第6回:地方公共団体の「財務」ってどうなってる?財源・予算・会計年度をやさしく解説

地方自治法
財源・予算・会計年度 ― 地方公共団体の財務をやさしく解説

これまで、地方公共団体の種類、住民の権利、条例と規則、議会と執行機関、地方公共団体の事務を見てきました。

今回のテーマは、地方公共団体の「お金」に関する仕組み、財務です。地方公共団体も、私たちの家計と同じように「お金の出入り」を管理しなければなりません。ただし、そのルールはかなり細かく決まっています。

数字と用語の組み合わせを問うひっかけが多い分野なので、ひとつずつ正確に押さえていきましょう。

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そもそも「財務」ってなに?

地方公共団体の財務とは、収入をどう集め、それをどう予算に組み込み、どう管理して支払うか、という一連の仕組みのことです。

そもそも財務ってなに?①財源=どこからお金を集めるか、②予算=集めたお金をどう配分するか、③会計年度・出納=実際にどう管理・支払うか。この3つの視点で整理する
財源・予算・会計年度、3つの視点で整理する

大きく分けると、①どこからお金を集めるか(財源)、②集めたお金をどう配分するか(予算)、③実際にお金を管理・支払う手続(会計年度・出納)の3つの視点で整理できます。この記事では、この3つを順番に見ていきます。

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地方財政の財源

地方公共団体の収入には、いくつかの種類があります。

地方財政の財源5つを比較。地方税=自主財源・財政自主権の基軸、地方交付税=一般財源・使途自由、国庫支出金=特定財源・使途が決まっている、地方債=借金(証券発行・借入による債務、償還が一会計年度を超える)、地方譲与税=国が徴収して地方に配分
地方債=借金、地方譲与税=国経由、を要チェック

地方税は、地方公共団体が住民から直接集める、財政自主権の基軸となる自主財源です。国庫支出金は、地方が支出する特定の経費について、その全部または一部を国が負担するもので、使いみちが決められている特定財源です。地方交付税は、地域間の税収の格差を埋めるためのもので、使いみちが自由な一般財源です。「国庫支出金=使途が決まっている」「地方交付税=使いみち自由」という対比で覚えておくと区別しやすくなります。

特にひっかけが多いのが、地方債と地方譲与税です。地方債とは、地方公共団体が証券を発行したり、お金を借り入れたりすることで生じる債務で、その返済(償還)が一会計年度を超えて行われるもの、つまり将来返す「借金」です。同じ年度内の資金繰りのために借りる一時借入金とは区別されます。「株式・社債・投資信託等の利潤で得た収入」という説明は、まったくの誤りです。地方譲与税は、本来は国税として国が徴収したものを、一定の基準で地方に配分するものです。地方公共団体が住民から直接集めるわけではありません。

たとえるなら、地方税は「自分で稼いだお給料」、地方交付税は「家族間で足りない分を融通してもらうお小遣い(使いみち自由)」、国庫支出金は「用途を指定されたプレゼント」、地方債は「将来返す約束のローン」、地方譲与税は「親が代わりに集めて配ってくれるお金」のようなイメージです。

⚠ ひっかけ注意

「地方債とは、株式・社債・投資信託等の利潤で得た収入である」は誤り(証券発行・借入による借金)。「地方交付税は使途が国により定められている」も誤りで、一般財源で使途自由です。

3

予算の原則と種類

予算には、いくつかの基本原則があります。

予算の3原則。①総計予算主義=一会計年度の収入・支出はすべて予算に編入、②会計年度独立の原則=各年度の歳出はその年度の歳入で充てる、③予算事前議決の原則=年度開始前に議会の議決を経る(例外=暫定予算あり)
事前議決にも暫定予算という例外がある

総計予算主義とは、一会計年度のすべての収入・支出を、もれなく予算に組み込まなければならないという原則です。会計年度独立の原則とは、各年度の支出は、その年度の収入でまかなうという原則です。予算事前議決の原則とは、予算は年度が始まる前に、議会の議決を経なければならないという原則です。

ただし、事前議決の原則には例外があります。議会が成立しないなどの事情で、年度開始前に本予算が成立しないときは、暫定予算で対応します。「事前議決に例外は一切ない」という説明は誤りです。

数年度にまたがる経費については、2つの制度があります。

継続費と繰越明許費の違い。継続費=経費の総額と年割額を最初に決め、複数年度にわたって実施できる仕組み。繰越明許費=翌年度の1年間だけ繰り越せる(それ以降への繰越しはできない)
複数年度=継続費、1年だけ=繰越明許費

継続費は、完成までに数年度かかる事業について、経費の総額とその年ごとの割り当て額(年割額)をあらかじめ定めて、数年度にわたって支出するものです。繰越明許費は、単年度予算が前提ですが、年度内に支出が終わらない見込みの経費について、議決を得たうえで、翌年度に限って繰り越して使用できるようにするものです。

ここで注意したいのは、繰越明許費は「翌年度の1年間」に限って繰り越せる、という点です。複数年度にわたって支出できるのは継続費のほうです。「繰越明許費は翌年度以降、何年でも繰り越せる」という説明は誤りです。たとえるなら、継続費は「最初から3年計画とわかっている工事の予算」、繰越明許費は「今年度に終わる予定だったが、やむを得ず1年だけ延長する予算」というイメージです。

⚠ ひっかけ注意

「予算事前議決の原則に例外は一切認められない」は誤り(暫定予算等の例外あり)。「繰越明許費は翌年度以降に繰り越して使用できる」も誤りで、翌年度の一年間に限ります。

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会計年度・出納・支出方法の特例

会計年度は、4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります。

会計年度と出納閉鎖のスケジュール。4月1日に会計年度スタート、翌年3月31日に会計年度終了、4月1日〜5月31日が出納整理期間、5月31日が出納閉鎖日(9月30日ではない)
出納閉鎖=翌年度の5月31日、と数字で覚える

年度が終わった後も、その年度中に確定した債権・債務を現金で整理するための期間があり、これを出納整理期間と呼びます。出納整理期間は、翌年度の4月1日から5月31日までです。そして、この整理作業を締め切る日である出納閉鎖日は、翌年度の5月31日です。「9月30日」とするのは誤りです。会計管理者は、出納閉鎖後3か月以内に、決算を長に提出します。

支出方法の特例のうち、特に問われやすいのが前金払と概算払の違いです。

前金払と概算払、決定的な違い。前金払=金額は確定している(例:工事代金100万円を先に支払う)。概算払=金額は未確定のまま、まずは概算で支払い、後から実費に基づいて精算する(例:出張費)
確定=前金払、未確定=概算払

どちらも「先に払う」という点は同じですが、支払う金額が確定しているかどうかで区別されます。前金払は、金額が確定している債務について、支払うべき時期が来る前に前払いするものです(例:工事代金の前払い)。概算払は、金額がまだ確定していない段階で、とりあえず概算で支払い、後から精算するものです(例:旅費・補助金)。「前金払は金額が不確定な債務について支払う」という説明は誤りで、それは概算払の説明です。

たとえるなら、前金払は「確定した金額のチケット代を、使う前に払っておく」イメージ、概算払は「旅行の交通費や食費をざっくり見積もって渡しておき、あとで領収書と合わせて精算する」イメージです。

⚠ ひっかけ注意

「出納閉鎖日は翌年度の9月30日である」は誤り(5月31日)。「前金払は金額不確定の債務について支払う」も誤りで、金額が確定した債務です(不確定は概算払)。

★ ここだけ覚えればOK ★ 財源・予算・会計年度は3カードで!
地方債=借金、地方譲与税=国経由

地方交付税=使途自由、国庫支出金=使途が決まっている

繰越明許費は翌年度1年だけ

複数年度にわたるのは継続費/事前議決にも暫定予算の例外あり

出納閉鎖は5月31日

前金払=金額確定・概算払=金額未確定

📒 この記事のまとめ

地方公共団体の財務は、①財源、②予算、③会計年度・出納の3つの視点で整理できます。

  • 地方税=自主財源、地方交付税=一般財源(使途自由)、国庫支出金=特定財源、地方債=借金、地方譲与税=国が徴収し配分
  • 予算の3原則(総計予算主義・会計年度独立・事前議決)。事前議決には暫定予算という例外がある
  • 継続費=数年度にわたる、繰越明許費=翌年度の1年間だけ
  • 会計年度は4/1〜3/31、出納閉鎖は翌年度の5/31。前金払=金額確定、概算払=金額未確定

数字(5月31日・年割額・翌年度1年間)と、用語の組み合わせをセットで復習しておきましょう。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

地方財政の収入源に関する説明として、適当でないものはどれか。

  1. 地方税は、地方公共団体の財政自主権の基軸をなす歳入である
  2. 国庫支出金は、特定の経費について国がその全部又は一部を負担し、使途が定められている
  3. 地方交付税は、地域間の税源の不均衡を是正し、行政の統一的水準を確保するものである
  4. 地方債は、地方公共団体が株式・社債・投資信託等の利潤で得た収入である
💡 ヒント

地方債は「将来返す」ものでしたか、それとも「儲けて得た」ものでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

地方債とは、証券の発行または資金の借入れによる債務で、その償還が一会計年度を越えて行われるものです。「株式・社債等の利潤で得た収入」は全くの誤りです。

問 2

地方債に関する記述として、妥当なものはどれか。

  1. 地方債は、同一会計年度内の資金繰りのために借り入れるものである
  2. 地方債は、その償還が一会計年度を越えて行われる債務である
  3. 地方債は、地方公共団体が住民から直接賦課徴収する税である
  4. 地方債は、使途が自由な一般財源である
💡 ヒント

一会計年度で返せるお金と、年度をまたいで返すお金は区別されていました。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

地方債は証券発行・借入れによる債務で、償還が一会計年度を越えるものです。同一年度内の資金繰りのための一時借入金とは区別されます。

問 3

予算に関する記述として、適当でないものはどれか。

  1. 予算を調製し執行する権限は、地方公共団体の長にある
  2. 総計予算主義とは、一会計年度の一切の収入支出を予算に編入することをいう
  3. 会計年度独立の原則とは、各年度の歳出はその年度の歳入をもって充てるという原則である
  4. 予算事前議決の原則には、いかなる場合も例外は認められていない
💡 ヒント

議会が年度開始前に予算を議決できなかったとき、地方公共団体は何もできなくなるのでしょうか。

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正解:D

予算事前議決の原則には、議会が年度開始前に本予算を議決できない場合に対応する暫定予算という例外があります。「例外は一切認められていない」とするDが誤りです。

問 4

予算における経費の取扱いに関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 継続費は、履行に数年度を要するものについて経費の総額と年割額を定め、数年度にわたって支出する
  2. 繰越明許費は、年度内に支出が終わらない見込みの経費について議決を得て、翌年度以降(複数年度)にわたり繰り越して使用できる
  3. 繰越明許費は、予算として議決を得る必要がある
  4. 継続費では、各年度に支出する年割額をあらかじめ定める
💡 ヒント

繰り越せるのは「翌年度」だけでしたか、それとも何年でも繰り越せましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

繰越明許費は翌年度の一年間に限り繰り越して使用できます(自治法第213条)。「翌年度以降(複数年度)」とするBが誤りです。複数年度にわたるのは継続費です。

問 5

会計年度・出納に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 会計年度は4月1日に始まり翌年3月31日に終わる
  2. 出納閉鎖日は翌年度の9月30日である
  3. 出納整理期間には、年度末までに確定した債権・債務について現金による整理が行われる
  4. 出納整理期間は翌年度の4月1日から5月31日までである
💡 ヒント

出納閉鎖日は、出納整理期間の最後の日と一致していましたね。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

出納閉鎖日は翌年度の5月31日です(自治法第235条の5)。「9月30日」とするBが誤りです。

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