「特定の業者に直接お願いする」、せり売りは「不用品をその場の口頭競り値で売る」イメージです。そして最低制限価格制度は、「あまりに安い見積もりは、逆に危険信号」という考え方です。
「一般競争入札・指名競争入札では、例外なく最も有利な価格を示した者を落札者とする」は誤り(最低制限価格制度等の例外あり)。「随意契約は競争入札の一種である」も誤りで、競争入札によらない方法です。
財産の区分
地方自治法上の「財産」は、公有財産・物品・債権・基金の4つに区分されます(地方自治法第237条)。「普通財産・物品・債権・基金」という説明は誤りです。普通財産は、次に説明する公有財産の一部にすぎません。
公有財産は、まず行政財産と普通財産の2つに分かれます。行政財産とは、公用または公共用に供する財産のことです。行政財産はさらに、庁舎のように行政自らが使うための公用財産と、公園のように住民の利用に供するための公共用財産に分かれます。普通財産は、行政財産以外の財産です。たとえば、庁舎は「行政財産の公用財産」、公園は「行政財産の公共用財産」にあたります。
物品とは、現金・公有財産・基金に属するもの以外の、地方公共団体が所有する動産のことです。不動産は含まれません。債権とは、金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利のことで、地方税などの徴収金に関する債権も含まれます。
たとえるなら、公有財産は「持っている建物や土地」、物品は「持っている道具や備品」、債権は「相手に対して持っているお金を払ってもらう権利」、基金は「特定の目的のために積み立てているお金」というイメージです。
「地方自治法上の財産とは、普通財産・物品・債権・基金である」は誤り(公有財産・物品・債権・基金)。「公有財産は行政財産・普通財産・公の施設の三つに分類される」も誤りで、行政財産・普通財産の二つです。
分担金・使用料・手数料
地方公共団体が住民から徴収するお金にも、いくつかの種類があります。
分担金は、特にその事業から利益を受ける人から、その費用に充てるために徴収するものです(例:下水道受益者負担金)。使用料は、行政財産の使用、または「公の施設」の利用の対価として徴収するものです(例:公立学校の授業料)。手数料は、特定の人のために提供する役務(サービス)の対価として徴収するものです(例:戸籍の謄本・抄本の交付手数料)。
ここでよくあるひっかけが、公立学校の授業料です。公立学校は「公の施設」にあたるため、その利用の対価である授業料は使用料に分類されます。「手数料」だと誤解しやすいので注意しましょう。
たとえるなら、分担金は「工事で得をする人からの負担金」、使用料は「施設を使わせてもらう料金」、手数料は「何かをやってもらったことへの対価」というイメージです。なお、分担金や使用料が督促されても納付されないときは、地方税の滞納処分の例により処分することができます。
「公立学校の授業料は手数料である」は誤り(使用料)。公の施設の利用対価は使用料、役務提供の対価が手数料、と区別しましょう。
最低制限価格制度もあり、必ず最安値が落札とは限らない
公有財産=行政財産(公用・公共用)+普通財産
手数料(役務の対価)と混同しない
📒 この記事のまとめ
地方公共団体のお金の使い方は、①契約・入札、②財産の区分、③分担金・使用料・手数料の3つの視点で整理できます。
- 契約は一般競争入札が原則。指名競争入札・随意契約・せり売りは政令が定める例外
- 最低制限価格制度により、必ずしも最安値の者が落札するとは限らない
- 財産は公有財産・物品・債権・基金の4区分。公有財産=行政財産(公用・公共用)+普通財産
- 分担金=特定の利益への負担、使用料=施設利用の対価、手数料=役務提供の対価。公立学校の授業料は使用料
用語の定義と具体例をセットで覚えておくと、ひっかけ問題に強くなります。
確認問題(全5問)
問 1
地方自治法が定める契約・入札に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 競争入札によらず、任意の特定の相手方を選択して契約を締結するのは随意契約である
- 動産の売払いにおいて、口頭で価格競争をするのはせり売りである
- 一般競争入札・指名競争入札では、例外なく最も有利な価格を示した者を落札者とする
- 契約は一般競争入札が原則である
💡 ヒント
安すぎる価格での落札を防ぐための制度が、本文で紹介されていました。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
最低制限価格を設け、それ以上で最低価格の者を落札者とする最低制限価格制度などの例外があります(施行令第167条の10第2項)。「例外なく最有利価格者が落札」とするCが誤りです。
問 2
地方自治法に定める普通地方公共団体の財産に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 地方自治法における財産とは、普通財産・物品・債権・基金である
- 普通財産とは、公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産である
- 物品とは、現金・公有財産・基金に属するもの以外の動産等である
- 公有財産は、行政財産・普通財産・公の施設の三つに分類される
💡 ヒント
「持っている道具や備品」にあたるのは、財産のどの区分でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
物品は現金・公有財産・基金に属するもの以外の動産等です(自治法第239条)。財産は公有財産・物品・債権・基金(Aは誤り)、公用・公共用に供するのは行政財産(Bは誤り)、公有財産は行政財産・普通財産の二分類です(Dは誤り)。
問 3
庁舎は、地方自治法上の財産区分としてどれに該当するか。
- 普通財産
- 行政財産の公用財産
- 物品
- 行政財産の公共用財産
💡 ヒント
庁舎を使うのは、住民でしょうか、それとも行政自身でしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
公有財産は、公用又は公共用に供する行政財産と、それ以外の普通財産に分かれます。庁舎は行政機関が自ら使用する「公用財産」であり、行政財産の公用財産にあたります(自治法第238条)。住民の使用に供する公園等は公共用財産です。
問 4
分担金・使用料・手数料に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 分担金とは、特に利益を受ける者から、その必要な費用に充てるため徴収するもので、下水道受益者負担金がその例である
- 使用料とは、行政財産の使用又は公の施設の利用の対価として徴収するものである
- 手数料とは、特定の者のために提供する役務の対価で、戸籍の謄抄本の交付手数料がその例である
- 公立学校の授業料は、公の施設の利用の対価であり手数料である
💡 ヒント
公立学校は「公の施設」でした。その利用の対価は何と呼ばれていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
公立学校は公の施設であり、その授業料は「使用料」です。手数料は役務の対価であって、授業料を手数料とするDが誤りです。
問 5
契約の方法に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 随意契約は、一般競争入札と並ぶ契約の原則的な方法である
- せり売りは、不動産の売払いに用いられる方法である
- 指名競争入札は、あらかじめ指名した者だけで競争させる方法である
- 一般競争入札は、政令が定める場合に限り例外的に認められる方法である
💡 ヒント
原則の方法はどれで、例外の方法はどれだったか、整理してみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
指名競争入札は、あらかじめ指名した者だけで競争させる方法で、政令が定める場合に限り認められる例外です。随意契約も例外の一つであり原則ではありません(Aは誤り)、せり売りは動産の売払いに用いられます(Bは誤り)、原則は一般競争入札です(Dは誤り)。


コメント