前回は、司法権の独立と裁判官の身分保障を見ました。今回はその続きで、裁判所シリーズの最終回です。
取り上げるのは、違憲立法審査権・裁判の公開・弾劾裁判所の3つ。
ポイントは、「違憲審査は最高裁だけ?」「裁判はどこまで公開?」「裁判官を裁くのはどこ?」。言葉のイメージで間違えやすい、ひっかけの多い分野です。
違憲立法審査権(第81条)
違憲立法審査権とは、「法律やルールが憲法に違反していないかをチェックする権限」のこと。憲法という“ものさし”に、法律が収まっているかを測るイメージです。
憲法第81条は、最高裁判所を「一切の法律・命令・規則・処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を持つ終審裁判所」と定めています。最高裁は「憲法の番人」と呼ばれます。
📌 下級裁判所も違憲審査できる
違憲審査権は最高裁判所だけのものではありません。下級裁判所も違憲審査ができます。最高裁は、その「終審(最後の判断)」を下す裁判所、という関係です。「違憲審査権は最高裁判所のみが持つ」は誤りです。
📌 付随的違憲審査制
日本の違憲審査は「付随的(ふずいてき)違憲審査制」。これは、具体的な事件の裁判を解決するのに必要な範囲で、憲法に違反していないかを判断する方式です。現実の事件が前提なので、事件と関係なく法律そのものを抽象的に審査することはできません(警察予備隊違憲訴訟)。したがって、「違憲の疑いがある法律を、国民が直接、裁判所に審査してほしいと請求する」ことはできません。
「違憲審査権は最高裁判所のみが持つ」は誤り(下級裁判所もできる)。「具体的事件がなくても法律を抽象的に審査できる」も誤り(付随的審査制)。違憲審査の対象は法律・命令・規則・処分のすべて(処分も含む)。
裁判の公開(第82条)
裁判は、密室で行うと不公正になりかねません。そこで原則として「対審(たいしん)」と「判決」は公開の法廷で行います(第82条)。
「対審」とは、法廷で当事者が主張をたたかわせる手続(審理)のこと。「判決」は、その結論です。
📌 対審は非公開にできる場合がある
対審は、裁判官が全員一致で「公の秩序・善良の風俗を害するおそれがある」と決めた場合、非公開にできます。ただし、政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法第3章で保障する国民の権利が問題になっている事件の対審は、常に公開しなければなりません。
📌 判決は必ず公開
一方、判決は、いかなる場合も常に公開しなければなりません。対審と違い、判決を非公開にすることはできません。「判決も非公開にできる」は誤りです。
対審=非公開にできる場合あり/判決=常に公開。「判決も非公開にできる」「政治犯罪に関する事件の対審は非公開にできる」は、いずれも誤りです(政治犯罪等の対審は常に公開)。
弾劾裁判所(第64条)
前回、裁判官の罷免事由の一つに「公の弾劾」がありました。その弾劾を行うのが弾劾裁判所です。
ここが最大のポイント。弾劾裁判所は、裁判所ではなく「国会」に置かれます(第64条)。罷免の訴追を受けた裁判官を裁くため、両議院の議員で組織されます。ふだんは人を裁く裁判官が、今度は国会議員に裁かれる、という関係です。「弾劾裁判所は最高裁判所に置かれる」は誤りです。
なお、前回出てきた「特別裁判所は設置できない」というルールがありましたが、この弾劾裁判所は、憲法自身が認めた“特別裁判所禁止の例外”です。
📌 弾劾裁判所の構成・特徴
・裁判員は、衆議院から7名、参議院から7名の計14名。
・弾劾裁判は一審制(上訴できない=一回で確定)。
弾劾裁判所は「国会」に置かれます(最高裁判所ではない)。裁判官を裁くのは裁判所ではなく国会の弾劾裁判所で、弾劾裁判は一審制(上訴できない)です。
最高裁は終審/付随的審査制(具体的事件が必要)。対象は法律・命令・規則・処分
政治犯罪・出版・第3章の権利の対審は常に公開
衆7+参7=14名/一審制/特別裁判所禁止の例外
📒 この記事のまとめ
今回で裁判所シリーズは最終回。違憲審査権・裁判の公開・弾劾裁判所を見てきました。
- 違憲審査は下級裁判所もでき、最高裁は終審(付随的審査制/対象は法律・命令・規則・処分)
- 対審は非公開にできる場合があるが、判決は常に公開
- 政治犯罪・出版・第3章の権利が問題の事件の対審は常に公開
- 弾劾裁判所は「国会」に置かれる(衆7+参7=14名・一審制・特別裁判所の例外)
これで、国会(立法)・内閣(行政)・裁判所(司法)の三権がそろいました。統治機構の骨組みは、これでひと通り押さえられます。
確認問題(全5問)
問 1
違憲審査権に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 最高裁判所は、一切の法律・命令・規則・処分が憲法に適合するかを決定する終審裁判所である
- 違憲審査の対象には、処分も含まれる
- 違憲審査権は最高裁判所のみが有し、下級裁判所は行使できない
- 最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれる
💡 ヒント
違憲審査ができるのは最高裁だけだったか、下級裁判所もできたかを思い出してください。
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正解:C
違憲審査権は下級裁判所も行使でき、最高裁判所はその終審裁判所にすぎません(第81条)。したがってCが誤りです。違憲審査の対象には処分も含まれ、最高裁は「憲法の番人」と呼ばれます。
問 2
日本の違憲審査制に関する記述として、正しいものはどれか。
- 裁判所は、具体的な事件がなくても、法律の合憲性を抽象的に審査できる
- 日本の違憲審査制は、具体的な事件の裁判に付随して行われる付随的違憲審査制である
- 国民は、違憲の疑いがある法律を直接裁判所に審査請求できる
- 違憲審査の対象に、処分は含まれない
💡 ヒント
審査には「具体的な事件」が必要だったかどうかを思い出してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
日本の違憲審査制は付随的違憲審査制で、具体的な事件の裁判に付随して行われます(警察予備隊違憲訴訟)。事件と関係なく抽象的に審査することはできず(A)、国民が直接審査請求することもできません(C)。処分も対象に含まれます(D)。
問 3
裁判の公開に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 裁判の対審および判決は、原則として公開法廷で行う
- 対審は、裁判官の全員一致で公の秩序を害するおそれがあると決した場合、非公開にできる
- 判決も、公の秩序を害するおそれがある場合は非公開にできる
- 「対審」とは、法廷で当事者が主張をたたかわせる手続をいう
💡 ヒント
非公開にできるのは「対審」だけでしたか、「判決」もでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
判決はいかなる場合も常に公開しなければなりません(第82条)。対審は一定の場合に非公開にできますが、判決は非公開にできないため、Cが誤りです。
問 4
裁判の公開の例外に関する記述として、正しいものはどれか。
- 政治犯罪に関する事件の対審は、非公開にできる
- 判決は、一定の場合に非公開にできる
- 対審は、いかなる場合も公開しなければならない
- 出版に関する犯罪の事件の対審は、常に公開しなければならない
💡 ヒント
政治犯罪・出版・国民の権利が問題の事件の対審は、公開・非公開どちらでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければなりません(第82条2項但書)。よってAは誤り、Dが正しい。判決は常に公開(B誤り)、対審は一定の場合に非公開にできます(C誤り)。
問 5
弾劾裁判所に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 弾劾裁判所は、最高裁判所に置かれる
- 弾劾裁判所は、両議院の議員で組織される
- 弾劾裁判所は、特別裁判所禁止の憲法上の例外である
- 公の弾劾は、裁判官の罷免事由の一つである
💡 ヒント
裁判官を裁く弾劾裁判所は、どこに置かれていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
弾劾裁判所は国会に置かれ、両議院の議員で組織されます(第64条)。最高裁判所に置かれるのではないため、Aが誤りです。弾劾裁判所は特別裁判所禁止の例外であり、公の弾劾は裁判官の罷免事由の一つです。


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