第9回:消火器からスプリンクラーまで ― 消防用設備等の種類と「さかのぼらない」原則

消防法
消火器からスプリンクラーまで 消防用設備等の種類と遡及のルール 消防昇任試験対策

ここからは、建物に備えつけるモノの話です。消火器、スプリンクラー、非常ベル、誘導灯。これらをまとめて消防用設備等といいます。

今回のテーマは2つ。「どう分類されているか」と「ルールが変わったら、古い建物はどうなるか」です。

後半の「さかのぼらない原則」は、消防法のなかでもとくに大事な考え方。じっくり見ていきます。

0

誰が、どの建物に(第17条第1項)

📜 消防法第17条第1項

「学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。」

義務を負うのは「関係者」です。第1回で学んだとおり、関係者とは所有者・管理者・占有者の3者(第2条第4項)。つまり、建物を借りて使っているテナントも義務者に含まれます。「占有者は含まれない」はまちがいです。

また、義務は「設置」だけではありません。「設置し、及び維持」。つけたら終わりではなく、使える状態に保ち続ける義務があります。

所有者・管理者・占有者の3人がビルを囲み、設置する・維持するの看板が立っている
3者まとめて「関係者」。設置して、維持する
1

消防用設備等の3つの箱(施行令第7条)

条文には3つの言葉が並んでいました。消防の用に供する設備/消防用水/消火活動上必要な施設。この3つが消防用設備等の中身です。

消防用設備等の3つの箱。消防の用に供する設備、消防用水、消火活動上必要な施設
消防用設備等は、この3つでできている
📜 消防法施行令第7条第1項

「法第十七条第一項の政令で定める消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備及び避難設備とする。」

1つ目の箱「消防の用に供する設備」は、さらに3つに分かれます。

  • 消火設備…火を消すもの
  • 警報設備…火事を知らせるもの
  • 避難設備…逃げるのを助けるもの
消火設備は火を消す、警報設備は知らせる、避難設備は逃げるのを助ける
役割で3つに分かれる
📜 消防法施行令第7条第2項(抜粋)

「前項の消火設備は、水その他消火剤を使用して消火を行う機械器具又は設備であつて、次に掲げるものとする。
一 消火器及び…簡易消火用具
二 屋内消火栓設備
三 スプリンクラー設備
…
九 屋外消火栓設備
十 動力消防ポンプ設備」

📜 消防法施行令第7条第5項・第6項

「5 法第十七条第一項の政令で定める消防用水は、防火水槽又はこれに代わる貯水池その他の用水とする。
6 法第十七条第一項の政令で定める消火活動上必要な施設は、排煙設備、連結散水設備、連結送水管、非常コンセント設備及び無線通信補助設備とする。」

消火活動上必要な施設はこの5つだけです。どれも「消防隊が来てから使うもの」という共通点があります。

排煙設備で煙を出し、連結送水管で上の階まで水を送り、非常コンセントで照明や器具の電源を取り、無線通信補助設備で地下でも無線を通す。建物の人が使うのではなく、消防隊のための設備なのです。

ビルの断面で消防隊員が排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備を使っている
どれも消防隊が使う設備

一方、動力消防ポンプ設備は、施行令第7条第2項の十号に書かれています。つまり消火設備。建物の側が自分で消火するための設備だからです。

「動力消防ポンプ設備は消火活動上必要な施設である」はまちがいです。

動力消防ポンプは消火設備の棚に入りマル、消火活動上必要な施設の棚にはバツ
動力消防ポンプ設備が入るのは「消火設備」のほう
2

ルールが変わっても、さかのぼらない(第17条の2の5)

消防用設備等の基準は、大きな火災が起きるたびに厳しくなってきました。では、基準が変わったとき、すでに建っている建物はどうなるのでしょうか。

📜 消防法第17条の2の5第1項(要約)

「…政令…の規定の施行又は適用の際、現に存する…防火対象物における消防用設備等…がこれらの規定に適合しないときは、当該消防用設備等については、当該規定は、適用しない。この場合においては、当該消防用設備等の技術上の基準に関する従前の規定を適用する。」

つまり、基準が新しくなっても、すでにある建物は古い基準のままでよい。これを「既存不遡及(きぞんふそきゅう)」といいます。「遡及」とは「さかのぼること」。さかのぼらない、という意味です。

なぜでしょうか。基準が変わるたびに全国すべての建物を直させていたら、建物の持ち主に大きな負担がかかり、現実的ではないからです。

基準が変わった日の線をまたいで、古い建物は古い基準のままでよい。新しく建つ建物には新しい基準
基準が変わっても、すでにある建物はそのまま

ただし、例外が4つあります。ここが本番です。

📜 消防法第17条の2の5第1項(かっこ書き)・第2項(要約)

「…消防用設備等(消火器、避難器具その他政令で定めるものを除く。…)…
2 前項の規定は、消防用設備等で次の各号のいずれかに該当するものについては、適用しない。
一 …従前の規定に適合していないことにより…違反している…消防用設備等
二 工事の着手が…施行又は適用の後である政令で定める増築、改築又は大規模の修繕若しくは模様替えに係る…消防用設備等
三 …規定に適合するに至つた…消防用設備等
四 前三号に掲げるもののほか、…現に存する…特定防火対象物における消防用設備等…」

整理すると、新しい基準に合わせなければならないのは次の4つです。

例外中身なぜ
① 消火器・避難器具など第1項のかっこ書きで最初から除外取り替えが簡単で、費用も大きくないから
② 一定規模以上の増改築・大規模修繕政令で定める規模のもの工事をするなら、ついでに直せるから
③ 従前の基準にも違反していたものもともと守っていなかった違反を見逃す理由はないから
④ 特定防火対象物劇場・飲食店・病院・ホテルなど不特定多数が出入りし、危険が大きいから
新しい基準に合わせる4つ。消火器・避難器具など、大きな増改築・修繕、もともと違反していた、特定防火対象物
この4つだけは、さかのぼって適用される

②の「一定規模以上」は、政令に数字で書かれています。

📜 消防法施行令第34条の2第1項

「…政令で定める増築及び改築は、…次の各号に掲げるものとする。
一 工事の着手が基準時以後である増築又は改築に係る…部分の床面積の合計が千平方メートル以上となることとなるもの
二 前号に掲げるもののほか、…床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の二分の一以上となることとなるもの」

📜 消防法施行令第34条の3

「…政令で定める大規模の修繕及び模様替えは、当該防火対象物の主要構造部…である壁について行う過半の修繕又は模様替えとする。」

つまり、1,000㎡以上の増改築か、延べ面積の半分以上の増改築か、壁の半分を超える修繕・模様替え。この規模に達してはじめて、新しい基準が適用されます。

1,000平方メートル以上の増築、延べ面積の2分の1以上、壁の過半の修繕・模様替えの3つの判定
このどれかに当てはまれば、新しい基準
ここ注意

「増改築・修繕を行った場合は、規模を問わず現行基準が適用される」はまちがい。小さなリフォームでは適用されません。

3

用途が変わったとき(第17条の3)

📜 消防法第17条の3第1項(要約)

「…防火対象物の用途が変更されたことにより、…消防用設備等が…基準に適合しないこととなるときは、当該消防用設備等については、当該規定は、適用しない。この場合においては、当該用途が変更される前の…基準に関する規定を適用する。」

考え方は既存不遡及と同じ。用途が変わっても、変更前の基準のままでよいのが原則です。

そして例外も同じ形で4つ並んでいます。

📜 消防法第17条の3第2項(要約)

「一 用途が変更された際、変更前の基準に適合していないことにより…違反している消防用設備等
二 工事の着手が用途変更の後である政令で定める増築、改築又は大規模の修繕若しくは模様替えに係る消防用設備等
三 …基準に適合するに至つた消防用設備等
四 前三号に掲げるもののほか、…用途が変更され、その変更後の用途が特定防火対象物の用途である場合における…消防用設備等」

四号が大事です。用途を変えた結果、特定防火対象物になったら、新しい基準に合わせなければなりません。

たとえば、事務所ビルを改装してホテルにした場合。ホテルは特定防火対象物なので、変更後の基準が適用されます。

事務所ビルが用途変更でホテルになり、特定防火対象物になったので新しい基準に合わせる
特定防火対象物になったら、新しい基準
ここ注意

「用途を変更して特定防火対象物となっても、変更前の基準でよい」はまちがいです。

4

特殊消防用設備等・付加条例・住宅用防災機器

📜 消防法第17条第3項(要約)

「…関係者が、…設置し、及び維持しなければならない消防用設備等に代えて、特殊の消防用設備等その他の設備等(…「特殊消防用設備等」…)であつて、当該消防用設備等と同等以上の性能を有し、かつ、…設備等設置維持計画に従つて設置し、及び維持するものとして、総務大臣の認定を受けたものを用いる場合には、…前二項の規定は、適用しない。」

新しい技術で、決められた設備と同じかそれ以上の性能があるものは、総務大臣の認定を受ければ、決められた設備の代わりに使えます。

ポイントは認定するのが総務大臣だということ。消防長や消防署長の承認は不要です。新しい技術の性能を全国統一で判断する必要があるから、国レベルで判断するのです。

特殊消防用設備等認定申請の書類に総務大臣の印。消防署長の承認欄にはバツと「いらない」の札
認定するのは国。消防署長の承認はいらない
📜 消防法第17条第2項

「市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、前項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令…の規定のみによつては防火の目的を充分に達し難いと認めるときは、条例で、…当該政令…の規定と異なる規定を設けることができる。」

雪が多い、風が強いなど、その土地ならではの事情があるときは、市町村が条例で独自の基準を決められます。これを付加条例といいます。

ただし、できるのは厳しくする(付加する)方向だけ。ゆるめることはできません。消防法が決めた最低ラインを、条例で下回ってはいけないからです。

国が決めた基準の土台の上に条例で厳しくの積み木を積むのはマル、土台を削るのはバツ
積めるが、削れない
ここ注意

「条例で第17条第1項基準の特例や、第17条の2の5・第17条の3の特例(緩和)を定めることができる」はまちがいです。

📜 消防法第9条の2第1項(要約)

「住宅の用途に供される防火対象物…の関係者は、住宅用防災機器…について…設置し、及び維持しなければならない。」

ふつうの住宅にも、住宅用火災警報器をつける義務があります。基準は、政令で定める基準に従って市町村条例で定められます。

ただし、閉鎖型スプリンクラー設備や自動火災報知設備がすでに設置されている住宅では、住宅用防災機器を省略できます。より高性能な設備があるなら、重ねてつける必要はないからです。

ふつうの住まいは住宅用火災警報器を設置。スプリンクラー設備・自動火災報知設備があるときは省略できる
より高性能な設備があれば、省略できる
★ ここだけ覚えればOK ★ 分類と4つの例外!
①
動力消防ポンプは消火設備

消火活動上必要な施設は排煙・連結散水・連結送水管・非常コンセント・無線通信補助の5つ

②
さかのぼる4つ

消火器等・一定規模以上の増改築修繕・従前違反・特定防火対象物

③
認定は総務大臣

特殊消防用設備等は署長の承認不要。付加条例は付加のみ可・緩和は不可

📒 この記事のまとめ

設備の話は「どの箱に入るか」と「いつ新基準になるか」で整理できます。

  • 消防用設備等=消防の用に供する設備(消火・警報・避難)+消防用水+消火活動上必要な施設
  • 消火活動上必要な施設は5つ。動力消防ポンプ設備は消火設備に入る
  • 義務者は関係者(所有者・管理者・占有者)。設置だけでなく維持も義務
  • 基準が変わっても既存の建物は従前のまま(既存不遡及)。例外は4つ
  • 増改築等は1,000㎡以上・延べ面積の2分の1以上・壁の過半の修繕で新基準
  • 特殊消防用設備等は総務大臣の認定。付加条例は付加のみ可

次回は、建てる前の関門である消防同意と、工事をする消防設備士です。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

消防法施行令に定める消火活動上必要な施設を列挙したもののうち、誤っているものはどれか。

  1. 排煙設備
  2. 無線通信補助設備
  3. 連結送水管
  4. 動力消防ポンプ設備
  5. 非常コンセント設備
💡 ヒント

赤いポンプが置かれていたのは、どちらの棚でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

動力消防ポンプ設備は施行令第7条第2項第十号に掲げられた消火設備です。消火活動上必要な施設は、排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備の5つです。

問 2

消防法第17条に定める消防用設備等の設置・維持について記したもののうち、正しいものはどれか。

  1. 設置・維持しなければならない者は所有者及び管理者で、占有者は含まれない。
  2. 設置・維持すべき消防用設備等と同等以上の性能を有する特殊消防用設備等を設置できる。
  3. 設置・維持しなければならない防火対象物は、すべての建築物である。
  4. 消防用設備等は、消火設備・警報設備・避難設備に限られる。
  5. 市町村条例では消防用設備等の基準を一切設けることができない。
💡 ヒント

ビルを囲んでいたのは何人でしたか。そして箱はいくつありましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等を用いることができます(第17条第3項)。義務者は関係者(所有者・管理者・占有者)で、消防用設備等には消防用水・消火活動上必要な施設も含まれ、市町村は付加条例を定められます。

問 3

消防法第17条の2の5に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 基準法令が改正された場合、原則として改正前の基準に適合すれば従前のままでよい。
  2. 消火器・避難器具その他政令で定めるものは、現行の基準法令が適用される。
  3. 従前の基準法令に違反していた消防用設備等には、現行の基準法令が適用される。
  4. 特定防火対象物は、新たな基準法令が適用される。
  5. 増築、改築又は修繕等を行った場合は、規模を問わず現行の基準法令が適用される。
💡 ヒント

「このどれかに当てはまれば」の絵には、3つの判定が並んでいましたね。

✅ 正解と解説を見る

正解:E

増改築・大規模修繕等は、1,000㎡以上または延べ面積の2分の1以上の増改築、壁の過半の修繕・模様替え(施行令第34条の2・第34条の3)に限って現行基準が適用されます。規模を問わないわけではありません。

問 4

消防法第17条の3(用途変更の場合の特例)に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 用途を変更して特定防火対象物となっても、変更前の基準に適合すれば従前のままでよい。
  2. 用途を変更した場合、原則として変更前の用途に応じた基準に適合すれば従前のままでよい。
  3. 変更前の基準に違反していた消防用設備等は、変更後の用途の基準に適合させなければならない。
  4. 用途変更後に政令で定める増改築・大規模修繕等を行った場合は、変更後の用途の基準に適合させなければならない。
  5. 現行の基準に適合するに至った場合は、変更後の用途の基準に適合させなければならない。
💡 ヒント

事務所がホテルになった絵には、どんな札が付いていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

用途変更後の用途が特定防火対象物の用途である場合は、変更後の用途に応じた現行基準に適合させなければなりません(第17条の3第2項第四号)。

問 5

特殊消防用設備等について記したもののうち、誤っているものはどれか。

  1. 消防用設備等と同等以上の性能を有し、総務大臣の認定を受けたものを用いる場合に設置できる。
  2. 認定を受けようとする者は、日本消防検定協会等の性能評価を受けなければならない。
  3. 特殊消防用設備等は、消防長又は消防署長が認めなければ設置できない。
  4. 総務大臣は、不正な手段で認定を受けたことが判明したときは認定を取り消すことができる。
  5. 特殊消防用設備等は、第17条第1項に基づき設置・維持すべき消防用設備等に代えて設置するものである。
💡 ヒント

書類に押されていた印には、何と書いてありましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

特殊消防用設備等は総務大臣の認定を受けたものを用いるため(第17条第3項)、消防長・消防署長の承認は不要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました