ガソリン、灯油、シンナー。火がつきやすいものを危険物といいます。ほんの少しなら家にも置いてありますが、たくさん集めると大きな火事のもとになります。
そこで消防法は、「ある量を超えたら、決められた場所にしか置いてはいけない」というルールを作りました。
今回は、その場所の区分と、役所の許可の話です。
まず「指定数量」から ― どこに置いてよいか
「指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。」
つまり、指定数量という目安の量を超える危険物は、決められた施設の中にしか置けません。逆にいうと、指定数量より少なければ、この条文は働きません。
ただし例外があります。工事などでどうしても一時的に置きたいときは、所轄消防長または消防署長の承認をもらえば、10日以内に限って仮に置けます。これを仮貯蔵・仮取扱いといいます。
「10日以内」の数字を変えた選択肢が出ます。またここの承認者は消防長・消防署長です。あとで出てくる仮使用承認とは別なので、セクション7で並べて確認します。
施設は3つに分かれる
危険物を置いてよい施設は、まとめて製造所等と呼ばれます。中身は3つです。
| 区分 | どういう場所か | 代表例 |
|---|---|---|
| 製造所 | 危険物をつくる | 石油精製プラント |
| 貯蔵所 | 危険物をためておく | 屋外タンク貯蔵所、屋内貯蔵所、移動タンク貯蔵所 |
| 取扱所 | 危険物をあつかう | 給油取扱所、一般取扱所、販売取扱所、移送取扱所 |
まちがえやすい3つ
| 実物 | 正しい区分 | まちがいやすい答え |
|---|---|---|
| タンクローリー | 移動タンク貯蔵所(貯蔵所) | 取扱所 |
| ガソリンスタンド | 給油取扱所(取扱所) | 貯蔵所 |
| パイプライン | 移送取扱所(取扱所) | 製造所 |
タンクローリーは走り回っているので「あつかっている」感じがします。でも、中身はためて運んでいるだけ。だから貯蔵所です。
これは覚え方の工夫ではなく、条文に書いてあります。さきほどの第10条第1項のかっこ書きが、「車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)」とはっきり書いていました。
「タンクローリーは取扱所」はまちがいです。移動タンク貯蔵所=貯蔵所です。
許可を出すのは誰か
「製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、…当該各号に定める者の許可を受けなければならない。…
一 消防本部及び消防署を置く市町村の区域に設置されるもの(…移送取扱所…を除く。) ― 当該市町村長
二 消防本部等所在市町村以外の市町村の区域に設置されるもの(移送取扱所を除く。) ― 当該区域を管轄する都道府県知事
四 前号の移送取扱所以外の移送取扱所 ― …都道府県知事(二以上の都道府県の区域にわたつて設置されるものについては、総務大臣)」
読み方は単純です。
- 消防本部と消防署がある市町村 → 市町村長
- 消防本部がない市町村 → 都道府県知事(市町村に消防の体制がないので、県が受け持ちます)
- パイプラインが2つ以上の都道府県にまたがる → 総務大臣
そして、この3者をまとめた呼び名が出てきます。
「前項各号に掲げる…区分に応じ当該各号に定める市町村長、都道府県知事又は総務大臣(以下この章及び次章において「市町村長等」という。)は…」
つまり「市町村長等」には総務大臣が入っています。この一文を覚えておくと、あとの措置命令の問題が一発で解けます。
設置の許可は「与えなければならない」
「…許可の申請があつた場合において、その…位置、構造及び設備が前条第四項の技術上の基準に適合し、かつ、…危険物の貯蔵又は取扱いが公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障を及ぼすおそれがないものであるときは、許可を与えなければならない。」
つまり、基準を満たしていたら、役所は必ず許可を出さなければなりません。「出したくないから出さない」はできないのです。
このように、役所に選ぶ余地がなく、決まったとおりに動くしかない行為を覊束行為(きそくこうい)といいます。自動販売機にお金を入れたら必ず品物が出てくるのと同じ、とイメージするとわかりやすいです。
設置・変更の許可のほか、次のものも覊束行為です。
- 製造所等の完成検査済証の交付
- 予防規程の認可
- 消防用機械器具等の型式承認
「仮」がつく2つの承認は、役所が判断できる
「ただし、…位置、構造又は設備を変更する場合において、当該…のうち当該変更の工事に係る部分以外の部分の全部又は一部について市町村長等の承認を受けたときは、完成検査を受ける前においても、仮に、当該承認を受けた部分を使用することができる。」
工事中でも、工事していない部分だけは先に使わせてほしい——これが仮使用承認です。
ここには「○○ならば承認しなければならない」という基準が、法律に書いてありません。火事の危険や延焼の危険はないか、消防活動の支障にならないか。役所が自分で判断します。
このように、役所に判断の幅がある行為を裁量行為(法規裁量行為)といいます。
仮貯蔵・仮取扱いの承認(第10条第1項ただし書)も同じです。量や性質、周囲の状況から、火災予防上・消防活動上の支障があるかどうかを判断します。
覚え方はかんたんです。「仮」がつく承認は裁量行為。それ以外の許可・認可・承認は覊束行為。
判断の幅があることから、次のことも導かれます。
- 承認は許可の性質を持つので、「こうしてください」という条件(付款・負担)を付けられる
- 承認の基準を役所の内規で決めることもできる
- その内規に反して承認しても、ただちに違法にはならない
「仮使用承認は覊束行為」「仮貯蔵・仮取扱いの承認は覊束行為」は、どちらもまちがいです。
2つの承認は、承認する人がちがう
| 承認 | 条文 | 承認するのは | 期間 |
|---|---|---|---|
| 仮貯蔵・仮取扱い | 第10条1項ただし書 | 所轄消防長又は消防署長 | 10日以内 |
| 仮使用 | 第11条5項ただし書 | 市町村長等 | ― |
どちらも「仮」がつく裁量行為ですが、承認する人がちがいます。
理由を考えるとわかりやすくなります。仮貯蔵は「その場所で10日だけ」という目の前の話なので、現場に近い消防長・消防署長が判断します。仮使用は「許可を受けた施設を、完成検査の前に使ってよいか」という許可そのものに関わる話なので、許可を出した市町村長等が判断します。
2つの承認者を入れ替えた選択肢がよく出ます。仮貯蔵=消防長・消防署長、仮使用=市町村長等です。
許可の取消しと使用停止 ― 保安監督者はどちらか
「市町村長等は、…所有者、管理者又は占有者が次の各号の一に該当するときは、…第十一条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めてその使用の停止を命ずることができる。
一 …許可を受けないで、…位置、構造又は設備を変更したとき。
二 第十一条第五項の規定に違反して、…使用したとき。〔=完成検査前の使用〕
三 前条第二項の規定による命令に違反したとき。
四 第十四条の三第一項又は第二項の規定に違反したとき。〔=保安に関する検査を受けていない〕
五 第十四条の三の二の規定に違反したとき。」〔=定期点検をしていない〕
取消しができるのはこの5つだけです。いずれも、施設の安全そのものに直結する重大なものに限られています。
では、危険物保安監督者を定めていないときはどうでしょうか。実は、少し先の第2項に書いてあります。
「市町村長等は、…次の各号の一に該当するときは、…期間を定めてその使用の停止を命ずることができる。
三 第十三条第一項の規定に違反したとき。」〔=危険物保安監督者を定めていない〕
つまり、保安監督者の未選任は第2項にあります。許可の取消しはできませんが、使用停止命令はできます。「取消事由ではない」=「何も起きない」ではない、ということです。
| 許可の取消し | 使用停止命令 | |
|---|---|---|
| 無許可変更/完成検査前使用 保安検査未受検/定期点検未実施 | できる | できる |
| 保安監督者の未選任 | できない | できる |
「保安監督者を定めていないときは許可が取り消される」はまちがいです。取消しではなく使用停止命令。別に罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)もあります。
無許可の人には措置命令
「市町村長等は、第十条第一項ただし書の承認又は第十一条第一項前段の規定による許可を受けないで指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱つている者に対して、当該貯蔵又は取扱いに係る危険物の除去その他危険物による災害防止のための必要な措置をとるべきことを命ずることができる。」
許可も承認も受けずに勝手に置いている人には、そもそも取り消す許可がありません。だから「どけなさい」と命じるのです。
命じるのは市町村長等。セクション3で見たとおり、ここには総務大臣が含まれます。
「無許可貯蔵への措置命令の権限は総務大臣にはない」はまちがいです。「市町村長等」に総務大臣が含まれています。
移動タンク貯蔵所。GSは給油取扱所、パイプラインは移送取扱所
仮使用・仮貯蔵仮取扱いは裁量行為。設置許可等は覊束行為
未選任は取消事由ではないが、使用停止命令はできる
📒 この記事のまとめ
危険物規制は、場所の区分と誰が許すかの2本立てで整理できます。
- 指定数量以上の危険物は製造所・貯蔵所・取扱所でしか扱えない。仮貯蔵は消防長・消防署長の承認で10日以内(第10条1項)
- タンクローリー=移動タンク貯蔵所、ガソリンスタンド=給油取扱所、パイプライン=移送取扱所
- 許可権者は市町村長・都道府県知事・総務大臣。3者をまとめて「市町村長等」(第11条1項・2項)
- 基準に適合すれば「許可を与えなければならない」=覊束行為(第11条2項)
- 「仮」がつく承認(仮使用・仮貯蔵仮取扱い)は法規裁量行為。付款を課すことができる
- 仮貯蔵の承認者は消防長・消防署長、仮使用の承認者は市町村長等
- 許可の取消事由は5つ。保安監督者の未選任は取消事由ではないが、使用停止命令の事由になる(第12条の2第2項3号)
- 無許可貯蔵等への措置命令は市町村長等が行い、総務大臣も権限を有する(第16条の6)
次回は、危険物をあつかう「人」の資格と、規制が及ばない範囲を見ていきます。
確認問題(全5問)
問 1
危険物施設の分類として誤っているものはどれか。
- 石油精製プラント ―― 製造所
- 屋外タンク ―― 貯蔵所
- ガソリンスタンド ―― 取扱所
- タンクローリー ―― 取扱所
- パイプライン ―― 取扱所
💡 ヒント
ためて運んでいるだけ、と説明したのはどれでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
タンクローリーは移動タンク貯蔵所であり、貯蔵所に区分されます。第10条第1項のかっこ書きが「貯蔵所」と明記しています。
問 2
消防法上の権限のうち、覊束行為に属さないと認められるものはどれか。
- 製造所等の設置又は変更の許可
- 製造所等の仮使用承認
- 製造所等の完成検査済証の交付
- 予防規程の認可
- 消防用機械器具等の型式承認
💡 ヒント
自動販売機にバツがついていたのは、どの場面でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
仮使用承認(第11条第5項ただし書)は、火災発生危険や延焼拡大危険など公益上の観点から判断する法規裁量行為です。ほかの4つは覊束行為です。
問 3
消防法第10条第1項ただし書の危険物の仮貯蔵・仮取扱いの「承認」について、誤っているものはどれか。
- 承認は、覊束行為である。
- 承認の基準を内規で定めることは可能である。
- 承認の基準に違反して承認がなされても、ただちに違法とはならない。
- 承認は、許可の性質を有する。
- 承認の際、相手方に付款(負担)を課すことができる。
💡 ヒント
「仮」がつく承認は、どちらの行為でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
仮貯蔵・仮取扱いの承認は、火災予防上・消防活動上の支障の有無を判断する法規裁量行為であり、覊束行為ではありません。
問 4
消防法第12条の2第1項に定める製造所等の許可の取消事由に該当しないものはどれか。
- 完成検査を受けないで使用したとき
- 許可を受けないで位置、構造又は設備を変更したとき
- 危険物保安監督者を定めていないとき
- 保安に関する検査を受けていないとき
- 定期点検を実施していないとき
💡 ヒント
薄い色の段に1つだけ入っていたのは、どれでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
保安監督者の未選任は第12条の2第2項第3号にあり、許可の取消しはできませんが、使用停止命令の事由にはなります。罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)の対象でもあります。
問 5
消防法上の権限のうち、総務大臣が権限を有しているものはどれか。
- 危険物取扱者免状の返納命令
- 救急業務実施の要請
- 防火対象物の使用停止命令
- 建築許可等の同意
- 危険物の無許可施設等に対する措置命令
💡 ヒント
点線の枠で囲まれていた3つの建物を思い出してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:E
第16条の6の措置命令は「市町村長等」が行います。第11条第2項で市町村長・都道府県知事・総務大臣をまとめて「市町村長等」としているため、総務大臣も権限を有します。


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