第16回:水がなければ、火は消せない ― 消防水利

消防法
水がなければ、火は消せない 消防水利 消防昇任試験対策

消防車が現場に着いても、水がなければ火は消せません。ポンプ車が積んでいる水は、放水を始めると数分で空になります。

だから「どこから水をもらうか」は、あらかじめ街の中に用意しておかなければなりません。この水をもらう場所のことを、消防水利といいます。

今回は数字がたくさん出てきますが、量・口径・距離・深さの4つに分けて覚えれば迷いません。

0

ルールは3段構えになっている

消防水利のルールは、3つの段に分かれています。最初にこの地図を頭に入れておくと、あとが楽になります。

段何を決めているか決めているもの
法律誰がつくり、誰が管理するか消防法第20条
法律よその人の水利を指定するしくみ消防法第21条
告示具体的な量・口径・距離・深さ消防水利の基準
法第20条・法第21条・消防水利の基準の3段のブロックが積み重なっている
法律2本と、告示1本
1

基準は消防庁が「勧告」する、つくるのは市町村

📜 消防法第20条

「消防に必要な水利の基準は、消防庁がこれを勧告する。
2 消防に必要な水利施設は、当該市町村がこれを設置し、維持し及び管理するものとする。但し、水道については、当該水道の管理者が、これを設置し、維持し及び管理するものとする。」

つまり、「どれくらいの水がいるか」の目安を示すのは消防庁です。ただし示すだけで、「必ずこうしなさい」という命令ではありません。これを勧告といいます。

そして、実際に防火水槽をつくったり、消火栓を点検したりするのは市町村です。消防は市町村の仕事だからです。ただし水道(消火栓につながる水道管)は、水道の管理者が受け持ちます。

消防庁が基準の紙を示して勧告し、市町村の作業員が防火水槽と消火栓を設置・点検している
示すのは消防庁、つくるのは市町村
ここ注意

「基準は消防庁が定める」「総務省令で定める」はまちがいです。勧告です。また、水利施設の設置・維持・管理を「都道府県」とするのもまちがい。市町村です。

2

よその人の池も消防水利にできる

📜 消防法第21条第1項・第2項

「消防長又は消防署長は、池、泉水、井戸、水そうその他消防の用に供し得る水利についてその所有者、管理者又は占有者の承諾を得て、これを消防水利に指定して、常時使用可能の状態に置くことができる。
2 消防長又は消防署長は、前項の規定により指定をした消防水利には、総務省令で定めるところにより、標識を掲げなければならない。」

市町村がつくった防火水槽だけでは、どうしても足りません。そこで、お寺の池や工場の井戸のようなよその人のものも、消防水利として使えるようにしています。

ただし勝手には使えません。持ち主が「いいですよ」と言ってくれること、つまり承諾が必要です。指定するのは消防長または消防署長です。

指定したら、そこが消防水利だとわかるように標識をつけます。条文は「掲げることができる」ではなく「掲げなければならない」。義務です。

お寺の池のそばで消防署長が住職に頭を下げて承諾をもらい、池のほとりに消防水利の標識が立っている
よその人の池も指定できる
3

やめるときは、事前の届出だけ

📜 消防法第21条第3項

「第一項の水利を変更し、撤去し、又は使用不能の状態に置こうとする者は、予め所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。」

持ち主が池を埋めたり、水槽を撤去したりするときは、前もって消防長・消防署長に届け出る必要があります。

ここが大事なところです。届け出るだけでよく、許可をもらう必要はありません。もともと持ち主のものですから、消防が「やめてはいけません」と止めることはできないのです。

では何のための届出かというと、消防側が「この水利はもう使えなくなる」と知って、別の水利を手配するためです。

池を埋める工事の前に、持ち主が消防署の窓口で届出を提出している。許可の書類にはバツ
予め(工事の前に)届け出る
ここ注意

「消防長の許可が必要」はまちがい。届出で足ります。「工事が終わってから届け出る」もまちがい。条文は「予め」です。

4

消防水利の9種類

📜 消防水利の基準第2条第2項

「前項の消防水利を例示すれば、次のとおりである。
一 消火栓 二 私設消火栓 三 防火水そう 四 プール 五 河川、溝等 六 濠、池等 七 海、湖 八 井戸 九 下水道」

9つ並んでいますが、条文は「例示すれば」と書いています。つまりこれだけに限られるわけではありません。消防に使える水であれば、ここに書かれていないものでも消防水利になりえます。

消火栓・私設消火栓・防火水そう・プール・河川溝等・濠池等・海湖・井戸・下水道の9種類
例示(これだけではない)
ここ注意

この9つは限定列挙ではなく例示です。「この9つに限られる」という選択肢はまちがいになります。

5

量の基準 ― 40立方メートル

📜 消防水利の基準第3条第1項

「消防水利は、常時貯水量が四十立方メートル以上又は取水可能水量が毎分一立方メートル以上で、かつ、連続四十分以上の給水能力を有するものでなければならない。」

使える水利と認められるには、次のどちらかを満たせば足ります。

  • ためてある水が40立方メートル以上…防火水槽やプールのタイプ
  • 毎分1立方メートル以上くみ上げられて、それが40分以上続く…川や水道のタイプ

ここで計算してみてください。1分間に1立方メートル × 40分 = 40立方メートル。そう、どちらも結局は同じ量にそろえてあるのです。覚えるときは「40立方メートル」の一本で押さえるのが早道です。

なお、この第3条第1項の数量のことを指定水量といいます。あとで出てきます。

40立方メートルの貯水槽と、毎分1立方メートルを連続40分くみ上げる水が等号で結ばれている
どちらかを満たせばよい
ここ注意

「40立方メートルかつ毎分1立方メートル」はまちがいです。条文は「又は」。どちらか一方で足ります。

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消火栓の基準 ― 呼称65と管径150mm

📜 消防水利の基準第3条第2項

「消火栓は、呼称六十五の口径を有するもので、直径百五十ミリメートル以上の管に取り付けられていなければならない。ただし、管網の一辺が百八十メートル以下となるように配管されている場合は、管網の管の直径を七十五ミリメートル以上とすることができる。」

消火栓は、ホースをつなぐ口が呼称65で、直径150mm以上の水道管についていなければなりません。管が細いと、水は出ても勢いが足りないからです。

ただし例外があります。水道管が網目状(管網)に組まれていて、その網目の一辺が180m以下なら、管の直径は75mm以上でよくなります。網目になっていれば、あちこちから水が回り込んでくるので、1本1本は細くても足りる、という考え方です。

さらに同条第3項では、解析及び実測によって毎分1立方メートル以上出ると認められる場合も、75mm以上でよいとされています。

消火栓の接続口が呼称65、地下の水道管が直径150mm以上。管網の一辺180m以下なら75mm以上でよい
呼称65と管径150mm
📜 消防水利の基準第3条第4項

「私設消火栓の水源は、五個の私設消火栓を同時に開弁したとき、第一項に規定する給水能力を有するものでなければならない。」

工場などにある私設消火栓は、5個を同時に開けても量の基準を満たせる水源が必要です。1か所だけ開けて足りるのでは、大きな火事のときに役に立ちません。

ここ注意

私設消火栓の「5個」を2個や3個に変えた選択肢が出ます。5個です。

7

配置の基準 ― 80m・100m・120m・140m

📜 消防水利の基準第4条第1項・第2項(抜粋)

「消防水利は、市街地又は準市街地の防火対象物から一の消防水利に至る距離が、別表に掲げる数値以下となるように設けなければならない。
2 市街地又は準市街地以外の地域で、これに準ずる地域の消防水利は、当該地域内の防火対象物から一の消防水利に至る距離が、百四十メートル以下となるように設けなければならない。」

建物から水利までの距離には、上限があります。遠すぎるとホースが届かず、届いても水の勢いが落ちてしまうからです。

用途地域年間平均風速
4m/s 未満
年間平均風速
4m/s 以上
近隣商業地域・商業地域
工業地域・工業専用地域
100m80m
その他の用途地域および
用途地域の定められていない地域
120m100m
これらに準ずる地域140m

読み方は単純です。風が強いところは火が早く広がるので、水利をより近くに置きます。燃えやすい建物が密集する商業・工業地域も、やはり近くに置きます。

いちばん短いのが「商業・工業+風が強い」の80m、いちばん長いのが準ずる地域の140mです。

商業工業で風4m/s以上は80m、未満は100m、その他は120m、準ずる地域は140m
風が強いほど近くに置く

同条第3項・第4項には、配置の心がまえも書かれています。消火栓は地震で水道管が壊れると使えなくなるので、消火栓のみに偏らないように防火水槽なども混ぜること。そして大地震に備え、耐震性を有するものを計画的に配置することです。

ここ注意

風速の区切りは「4メートル毎秒」です。また、風が強いほうが数字が小さくなる(近くに置く)という向きを間違えないようにしましょう。

8

大きな水利があれば、まわりは省略できる

📜 消防水利の基準第5条

「消防水利が、指定水量(第三条第一項に定める数量をいう。)の十倍以上の能力があり、かつ、取水のため同時に五台以上の消防ポンプ自動車が部署できるときは、当該水利の取水点から百四十メートル以内の部分には、その他の水利を設けないことができる。」

とても大きな水利があるなら、その周りにわざわざ小さな水利を並べる必要はありません。その条件が、次の3つです。

  • 指定水量(40立方メートル)の10倍以上=400立方メートル以上の能力があること
  • 消防ポンプ自動車が同時に5台以上部署できること
  • 省略できるのは、取水点から140m以内の部分

水がたくさんあっても、ポンプ車が1台しかつけられなければ意味がありません。だから「量」と「同時に何台つけられるか」の両方が条件になっています。

ここ注意

「10倍」「5台」「140m」の3つがセットです。どれか1つでも欠けると省略できません。

9

使える水利であるための4つの条件

📜 消防水利の基準第6条

「消防水利は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 地盤面からの落差が四・五メートル以下であること。
二 取水部分の水深が〇・五メートル以上であること。
三 消防ポンプ自動車が容易に部署できること。
四 吸管投入孔のある場合は、その一辺が〇・六メートル以上又は直径が〇・六メートル以上であること。」

水があるだけでは足りません。実際に吸い上げられることが必要です。

  • 落差4.5m以下…ポンプは、空気の重さ(大気圧)に水を押し上げてもらって吸い上げます。理論上の限界は10.33mですが、真空ポンプは完全な真空をつくれず、水温や吸管の摩擦もあるので、実際には7〜8mが限界です。基準の4.5mは、そこからさらに余裕をとった数字です
  • 水深0.5m以上…浅すぎると、吸管が水ではなく空気を吸ってしまいます
  • ポンプ車が容易に部署できる…車が近づけない場所の水は、あっても使えません
  • 吸管投入孔0.6m以上…吸管を入れる穴が小さいと、そもそも入りません
地下式防火水槽の断面図。落差4.5m以下、水深0.5m以上、投入孔0.6m以上、ポンプ車が容易に部署できる
使える水利の4条件

そして第7条が、最後の仕上げです。

📜 消防水利の基準第7条

「消防水利は、常時使用しうるように管理されていなければならない。」

ここ注意

落差は「4.5m以下」、水深は「0.5m以上」で向きが逆です。落差は小さいほうがよく、水深は深いほうがよい、と理由で覚えると間違えません。
また「4.5mがポンプの吸い上げ限界」もまちがい。理論は10.33m、実用は7〜8mです。

★ ここだけ覚えればOK ★ 3つだけ!
①
勧告は消防庁、整備は市町村

基準は消防庁が勧告。設置・維持・管理は市町村(水道は水道管理者)

②
承諾・標識・事前届出

承諾を得て指定、標識は義務、変更撤去は予め届出(許可は不要)

③
40・4.5・0.5・0.6

貯水量40立方メートル、落差4.5m以下、水深0.5m以上、投入孔0.6m以上

📒 この記事のまとめ

消防水利は、誰がやるかと数字の2本立てで整理できます。

項目内容根拠
基準消防庁が勧告法第20条1項
設置・維持・管理市町村(水道は水道管理者)法第20条2項
指定承諾を得て、消防長・消防署長が指定法第21条1項
標識掲げなければならない法第21条2項
変更・撤去予め届出(許可は不要)法第21条3項
貯水量40立方メートル以上 又は 毎分1立方メートル以上×連続40分以上基準第3条1項
消火栓呼称65・管径150mm以上(管網一辺180m以下なら75mm以上)基準第3条2項
私設消火栓5個同時開弁で給水能力基準第3条4項
配置80m/100m/120m(市街地・準市街地)、140m(準ずる地域)基準第4条・別表
省略指定水量の10倍以上+ポンプ車5台以上 → 140m以内は省略可基準第5条
落差4.5m以下基準第6条1号
水深0.5m以上基準第6条2号
吸管投入孔一辺または直径0.6m以上基準第6条4号

これで消防法の第8章まで終わりました。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

消防水利に関する記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 消防に必要な水利の基準は、総務省令で定める。
  2. 消防に必要な水利施設は、当該都道府県が設置し、維持し及び管理する。
  3. 消防に必要な水利の基準は、消防庁が勧告する。
  4. 消火栓につながる水道についても、当該市町村が設置し、維持し及び管理する。
  5. 消防に必要な水利の基準は、市町村長が定める。
💡 ヒント

基準の紙を差し出していた建物には、何と書かれていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

第20条第1項で基準は消防庁が「勧告」します。第2項により水利施設の設置・維持・管理は当該市町村ですが、水道については水道の管理者が行います。

問 2

指定消防水利に関する記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 消防長又は消防署長は、所有者等の承諾を得て消防水利に指定することができる。
  2. 指定をした消防水利には、総務省令で定めるところにより標識を掲げなければならない。
  3. 指定された水利を撤去しようとする者は、予め所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
  4. 指定された水利を使用不能の状態に置こうとする者は、所轄消防長又は消防署長の許可を受けなければならない。
  5. 指定の対象には、池、泉水、井戸、水そうその他消防の用に供し得る水利が含まれる。
💡 ヒント

工事の前に窓口へ出していた紙には、何と書いてありましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

第21条第3項は「予め……届け出なければならない」としており、許可は不要です。もともと所有者等のものなので、消防が止めることはできません。

問 3

消防水利の基準が定める給水能力に関する記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 常時貯水量が40立方メートル以上であり、かつ、取水可能水量が毎分1立方メートル以上であることが必要である。
  2. 常時貯水量が40立方メートル以上、又は取水可能水量が毎分1立方メートル以上で、かつ連続40分以上の給水能力を有するものでなければならない。
  3. 常時貯水量が20立方メートル以上であれば足りる。
  4. 取水可能水量が毎分1立方メートル以上で、かつ連続20分以上の給水能力があれば足りる。
  5. 私設消火栓の水源は、3個を同時に開弁したときに所定の給水能力を有していればよい。
💡 ヒント

2つの絵の間にあった言葉は「かつ」でしたか、それとも「又は」でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

基準第3条第1項のとおりで、「又は」なのでどちらかを満たせば足ります。私設消火栓は同条第4項により5個を同時に開弁したときが基準です。

問 4

消防水利の配置に関する記述のうち、妥当でないものはどれか。

  1. 市街地又は準市街地以外の地域でこれに準ずる地域では、防火対象物から一の消防水利に至る距離を140m以下とする。
  2. 商業地域で年間平均風速が毎秒4m以上の場合、その距離は80m以下とする。
  3. 用途地域の定められていない地域で年間平均風速が毎秒4m未満の場合、その距離は120m以下とする。
  4. 配置に当たっては、消火栓のみに偏することのないように考慮しなければならない。
  5. 工業専用地域で年間平均風速が毎秒4m以上の場合、その距離は140m以下とする。
💡 ヒント

風のマークがいちばん多かった絵の、矢印の長さを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:E

工業専用地域は近隣商業・商業・工業地域と同じ区分で、年間平均風速が毎秒4m以上なら80m以下です。140mは市街地・準市街地以外の準ずる地域の数値です。

問 5

消防水利の基準第6条が定める条件に関する記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 地盤面からの落差は4.5m以下、取水部分の水深は0.5m以上であること。
  2. 地盤面からの落差は4.5m以上、取水部分の水深は0.5m以下であること。
  3. 地盤面からの落差は10.33m以下、取水部分の水深は1.0m以上であること。
  4. 吸管投入孔のある場合は、その一辺又は直径が0.3m以上であること。
  5. 地盤面からの落差は7m以下、取水部分の水深は0.5m以上であること。
💡 ヒント

赤い矢印と青い矢印、長かったのはどちらで、何の数字でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

落差は4.5m「以下」、水深は0.5m「以上」で向きが逆です。吸管投入孔は一辺又は直径が0.6m以上。10.33mは大気圧による理論上の吸い上げ限界で、基準の数値ではありません。

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