今回は2つのテーマを扱います。前半は、前回学んだ点検の防災管理版。後半は、燃えにくい材料を使わせるルール=防炎規制です。
ホテルの分厚いカーテンや、劇場の緞帳(どんちょう)。あれは、火がついても燃え広がりにくい特別な布でできています。
なぜそんな決まりがあるのか、というお話です。
防災管理点検(第36条)
防災管理(地震などへの備え)にも、点検のしくみがあります。
「…第八条の二の二…の規定は、…防災管理対象物について準用する。」
「準用」とは「同じようにあてはめる」という意味です。つまり、防火対象物点検とほぼ同じしくみが、防災管理にもあります。
- 点検は年1回以上
- 点検するのは防災管理点検資格者。3年以上の実務経験がある防災管理者などで、総務大臣が登録した法人の講習を修了した人
- 結果は消防長または消防署長に報告
- 結果は防災管理維持台帳に記録・保存
- 合格すれば表示を貼れる
表示の条件も前回と同じ2つです。
「第四条の二の七第一項…の規定は…防災管理点検の表示について準用する。」
つまり、①年1回以上きちんと点検していること、②基準に適合していることの両方が必要。「基準を満たしていれば表示できる」は、点検の条件が抜けているのでまちがいです。
防炎対象物品とは(第8条の3)
「高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。…)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。」
つまり、決められた建物で使うカーテンなどは、燃えにくいものでなければいけない、というルールです。
「防炎(ぼうえん)」とは「炎を防ぐ」。まったく燃えないわけではなく、火がついても燃え広がりにくいという意味です。
どんな物品が対象かは、政令に具体的に書かれています。
「法第八条の三第一項の政令で定める物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等…、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートとする。」
カーテン、ブラインド、暗幕、じゅうたん、展示用の合板、どんちょう、舞台の大道具、工事用シート。どれも面積が大きくて、火がつくと一気に燃え広がるものばかりです。だから最初から燃えにくくしておく、というわけです。
販売・陳列には表示が必要
「2 防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(…「防炎物品」…)には、…前項の防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる。
4 防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が付されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。」
2項は「付することができる」=表示は任意です。
でも4項を読むと、防炎物品として売るなら話は別。「防炎です」と言って売ったり、お店に並べたりするには、表示が付いていなければなりません。
買う人は、カーテンを見ただけでは燃えにくいかどうか分かりません。だから表示が「証明書」の役割をするのです。
「販売のために陳列する場合は表示がなくてもよい」はまちがい。「表示が付されていないものでなければならない」も、逆になっていてまちがいです。
どの建物で使うのか
「法第八条の三第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物…並びに工事中の建築物その他の工作物…とする。」
法律(第8条の3第1項)と政令を合わせると、防炎対象物品を使わなければならない建物は次のとおりです。
- 高層建築物…高さ31メートルを超える建築物(消防法第8条の2第1項)。高いビルは、はしご車が届かず、逃げるのにも時間がかかるからです
- 地下街
- 劇場・キャバレー・旅館・病院など
- (12)項ロ=テレビスタジオ。強い照明を使い、燃えやすい大道具が多いからです
- 工事中の建築物…工事用シートが対象物品に入っているのはこのためです
数字のひっかけに注意。高層建築物は31メートル超です。
最後に、複合用途ビル(1つの建物にいろんなお店が入っているビル)の扱いです。
「別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で前項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、…当該用途に供される一の防炎防火対象物とみなす。」
つまり、複合用途ビル全体ではなく、その中の該当する用途の部分だけが対象になります。1階に飲食店、3階に事務所というビルなら、飲食店の部分だけが防炎の対象です。
「複合用途防火対象物は、用途を問わず建物全体が対象である」はまちがいです。
防災管理点検も、年1回以上の点検+基準適合がそろって表示できる
防炎物品として販売・陳列するなら、表示が付いたものでなければならない
地下街・劇場等・テレビスタジオ・工事中建築物も対象。複合用途は部分だけ
📒 この記事のまとめ
防炎規制は「燃え広がらせない」ための備えでした。
- 防災管理点検は年1回以上。点検資格者は3年以上の実務経験+登録講習修了
- 防災管理点検の表示も、年1回以上の点検と基準適合の2要件が必要
- 防炎対象物品はカーテン・ブラインド・暗幕・じゅうたん・展示用合板・どん帳・舞台大道具・工事用シート
- 表示を付すこと自体は任意だが、防炎物品として販売・陳列するには表示が必要
- 防炎規制の対象は高層建築物(31m超)・地下街・劇場等・テレビスタジオ・工事中の建築物
- 複合用途防火対象物は、該当する用途に供される部分が対象
これで消防法の第4章まで終わりました。点検と防炎は、数字と対象の切り分けがすべてです。
確認問題(全5問)
問 1
防災管理対象物の点検等についての記述のうち、誤っているものはどれか。
- 点検は、1年に1回以上行っている。
- 3年以上の実務経験を有する防災管理者で、総務大臣の登録を受けた法人の講習の課程を修了した者は、防災管理点検資格者である。
- 点検結果は消防長又は消防署長に報告しなければならない。
- 防災管理点検の基準を満たしていれば、防災管理点検の表示を付することができる。
- 点検を行った場合には、結果を防災管理維持台帳に記録し、関係書類とともに保存しなければならない。
💡 ヒント
シールの台座にあった鍵穴は、いくつでしたか。
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正解:D
表示を付すには、年1回以上点検していることと、点検基準に適合していることの2要件が必要です(施行規則第51条の15が準用する第4条の2の7第1項)。基準適合だけでは足りません。
問 2
防災管理対象物の点検に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 防災管理点検は3年に1回以上行えばよい。
- 防災管理点検資格者は、実務経験を要しない。
- 防災管理点検の結果は、報告を要しない。
- 防災管理点検の結果は記録・保存を要しない。
- 防災管理点検の表示には、年1回以上の点検と点検基準への適合の2要件が必要である。
💡 ヒント
防火対象物点検と「準用」の関係を思い出してください。しくみはほとんど同じでした。
✅ 正解と解説を見る
正解:E
防災管理点検は年1回以上行い、結果は報告・記録保存を要します。表示には年1回以上の点検と基準適合の2要件が必要です。
問 3
消防法第8条の3に定める防炎対象物品等について記したもののうち、誤っているものはどれか。
- どん帳、カーテン、展示用合板は、防炎対象物品である。
- 販売のために陳列する場合は、表示が付されていなくてもよい。
- 防炎対象物品又はその材料には、防炎性能を有する旨の表示を付すことができる。
- 防炎性能を有する旨の表示は、総務省令で定めるところによる。
- 防炎物品として販売する場合には、表示が付されたものでなければならない。
💡 ヒント
売り場で、ラベルのないカーテンはどうなっていましたか。
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正解:B
防炎物品として販売し、又は販売のために陳列する場合は、表示が付されたものでなければなりません(第8条の3第4項)。陳列も販売と同じあつかいです。
問 4
防炎性能を有する防炎対象物品を使用しなければならない防火対象物として、誤っているものはどれか。
- 高層建築物(高さ31mを超える建築物)
- 地下街
- 複合用途防火対象物(建物全体)
- 工事中の建築物
- テレビスタジオ
💡 ヒント
複合用途ビルの断面図で、色がついていたのは何階でしたか。
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正解:C
複合用途防火対象物については、防炎防火対象物の用途に供される部分が対象であり(施行令第4条の3第2項)、建物全体が一律に対象となるわけではありません。
問 5
防炎防火対象物の範囲に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
- テレビスタジオは防炎規制の対象である。
- 高層建築物とは、高さ20mを超える建築物をいう。
- 地下街は防炎規制の対象に含まれない。
- 工事中の建築物は防炎規制の対象に含まれない。
- 複合用途防火対象物は、用途を問わず建物全体が対象である。
💡 ヒント
5つ並んだ建物の絵のなかに、カメラと照明が見えるものがありましたね。
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正解:A
テレビスタジオ(別表第一(12)項ロ)は防炎規制の対象です。高層建築物は31m超、地下街・工事中の建築物も対象で、複合用途は該当する用途の部分が対象です。


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