前回の強制執行は「これからやらせる」ための手段でした。今回の行政罰は、済んでしまった違反への罰です。
この章の主役は、読みがどちらも「かりょう」なのに中身がまったく違う「科料」と「過料」。問題集で必ず入れ替えて出てくる最重要ひっかけです。
行政罰って何? ― 罰にも2種類ある
行政罰とは、行政上の義務違反に対する制裁(罰)のこと。これが2種類に分かれます。サッカーのカードでたとえてみましょう。
- 行政刑罰=レッドカード級。罰金・拘禁刑・拘留・科料など、刑法に名前が載っている本物の刑罰。裁判所が刑事裁判で科し、前科がつき、刑法総則(刑法の共通ルール)も適用される
- 秩序罰(過料)=イエローカード級。「届出を忘れた」など軽めの違反に科されるお金の制裁で、刑罰ではない。前科はつかず、刑法総則の適用もなし
「過料には刑法総則が適用され、前科がつく」は誤り。過料は刑罰ではないので、総則の適用なし・前科なしです。
「科料」と「過料」― 読みは同じ、中身は別物
どちらも読みは「かりょう」。だから試験では漢字で判別します。
- 科料=刑罰(行政刑罰の一種)。前科がつく・刑法総則の適用あり
- 過料=秩序罰。刑罰ではない。前科なし・刑法総則の適用なし
区別のため、実務では科料を「とがりょう」、過料を「あやまちりょう」と読み分けることもあります。「科(とが)を科す=刑罰」「過(あやま)ち=うっかりへの制裁」とイメージすると覚えやすいです。
もうひとつ、過料は故意・過失がなくても科せる(わざとかどうかを問わない)のもポイントです。
「科料は行政罰(秩序罰)である」→誤り(科料は刑罰)。「秩序罰は故意・過失がなければ科せない」→誤り(主観的要件は不要)。
過料の手続は2系統 ― 国は裁判所、地方は長
過料を「誰が科すか」は2パターンに分かれます。
- 国の法令に基づく過料 → 裁判所が「非訟事件手続法」で科す(刑事裁判ではない)
- 地方の条例・規則違反の過料 → 地方公共団体の長が「処分」の形で科す
そして数字のひっかけ。条例による過料の上限は5万円です(地方自治法14条3項)。
「国の法令に基づく過料は刑事訴訟法により科される」→誤り(非訟事件手続法)。「条例による過料の上限は10万円」→誤り(5万円)。
両罰規定と、刑罰の種類
両罰規定とは、違反した本人だけでなく、その事業主(会社など)もセットで処罰する規定のこと。従業員が違反したら会社も罰金、というパターンです。
これは行政刑罰(本物の刑罰)の世界だけの話。秩序罰(過料)には適用されません。「過料は使用者にも科される」は誤りです。
最後に刑罰の種類の確認です。従来の懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されました(令和7年6月施行)。刑罰のリストは拘留・拘禁刑・罰金・科料。この列に「過料」が紛れ込んでいたら、それだけ刑罰ではないので外します。
前回登場した仲間との振り分けもおさらいしましょう。特別な関係の中での制裁=懲戒罰/将来の履行強制=執行罰/犯人の悪性への罰=刑事罰/義務を命じる暇なく実力行使=即時強制。行政罰は「行政上の義務違反への制裁で、行政刑罰と秩序罰がある」です。
「秩序罰にも両罰規定が適用される」→誤り。「過料は刑罰の一種である」→誤り(秩序罰)。定義の振り分け問題では、まず主語(誰の・何のための罰か)に注目しましょう。
科料=刑罰(前科あり)/過料=秩序罰(前科なし・総則不適用・故意過失不要)
国=裁判所(非訟事件手続法)/地方=長の処分。条例の上限は5万円
両罰規定は行政刑罰のみ。刑罰リストに「過料」が混ざっていたら外す
📒 この記事のまとめ
行政罰は「済んだ違反への制裁」で、2種類に分かれます。
- 行政刑罰=本物の刑罰(前科あり・総則適用)/秩序罰(過料)=刑罰ではない
- 科料=刑罰、過料=秩序罰。漢字で判別(とがりょう/あやまちりょう)
- 国の過料=裁判所、地方の過料=長。条例の上限5万円。両罰規定は刑罰のみ
第5章の強制執行(これからやらせる)とセットで対比しながら覚えると忘れにくくなります。
確認問題(全5問)
問 1
行政上の秩序罰としての過料に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 秩序罰としての過料は刑罰ではないから、刑法総則の適用はない。
- 行政上の秩序罰は、違反した行為者だけでなく、その使用者に対しても科される。
- 条例・規則違反の過料は、地方公共団体の長により処分の形式で科される。
- 秩序罰は、故意・過失等の主観的要件の具備を要しない。
💡 ヒント
「本人と会社をセットで処罰」できるのは、どちらの世界の話だったでしょうか。
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正解:B
両罰規定が適用されるのは行政刑罰の場合であり、秩序罰(過料)には適用されません。使用者に科すことはできません。
問 2
行政刑罰と秩序罰の違いに関する記述として、正しいものはどれか。
- 行政刑罰には刑法総則が適用されないが、秩序罰には適用される。
- 科料は秩序罰であり、過料は行政刑罰である。
- 行政刑罰には前科がつくが、秩序罰には前科がつかない。
- 国の法令に基づく過料は、刑事訴訟法により科される。
💡 ヒント
レッドカード級とイエローカード級、前科がつくのはどちらだったでしょうか。
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正解:C
行政刑罰は刑罰なので前科がつき刑法総則も適用されます。秩序罰は刑罰ではないため前科なし・総則不適用。科料は刑罰・過料は秩序罰(Bは逆)、国の過料は非訟事件手続法によります(Dは誤り)。
問 3
条例による過料に関する記述として、正しいものはどれか。
- 条例による過料の上限は5万円である。
- 条例による過料の上限は100万円である。
- 条例違反の過料は、裁判所が刑事裁判で科す。
- 条例による過料には前科がつく。
💡 ヒント
地方自治法14条3項の数字を思い出してください。
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正解:A
地方自治法14条3項により、条例違反に対する過料は5万円以下です。条例の過料は長が処分で科し、前科はつきません。
問 4
行政罰の説明として、正しいものはどれか。
- 在監者など特別な関係に服する者の義務違反に対して科せられる制裁である。
- 将来にわたり、行政法上の義務の履行を強制することを目的とする手段である。
- 目前急迫の障害を除く必要上、直接国民の身体・財産に実力を加える作用である。
- 行政上の義務違反に対して科せられる制裁で、行政刑罰と秩序罰がある。
💡 ヒント
Aは懲戒罰、Bは執行罰、Cは即時強制の説明です。
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正解:D
行政罰は行政上の義務違反への制裁で、行政刑罰と秩序罰に分かれます。Aは懲戒罰、Bは執行罰、Cは即時強制の説明です。
問 5
令和7年6月1日から施行されている刑罰の種類として、刑罰に当たらないものはどれか。
- 拘留
- 拘禁刑
- 過料
- 科料
💡 ヒント
刑罰の列で「仲間はずれ」だったのはどれでしょうか。漢字に注目です。
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正解:C
過料は秩序罰であり、刑罰ではありません。拘留・拘禁刑・科料(と罰金)は刑罰です。なお従来の懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。


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