第10回 国会のしくみ② ― 国政調査権・議員の特権・緊急集会

憲法
国会のしくみ② 国政調査権・議員の特権・緊急集会

前回は、国会の地位・二院制・衆議院の優越を見ました。今回はその続きです。

取り上げるのは、国政調査権・国会議員の特権・参議院の緊急集会の3つ。

ここでのカギは、「国政調査権は誰の権限か」「不逮捕特権はどこまで守られるのか」。言葉のイメージだけで覚えると足をすくわれる、ひっかけの多い分野です。

1

国政調査権(第62条)

国政調査権とは、国の政治について調べることができる権限です。具体的には、証人の出頭・証言を求めたり、記録の提出を求めたりできます。

ここが最大のポイント。国政調査権は「国会」の権限ではなく、「各議院(衆議院・参議院それぞれ)」の権限です(第62条)。

衆議院・参議院が、それぞれ独立して行使でき、両院は対等です。

  • 証人の出頭・証言を求める(証人喚問)
  • 記録の提出を求める
  • 議員の派遣を行う
国政調査権(第62条):国会ではなく各議院の権限。衆議院・参議院がそれぞれ独立して調査。手段は証人の出頭・証言、記録の提出、議員の派遣
国政調査権は「各議院」の権限(両院が独立して行使)
⚠ ひっかけ注意

「国政調査権は国会(両院一体)の権限である」は、厳密には誤り。正しくは各議院の権限です。また、国政調査権は国政の広い範囲に及びますが、無制限ではありません(司法権の独立などによる限界があります)。「国政のすべてに無制限に及ぶ」は誤りです。なお、大日本帝国憲法には現在のような国政調査権の規定はありませんでした。

2

国会議員の3つの特権

国会議員には、職務をしっかり果たせるよう、次の3つの特権が認められています。

  • ① 不逮捕特権:会期中は、原則として逮捕されない
  • ② 免責特権(発言・表決の院外無答責):議院内での発言や表決について、院外で責任を問われない
  • ③ 歳費受給権:法律の定める歳費(給与)を受ける
国会議員の3つの特権:①不逮捕特権②免責特権③歳費受給権。国政調査権は議員の特権ではない(議院の権限)
議員の特権は「不逮捕・免責・歳費」の3つ

📌 不逮捕特権の限界・例外

不逮捕特権は、これは「逮捕されない」だけであって、刑事責任そのものを免れる権利ではありません。有罪判決を受けることもあります。

また、例外があります。院外での現行犯逮捕の場合と、議院の許諾がある場合は、会期中でも逮捕されます(国会法第33条)。

さらに、会期前に逮捕された議員は、議院の要求があれば会期中に釈放されます(当然に釈放されるわけではありません)。なお、不逮捕特権は閉会中は認められませんが、緊急集会中の参議院議員には認められます

不逮捕特権の限界:会期中は原則逮捕されないが、院外の現行犯逮捕・議院の許諾があるときは例外。刑事責任を免れるわけではない。会期前の逮捕は議院の要求があれば釈放
不逮捕特権の限界と例外
⚠ ひっかけ注意

「国政調査権」は、議員個人の特権ではありません(議院の権限です)。また、「他の特定の国家機関の構成員となる権利」も議員の特権ではありません。議員の特権は、あくまで不逮捕・免責・歳費の3つです。

3

参議院の緊急集会(第54条)

衆議院が解散されると、衆議院の議員はいなくなります。その間に、国に緊急の必要が生じたらどうするか。

このとき開かれるのが、参議院の緊急集会です(第54条)。衆議院の解散中(参議院の閉会中)に、内閣の求めにより開かれます。

注意点は2つ。まず、扱えるのは緊急の応急措置に限られること。集会を必要とする案件以外の一般的案件は審議・議決できません

もうひとつ、緊急集会での議決はあくまで臨時のもの次の国会の開会後10日以内に衆議院の同意が得られなければ、その効力は将来に向かって失われます。

参議院の緊急集会(第54条):衆議院の解散中に内閣の求めにより開く。応急措置に限る(一般的案件は審議できない)。次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がなければ効力を失う
緊急集会は内閣の求めで開かれ、応急措置に限られる
⚠ ひっかけ注意

「緊急集会では、示された案件以外の一般的案件も審議・議決できる」は誤り(応急措置に限られる)。「緊急集会は参議院が自ら求めて開く」も誤りで、正しくは内閣の求めによります。

★ ここだけ覚えればOK ★ 国会②は3カードで!
国政調査権=各議院の権限

国会ではなく各議院/証人喚問・記録提出・議員派遣

議員の特権は3つ=不逮捕・免責・歳費

不逮捕でも刑事責任は免れない。国政調査権は特権ではない

緊急集会=解散中・内閣の求め

応急措置限定/次の国会後10日以内に衆議院の同意

📒 この記事のまとめ

今回は、国会の続きとして国政調査権・議員の特権・緊急集会を見てきました。

  • 国政調査権は「各議院」の権限(国会ではない)/無制限ではない
  • 議員の特権は不逮捕・免責・歳費の3つ(国政調査権は含まれない)
  • 不逮捕特権でも刑事責任は免れない/院外の現行犯・議院の許諾は例外
  • 緊急集会は衆議院解散中に内閣の求めで開かれ、応急措置に限られる

前回の「国会①」とあわせて押さえれば、統治機構の中心である国会は得点源にできます。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

国政調査権に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 内閣に与えられた権限である
  2. 各議院(衆議院・参議院それぞれ)に与えられた権限である
  3. 国会(両院一体)として行使する権限である
  4. 内閣総理大臣に与えられた権限である
💡 ヒント

「国会」と「各議院」の言い分けが問われています。第62条の主語を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

国政調査権は、各議院(衆議院・参議院それぞれ)に与えられた権限です(第62条)。「国会(両院一体)の権限」とするCは、厳密には誤りです。内閣や内閣総理大臣の権限でもありません。

問 2

国政調査権の手段や範囲に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 証人の出頭や証言を求めることができる
  2. 記録の提出を求めることができる
  3. 議員を派遣して調査することができる
  4. 国政の全てについて、何らの限界もなく無制限に調査できる
💡 ヒント

国政調査権に「限界」はあったか、なかったかを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

国政調査権は国政の広い範囲に及びますが、司法権の独立などによる限界があり、無制限ではありません。したがってDが誤りです。証人喚問・記録の提出要求・議員派遣はいずれも調査の手段として認められています。

問 3

次のうち、国会議員の特権に含まれないものはどれか。

  1. 不逮捕特権
  2. 発言・表決の院外無答責(免責特権)
  3. 国政調査権
  4. 歳費を受ける権利
💡 ヒント

国政調査権は「誰の」権限だったかを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

国政調査権は議員個人の特権ではなく、議院に与えられた権限です(第62条)。国会議員の特権は、不逮捕特権・免責特権・歳費受給権の3つです。

問 4

国会議員の不逮捕特権に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 議院の許諾があれば、会期中でも逮捕される
  2. 不逮捕特権により、議員は刑事責任そのものを免れる
  3. 会期中は、院外での現行犯であっても逮捕されない
  4. 会期前に逮捕された議員は、当然に会期中に釈放される
💡 ヒント

不逮捕特権の「例外」と、会期前逮捕の釈放の条件を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

議院の許諾があれば、会期中でも逮捕されます(国会法第33条)。不逮捕特権は「逮捕されない」だけで刑事責任を免れるものではなく(B)、院外の現行犯は例外として逮捕されます(C)。会期前に逮捕された議員の釈放は、議院の要求があった場合に限られます(Dは誤り)。

問 5

参議院の緊急集会に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 緊急集会は、参議院が自ら必要と認めたときに開く
  2. 緊急集会では、緊急の案件以外の一般的案件も審議・議決できる
  3. 緊急集会の議決は、次の国会の開会後30日以内に衆議院の同意がなければ効力を失う
  4. 緊急集会は、衆議院の解散中に内閣の求めにより開かれる
💡 ヒント

「誰の求めで開くか」「扱える案件の範囲」「衆議院の同意の期限」を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

緊急集会は、衆議院の解散中に内閣の求めにより開かれます(第54条)。参議院が自ら求めて開くのではなく(A)、扱えるのは応急措置に限られ一般的案件は審議できません(B)。衆議院の同意の期限は「次の国会開会後10日以内」であり、30日ではありません(C)。

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