第15回:違反すると、どれくらい重いのか ― 罰則と両罰規定

消防法
違反すると、どれくらい重いのか 罰則と両罰規定 消防昇任試験対策

前回は、命令が出たあとに起きることを見ました。では、その命令に従わなかったらどうなるのでしょうか。

消防法には罰則が並んでいます。数字がたくさん出てきますが、重い順に3段に並べてしまえば、見通しがよくなります。

そしてもう1つ、会社にも罰金がかかるというしくみがあります。これを両罰規定といいます。

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罰則は「重い順」に並べると覚えやすい

消防法の予防関係の罰則は、おおまかに3段に分かれています。

  • 3年以下/300万円以下…使用禁止・停止・制限命令に従わなかったとき
  • 1年以下/100万円以下…物件の除去命令、設備の設置命令、危険物の無許可貯蔵など
  • 6月以下/50万円以下…防火管理者を定めなさいの命令に従わなかったときなど

危険の大きさの順に重くなっている、と考えるとすっきりします。「使ってはいけない建物を使い続ける」のがいちばん危ないからです。

3年300万円・1年100万円・6月50万円の3段の階段に、使用禁止の建物・消火器・名簿が置かれている
重い順に3段
ここ注意

以前は「懲役」と書かれていましたが、刑法が改正され、現在はすべて「拘禁刑」という言い方になっています。古い問題集では懲役のままのことがあります。

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いちばん重い ― 使用停止命令に従わなかったとき

📜 消防法第39条の2の2第1項

「第五条の二第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。」

つまり「この建物を使ってはいけません」と命じられたのに、営業を続けた人は、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金です。消防法の予防関係ではいちばん重い罰です。

使用停止命令は、ほかの命令を出しても直らなかったときや、ほかの命令では危険を取り除けないときに出される、いわば最後の手段です。それを無視するということは、危ないとわかっていて人を建物に入れ続けているのと同じ。だから重くなっています。

なお同条第2項により、情状によって拘禁刑と罰金を併科することもできます。

使用禁止の貼り紙があるのに客が次々に店へ入っていき、外で調査員が記録している。3年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金
予防関係でいちばん重い
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会社がやらせたときは、会社にも罰金 ― 両罰規定

📜 消防法第45条(柱書き)

「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。」

つまり、実際にやった人だけでなく、その人を雇っていた会社にも罰金がかかります。これを両罰規定といいます。

なぜこんなしくみがあるのでしょうか。会社の仕事としてやったことなのに、現場の人だけが罰を受けて会社は無傷、では意味がありません。会社にもお金の負担を負わせることで、会社ぐるみで気をつけさせるのが狙いです。

使用禁止の貼り紙がある店を開ける従業員から、行為者本人と法人のビルの両方へ矢印が伸びている
行為者と法人、どちらも罰する
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法人の罰金が重くなるのは2つだけ

ここが問題でよく狙われるところです。両罰規定だからといって、いつも法人のほうが重いわけではありません。重くなるのは2つの場面だけです。

違反本人法人根拠
使用停止命令違反3年以下/300万円以下1億円以下第45条1号
危険物の無許可貯蔵1年以下/100万円以下3,000万円以下第45条2号
設備の設置命令違反1年以下/100万円以下3,000万円以下第45条2号
上記以外各本条どおり本人と同額第45条3号
1億円・3000万円・本人と同額の3本の棒グラフ。重くなるのは左の2つだけ
法人の罰金が重くなるのは2つだけ
ここ注意

「両罰規定ではいつも法人のほうが重い」はまちがいです。第45条第3号に当たるものは、法人も各本条の罰金刑、つまり本人と同じ額です。

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1年以下・100万円以下のグループ

📜 消防法第41条第1項(抜粋)

「次のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五条の三第一項の規定による命令に違反した者
二 第八条第四項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
三 第十条第一項の規定に違反した者
五 第十七条の四第一項又は第二項の規定による命令に違反して消防用設備等又は特殊消防用設備等を設置しなかつた者」

第10条第1項は、許可を受けずに危険物を貯蔵したり取り扱ったりすることの禁止です。本人は1年以下/100万円以下ですが、法人は第45条第2号で3,000万円以下と、けた違いに重くなります。

危険物は量が多く、事故が起きたときの被害が桁違いに大きい。それを許可なしに置くのは会社の判断で起こることが多いので、会社側を重くしている、と考えると腑に落ちます。

許可なしの札が貼られた倉庫に危険物のドラム缶が積まれ、本人1年以下100万円以下・法人3000万円以下
危険物の無許可貯蔵は、法人が3,000万円
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6月以下・50万円以下のグループ

📜 消防法第42条第1項(抜粋)

「次のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第三項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者」

第8条第3項は、「防火管理者を定めなさい」という命令です。まだ具体的な危険が目の前にあるわけではなく、体制づくりを命じる段階なので、罰は軽めになっています。

この場合、法人も第45条第3号により各本条の罰金刑、つまり50万円以下です。

防火管理者の掲示板が空欄のまま。消防職員が命令書を差し出している。6月以下の拘禁刑、50万円以下の罰金
防火管理者を定めなさいの命令に従わないとき
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防災管理の罰則は「準用」でつながっている

ここまでの条文を、もう一度よく見てください。どちらにもかっこ書きがついていました。

  • 第41条第1項第2号…「第八条第四項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)」
  • 第42条第1項第1号…「第八条第三項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)」

第8条は防火管理の規定です。そして第36条第1項が、その第8条を防災管理に準用しています。

つまり、防災管理の命令に違反したときも、同じ号・同じ罰が適用されます。防災管理に専用の罰則条文があるわけではなく、かっこ書きで読み込むしくみになっているのです。

命令防火管理防災管理罰
管理者を定めなさい第8条3項第36条1項で準用6月以下/50万円以下
業務を適正に行わせなさい第8条4項第36条1項で準用1年以下/100万円以下
防火管理と防災管理が準用のパイプでつながり、2本の線が1つの罰の札に合流している
罰の条文は1つを共有している
ここ注意

「防災管理には専用の罰則条文がある」はまちがいです。第36条第1項の準用によって、防火管理と同じ条文が働きます。

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本人と法人、まとめて見る

使用禁止・危険物・管理者名簿の3行で、本人3年300万円・1年100万円・6月50万円、法人1億円・3000万円・同額
本人と法人

覚え方としては、本人は3年・1年・6月の3段、法人は1億・3,000万・同額の3段とセットで押さえるのが早道です。

★ ここだけ覚えればOK ★ 3つだけ!
①
使用停止命令違反が最重

本人は3年以下/300万円以下、法人は1億円以下

②
法人が重いのは2つだけ

1億円と3,000万円。それ以外は本人と同額

③
防災管理は準用

第36条第1項で第8条を準用。罰則条文は防火管理と共有

📒 この記事のまとめ

罰則は重い順の3段と、法人が重くなる2例で整理できます。

  • 使用禁止・停止・制限命令違反は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(第39条の2の2第1項)。法人は1億円以下(第45条1号)
  • 危険物の無許可貯蔵・取扱いは1年以下/100万円以下(第41条1項3号)。法人は3,000万円以下(第45条2号)
  • 消防用設備等の設置命令違反も1年以下/100万円以下(第41条1項5号)。法人は3,000万円以下
  • 防火管理者を定めるべき命令の違反は6月以下/50万円以下(第42条1項1号)
  • 上記以外の両罰は、法人も各本条の罰金刑=本人と同額(第45条3号)
  • 防災管理に関する命令違反は、第36条第1項の準用により防火管理と同じ罰則が適用される
  • 刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に改められている

次回は、この章の最後、消防水利を見ていきます。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

消防法第5条の2第1項の規定による命令に違反した者に対する罰則として、正しいものはどれか。

  1. 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
  2. 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
  3. 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
  4. 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
  5. 30万円以下の罰金又は拘留
💡 ヒント

階段のいちばん高い段には、何と書いてありましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

第39条の2の2第1項により、使用の禁止・停止・制限命令への違反は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。予防関係では最も重い罰則です。

問 2

消防法の両罰規定に関する記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 両罰規定が適用される場合、法人に対する罰金刑は常に行為者より重い。
  2. 法人の従業者が業務に関し違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑を科する。
  3. 両罰規定が適用される場合、行為者は罰せられず、法人のみが罰せられる。
  4. 両罰規定により法人に科されるのは、罰金刑のほか拘禁刑も含まれる。
  5. 両罰規定は、法人の代表者の違反行為には適用されない。
💡 ヒント

1つの違反から、矢印は何本伸びていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

第45条柱書きのとおりです。Aは第45条3号の場合は同額なので誤り。Cは「行為者を罰するほか」とあるので誤り。法人に拘禁刑は科せません。代表者の違反行為も対象です。

問 3

危険物を貯蔵所以外の場所で許可を受けないで貯蔵した者が、法人の従業者として業務に関して行った場合における、当該法人に対する罰金刑として正しいものはどれか。

  1. 50万円以下の罰金
  2. 100万円以下の罰金
  3. 300万円以下の罰金
  4. 3,000万円以下の罰金
  5. 1億円以下の罰金
💡 ヒント

ドラム缶の倉庫の絵で、濃い色の札に書かれていた金額です。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

第10条第1項違反は第41条第1項第3号で1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。法人には第45条第2号により3,000万円以下の罰金刑が科されます。

問 4

防災管理者の業務を適正に行わせるための措置を講ずべき旨の命令に違反した者に対する罰則として、正しいものはどれか。

  1. 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
  2. 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
  3. 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
  4. 防災管理については罰則の定めがない。
  5. 30万円以下の罰金
💡 ヒント

2本の線が合流していた先の札を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

第41条第1項第2号の「第8条第4項」には「第36条第1項において準用する場合を含む」とかっこ書きがあり、防災管理の場合も同じ1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります。

問 5

消防法の罰則に関する記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 防火管理者を定めるべき旨の命令に違反した者は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。
  2. 消防用設備等の設置命令に違反して設置しなかった者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる。
  3. 使用停止命令に違反した者については、情状により拘禁刑と罰金を併科することができる。
  4. 刑法改正により、消防法の罰則における「懲役」は「拘禁刑」に改められている。
  5. 防火管理者を定めるべき旨の命令に違反した場合、法人には1億円以下の罰金刑が科される。
💡 ヒント

法人の金額が重くなるのは、いくつの場面だけでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:E

1億円以下となるのは第45条第1号(使用停止命令違反など)だけです。防火管理者を定めるべき命令の違反は第42条第1項第1号で、法人も第45条第3号により各本条の罰金刑=50万円以下となります。

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