今回のテーマは、働く人の権利のうち、公務員だけが特別なあつかいを受けている部分です。民間の会社なら当たり前にできることが、公務員にはどこまで認められているのでしょうか。
そして消防職員のあつかいは、この章でいちばん大事なところです。
今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。
そもそも「労働三権」ってなに?
働く人が自分たちの待遇を守るための3つの権利です。むずかしい言葉なので、まず日常のことばに置きかえてみます。
- 団結権…なかまを集めて団体をつくる権利(「みんなで集まろう」)
- 団体交渉権…その団体として職場と話し合う権利(「まとめて話し合おう」)
- 争議権…話がまとまらないとき、ストライキなどで仕事を止める権利(「そろって仕事を止めよう」)
民間の会社員は、この3つがそろっています。でも公務員は、仕事の中身によって認められる範囲がちがいます。住民の生活を支える仕事が止まってしまっては困るからです。
職種ごとの三権マップ
職種ごとに整理すると、次のようになります。
- 一般職員…団結権は○(職員団体をつくれる)。交渉はできるが団体協約を結ぶ権利はないので△。争議権は×
- 公営企業職員…労働組合をつくれる。団結権○・団体交渉権○(労働協約も結べる)。争議権は×
- 技能労務職員(単純労務職員)…公営企業職員と同じく団結権○・団体交渉権○。争議権は×
- 消防職員・警察職員…3つとも×
表を見てわかるポイントは2つ。争議権はどの職種にも認められていないことと、消防職員・警察職員だけ3つともゼロであることです。
なお技能労務職員には労働組合法などが適用され、団結権を侵害されたときは不当労働行為の制度(不当なあつかいから労働組合を守るしくみ)で保護されます。
「技能労務職員には労働組合法が適用されない」はまちがいです。
消防職員は労働三権がゼロ(第52条第5項)
「警察職員及び消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない。」
つまり、警察職員と消防職員は、勤務条件の改善を目的として当局と交渉する団体をつくることも、そこに入ることもできません。団結権がない以上、団体として交渉することも、そろって仕事を止めることもできません。
理由は、職務の特殊性です。火災も救急も、待ってはくれません。住民の生命・身体・財産を守る仕事が団体行動によって止まってしまうと、取り返しのつかない事態になります。そのため、ほかの職種より強い制限が置かれています。
「消防職員・警察職員にも団結権は認められている」はまちがい。三権すべてありません。
職員団体のルール(第52条・第55条)
「この法律において『職員団体』とは、職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう。
3 職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。ただし、…管理職員等と管理職員等以外の職員とは、同一の職員団体を組織することができず…」
つまり、職員団体に入るかどうかは自由です(オープンショップ制)。入らないことを理由に不利益なあつかいを受けることもありません。
もうひとつ、管理職員等とそれ以外の職員は、同じ職員団体を組織できません。管理する側とされる側が同じ団体にいると、交渉そのものが成り立たなくなってしまうからです。
「2 職員団体と地方公共団体の当局との交渉は、団体協約を締結する権利を含まないものとする。
3 地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができない。」
交渉については、大事な線が2本あります。
- 管理運営事項(組織の編成、予算、行政の企画立案など)は交渉の対象にできない。当局が責任をもって決めるべきことだからです
- 交渉には団体協約を締結する権利が含まれない。ただし、合意したことを書面による協定にまとめることはできます(同条第9項)
「話し合いはできる。でも法的な拘束力のある協約までは結べない。書面の約束ならOK」というイメージです。なお、交渉できる事項は、給与・勤務時間その他の勤務条件と、これに附帯する社交的・厚生的活動です。
「管理運営事項も交渉の対象とできる」「管理職員と一般職員は同一の職員団体を組織できる」「職員団体への加入は強制される」は、いずれもまちがいです。
団結権すらない。団体の結成も加入も不可
公営企業・技能労務も争議権は×
書面協定は可。管理運営事項は交渉対象外
📒 この記事のまとめ
公務員の労働基本権は、職務の性質に応じて制限されています。
- 労働三権=団結権・団体交渉権・争議権。争議権はどの職種にも認められていない
- 一般職員は団結権あり、交渉はできるが団体協約締結権はない
- 公営企業職員・技能労務職員は労働組合を結成でき、労働協約も結べる(争議権はなし)
- 消防職員・警察職員は労働三権がいずれもなく、団体の結成・加入もできない
- 職員団体への加入は任意(オープンショップ)。管理職員等とそれ以外は同一団体を組織できない
- 管理運営事項は交渉の対象外。交渉に団体協約締結権は含まれないが、書面協定は結べる
消防昇任試験では、まず「消防・警察は三権ゼロ」を固定しておきましょう。
確認問題(全5問)
問 1
地方公務員の労働基本権に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 一般職員は職員団体を結成できるが、職員団体への加入はオープンショップ制である
- 地方公務員法は、職員団体に対し、団体協約を締結する権利を認めている
- 消防職員及び警察職員は、いわゆる労働三権が認められていない
- 技能労務職員には労働組合法が適用され、団結権侵害に対しては不当労働行為制度で保護される
💡 ヒント
交渉のテーブルで、分厚い冊子にはどんな印がついていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
職員団体と当局との交渉は、団体協約を締結する権利を含みません(第55条第2項)。書面による協定を結ぶことはできます。
問 2
消防職員の労働基本権に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 消防職員は、団結権のみ認められている
- 消防職員は、団体交渉権のみ認められている
- 消防職員は、労働三権がいずれも認められていない
- 消防職員は、労働三権がすべて認められている
💡 ヒント
消防職員の頭上のカードは、何枚がバツでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
警察職員及び消防職員は、勤務条件の維持改善を図り当局と交渉する団体を結成・加入できません(第52条第5項)。団結権・団体交渉権・争議権のいずれも認められていません。
問 3
職員団体に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 職員団体とは、職員が勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう
- 職員は、職員団体を結成せず、又はこれに加入しないこともできる
- 職員団体は、地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項についても交渉の対象とすることができる
- 管理職員等とそれ以外の職員とは、同一の職員団体を組織することができない
💡 ヒント
「組織の編成」「予算」と書かれた書類は、テーブルの上にありましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができません(第55条第3項)。
問 4
職員団体の交渉に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 交渉は団体協約を締結する権利を含まないが、書面による協定を結ぶことはできる
- 交渉は団体協約を締結する権利を含む
- 職員団体への加入は、すべての職員に強制される
- 管理職員と一般職員は、同一の職員団体を組織できる
💡 ヒント
「話し合いはできる。でも協約までは結べない」。では、書面の約束は?
✅ 正解と解説を見る
正解:A
交渉に団体協約締結権は含まれませんが(第55条第2項)、法令等に抵触しない限り書面による協定を結べます(同条第9項)。加入は任意で、管理職員等とそれ以外は同一団体を組織できません。
問 5
職種と労働三権の組合せとして、妥当なものはどれか。
- 公営企業職員……団結権も争議権も認められる
- 一般職員……団結権はないが争議権は認められる
- 技能労務職員……団結権も団体交渉権も認められない
- 消防職員……団結権・団体交渉権・争議権のいずれも認められない
💡 ヒント
表のいちばん右の列(争議)は、どの行も同じ記号でしたね。
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正解:D
争議権はどの職種にも認められていません(Aは誤り)。一般職員には団結権があり(Bは誤り)、技能労務職員には団結権・団体交渉権が認められます(Cは誤り)。


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