第2回:会議は常時、本部は臨時 ― 防災会議と災害対策本部

防災
会議は常時、本部は臨時 防災 第2回 防災会議と災害対策本部 消防昇任試験対策

前回は、災害対策基本法(災対法)の「言葉の定義」を見ました。今回は「誰がトップか」の話です。

大きな災害が起きると、ニュースで「政府は非常災害対策本部を設置しました」と流れます。この「本部」と、ふだんから置かれている「防災会議」は何がちがうのでしょうか。そして、それぞれのトップは誰なのでしょうか。

今回のテーマは「会議は常時、本部は臨時」です。

1

「会議」と「本部」はどうちがう?

📜 災害対策基本法第14条第1項

「都道府県に、都道府県防災会議を置く。」

📜 災害対策基本法第23条第1項(抜粋)

「…災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事は、都道府県地域防災計画の定めるところにより、都道府県災害対策本部を設置することができる。」

つまり、条文の書き方そのものにちがいが出ています。

  • 防災会議 →「置く」=災害があってもなくても、いつも置いておく(常時)
  • 災害対策本部 →「設置することができる」=災害が起きたとき(起きそうなとき)だけ、必要に応じて立ち上げる(臨時)

たとえるなら、防災会議はふだんから作戦を練る会議室です。地域防災計画(=地域の防災の作戦書)を作り、それが実行されるよう後押しします。災害対策本部は、災害が起きたら立ち上げる指揮所です。

左はふだんの会議室で地域防災計画を作る防災会議、右は雨の中で明かりがともる災害対策本部のテント
会議は「ふだん」から、本部は「災害時」だけ
ここ注意

「常時設置される機関は緊急災害対策本部である」はまちがいです。本部はすべて臨時。常時置かれるのは防災会議です。

2

防災会議の会長は「その団体のトップ」

📜 災害対策基本法第11条第1項/第12条第2項

「内閣府に、中央防災会議を置く。」
「会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。」

📜 災害対策基本法第15条第2項

「会長は、当該都道府県の知事をもつて充てる。」

「〜をもつて充てる」は、「〜がその役につく」という意味です。

つまり、防災会議の会長はシンプルで、その団体のいちばん上の人です。

  • 中央防災会議(国)→ 会長は内閣総理大臣。国の防災の大もとの計画「防災基本計画」を作ります(前回見た3点セットの1冊目)
  • 都道府県防災会議 → 会長は都道府県知事
  • 市町村防災会議 → 組織は都道府県防災会議の例にならって市町村の条例で決めるので(第16条第6項)、会長は市町村長
中央防災会議・都道府県防災会議・市町村防災会議の3つの会議室。会長席に内閣総理大臣・知事・市町村長が座る
会長席に座るのは、その団体のトップ
ここ注意

「中央防災会議の会長は内閣官房長官である」はまちがいです。総理の右腕のような役職名を入れた、まぎらわしい選択肢に気をつけてください。

3

地方の本部 ― 置くのも長も、その団体のトップ

📜 災害対策基本法第23条の2第2項

「市町村災害対策本部の長は、市町村災害対策本部長とし、市町村長をもつて充てる。」

つまり、地方の本部は、置く人も本部長も同じ人です。

  • 都道府県災害対策本部 → 置くのは知事、本部長も知事(第23条)
  • 市町村災害対策本部 → 置くのは市町村長、本部長も市町村長(第23条の2)
📜 災害対策基本法第23条の2第3項

「市町村災害対策本部に、市町村災害対策副本部長、市町村災害対策本部員その他の職員を置き、当該市町村の職員又は当該市町村の区域を管轄する消防長若しくはその指名する消防吏員のうちから、当該市町村の市町村長が任命する。」

おもしろいのはこの第3項です。本部のメンバー(副本部長・本部員など)は、市町村の職員のほか、消防長や消防長が指名した消防吏員からも任命できます。

つまり、消防長は本部の一員にはなれるけれど、本部長ではありません。

市町村災害対策本部で、正面の本部長席に市町村長、手前の本部員席に消防長が座っている
消防長の席は「本部員」
ここ注意

「市町村災害対策本部長は、当該市町村の消防長である」はまちがいです。条文に「消防長」という言葉が出てくるので、まぎらわしいところです。

4

国の3つの本部 ― 特定・非常・緊急

国の本部は、災害の大きさに応じて3段階あります。どれも「臨時に内閣府に」置かれ、置くのはすべて内閣総理大臣です。

内閣府の前に、特定・非常・緊急の3つの災害対策本部のテントが小・中・大の順に並び、右へいくほど雨が強くなる
災害が大きくなるほど、上の本部へ
📜 災害対策基本法第23条の4第1項

「特定災害対策本部の長は、特定災害対策本部長とし、防災担当大臣その他の国務大臣をもつて充てる。」

📜 災害対策基本法第25条第1項

「非常災害対策本部の長は、非常災害対策本部長とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもつて充てる。」

3つの本部を表にすると、こうなります。

本部災害の大きさ置く人閣議本部長
特定災害対策本部非常災害には至らないが、命に危険がせまる災害総理いらない防災担当大臣その他の国務大臣
非常災害対策本部非常災害総理いらない総理
緊急災害対策本部著しく異常かつ激甚な非常災害総理必要総理
置くのは3つとも総理。ちがいは「本部長」と「閣議」

ポイント① 置く人と本部長がずれるのは「特定」だけ

特定災害対策本部は、総理が置いて、防災担当大臣などが本部長をつとめます。置く人と本部長が別の人になるのは、3つのなかでこれだけです。

特定災害対策本部の看板を立てるのは総理、本部長席に座るのは防災担当大臣などで、2人が別の人になっている
看板を立てる人と、席に座る人が別

ポイント② 「閣議にかけて」が必要なのは「緊急」だけ

📜 災害対策基本法第28条の2第1項(抜粋)

「著しく異常かつ激甚な非常災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において…内閣総理大臣は…閣議にかけて、臨時に内閣府に緊急災害対策本部を設置することができる。」

閣議とは、総理と大臣全員が集まる会議のことです。いちばん大きな災害なので、内閣で決めてから置きます。特定と非常には、この手続きはありません。

特定・非常・緊急の3本の道のうち、緊急の道だけが閣議の円卓を通ってからテントに着く
円卓を通るのは「緊急」の道だけ

上の本部ができたら、下の本部は引きつぐ

災害が大きくなって上の本部ができると、すでにある下の本部は廃止され、仕事は上の本部に引きつがれます(第24条第3項・第28条の2第3項)。

特定災害対策本部の看板が外され、書類の箱がとなりの非常災害対策本部のテントへ運びこまれている
看板を下ろして、仕事ごと上の本部へ

令和3年の改正で今のかたちに

令和3年5月の改正で、それまで国務大臣(防災担当大臣)がつとめていた非常災害対策本部長を総理に変更しました。そして、その下に防災担当大臣などが長をつとめる特定災害対策本部を新しく作りました。

ここ注意

「特定災害対策本部は国務大臣が設置する」はまちがいです。置くのは総理で、国務大臣は本部長です。「非常災害対策本部の長は内閣官房長官である」もまちがいです。

5

職員の派遣 ― 「要請」と「あっせん」

災害が大きいと、都道府県や市町村の職員だけでは人手が足りません。そこで、国の機関などから職員を送ってもらうしくみがあります。

📜 災害対策基本法第29条第1項(抜粋)

「都道府県知事…は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは…指定行政機関の長、指定地方行政機関の長…に対し…職員の派遣を要請することができる。」

📜 災害対策基本法第30条第1項(抜粋)

「都道府県知事等又は市町村長等は…内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、それぞれ…職員の派遣についてあつせんを求めることができる。」

つまり、ルートは2つです。

  • 要請=職員を出してくれる相手に、直接「来てください」とお願いすること。知事は指定行政機関の長・指定地方行政機関の長に、市町村長は指定地方行政機関の長に要請します。
  • あっせん=間に入って、相手を紹介・調整してもらうこと(仲介役)。知事は内閣総理大臣に、市町村長は都道府県知事にあっせんを求めます。

要請やあっせんを受けた機関は、仕事に著しい支障がない限り、職員を派遣しなければなりません(第31条)。

左は知事が国の行政機関に直接お願いする要請、右は総理大臣が知事と国の行政機関の間に立って調整するあっせん
総理は「職員を出す人」ではなく「橋わたし役」
ここ注意

「知事は、内閣総理大臣に対し、職員の派遣を要請できる」はまちがいです。総理に対しては「あっせんを求める」です。

★ ここだけ覚えればOK ★ 3つだけ!
①
会議は常時、本部は臨時

防災会議は「置く」、災害対策本部は「設置することができる」

②
特定はずれる、緊急は閣議

特定は総理が置き大臣が長。閣議がいるのは緊急だけ

③
要請と、あっせん

知事・市町村長は「要請」。総理には「あっせん」を求める

📒 この記事のまとめ

「誰が置くか」「誰が長か」で整理できます。

  • 防災会議は常に置かれ、計画を作る(第14条)。災害対策本部は災害時に臨時に置かれる(第23条ほか)
  • 会議の会長はその団体のトップ。中央=内閣総理大臣(第12条2項)、都道府県=知事(第15条2項)、市町村=市町村長
  • 地方の本部は、置く人も本部長も知事・市町村長。消防長は本部員にはなれるが本部長ではない(第23条の2)
  • 国の3本部はすべて総理が内閣府に置く。本部長は特定=防災担当大臣その他の国務大臣、非常・緊急=総理
  • 閣議にかけて置くのは緊急災害対策本部だけ(第28条の2)。上の本部ができると下の本部は廃止・承継
  • 知事・市町村長は職員の派遣を「要請」できる(第29条)。総理(市町村長は知事)には「あっせん」を求める(第30条)

次回は、防災計画の中身に進みます。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

災害対策基本法に規定する会議・本部と、その長の組合せのうち、適当でないものはどれか。

  1. 都道府県防災会議の会長 ── 都道府県知事
  2. 市町村災害対策本部長 ── 市町村長
  3. 中央防災会議の会長 ── 内閣官房長官
  4. 非常災害対策本部長 ── 内閣総理大臣
  5. 市町村防災会議の会長 ── 市町村長
💡 ヒント

いちばん大きな会議室の会長席には、日本の地図を背にして誰が座っていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

中央防災会議の会長は内閣総理大臣をもって充てます(第12条第2項)。内閣官房長官ではありません。

問 2

災害対策基本法に規定する機関のうち、常時設置されるものはどれか。

  1. 都道府県災害対策本部
  2. 緊急災害対策本部
  3. 特定災害対策本部
  4. 都道府県防災会議
  5. 非常災害対策本部
💡 ヒント

時計の左側、「ふだん」の側で計画書を作っていたのはどちらでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

都道府県防災会議は「都道府県に、都道府県防災会議を置く」とされ、常に置かれる機関です(第14条第1項)。各種の災害対策本部は、災害時に臨時に設置されます。

問 3

災害対策基本法に規定する組織等と、その長に充てる者の組合せとして、誤っているものはどれか。

  1. 都道府県防災会議 ── 当該都道府県知事
  2. 市町村災害対策本部 ── 当該市町村の消防長
  3. 緊急災害対策本部 ── 内閣総理大臣
  4. 特定災害対策本部 ── 防災担当大臣その他の国務大臣
  5. 中央防災会議 ── 内閣総理大臣
💡 ヒント

市町村の本部の部屋で、消防長の前に置かれていた札には何と書かれていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

市町村災害対策本部長は市町村長をもって充てます(第23条の2第2項)。消防長や消防長が指名する消防吏員は、副本部長・本部員などに任命されることがあります(同条第3項)。

問 4

特定災害対策本部・非常災害対策本部・緊急災害対策本部に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 特定災害対策本部の長は、防災担当大臣その他の国務大臣をもって充てる。
  2. 非常災害対策本部は、内閣総理大臣が臨時に内閣府に設置する。
  3. 非常災害対策本部の長は、内閣総理大臣をもって充てる。
  4. 緊急災害対策本部は、内閣総理大臣が閣議にかけて設置する。
  5. 特定災害対策本部を設置することができるのは、国務大臣である。
💡 ヒント

特定災害対策本部のテントで、看板を立てていたのは誰でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:E

特定災害対策本部を設置するのは内閣総理大臣です(第23条の3第1項)。防災担当大臣その他の国務大臣は本部長に充てられます(第23条の4第1項)。

問 5

災害対策基本法に定める災害時の職員の派遣に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 都道府県知事は、内閣総理大臣に対し、指定行政機関の職員の派遣を要請することができる。
  2. 都道府県知事は、災害復旧のため必要があるときは、指定行政機関の長に対し、職員の派遣を要請することができる。
  3. 市町村長は、指定地方行政機関の長に対し、職員の派遣を要請することができる。
  4. 市町村長は、都道府県知事に対し、指定地方行政機関の職員の派遣についてあっせんを求めることができる。
  5. 指定地方行政機関の長は、派遣の要請があったときは、所掌事務の遂行に著しい支障のない限り、職員を派遣しなければならない。
💡 ヒント

右側の絵で、総理大臣は知事と国の行政機関のどこに立っていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

知事が内閣総理大臣に対して行うのは「要請」ではなく「あっせんを求める」ことです(第30条第1項)。要請の相手は、指定行政機関の長・指定地方行政機関の長などです(第29条第1項)。

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