第9回 国会のしくみ① ― 地位・二院制・衆議院の優越

憲法
国会のしくみ① 地位・二院制・衆議院の優越

ここからは、国の仕組み(統治機構)に入ります。その中心になるのが国会です。

国会は論点が多く、試験でも繰り返し問われます。今回はそのうち、国会の地位・二院制・衆議院の優越の3つを整理します。

ポイントは、「最高機関」という言葉の正しい意味と、衆議院の優越がどこまで及ぶか。ここを押さえるのが近道です。

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国会の地位(第41条)

憲法第41条は、国会を「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と定めています。

ここで最大の注意点。「最高機関」は、他の機関に命令できるという意味ではありません。

これは、国会が直接国民に選ばれた代表で構成される、いちばん国民に近い機関だという意味の、いわば「政治的な美称(びしょう)」です。三権分立のもとでは、国会が裁判所や内閣に法的に優越するわけではありません。

国会の地位(第41条):国権の最高機関・唯一の立法機関。最高機関は政治的な美称で、司法・行政に命令できるわけではない
「最高機関」は政治的な美称(優越を意味しない)
⚠ ひっかけ注意

「国会は最高機関だから、司法・行政に優越する」「最高機関だから閣議決定も変更できる」という選択肢は誤りです。最高機関=優越、ではありません。

📌 立法は国会、公布は天皇

法律をつくる(制定する)のは国会ですが、できあがった法律を公布するのは天皇の国事行為です(内閣の助言と承認により行う/第7条1号)。「法律の公布は国会が行う」は誤りです。

なお、国会の主な権限には、予算の議決・条約の承認・内閣総理大臣の指名・憲法改正の発議・弾劾裁判所の設置などがあります。(「唯一の立法機関」といっても、内閣の政令などの例外はあります。)

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二院制(衆議院・参議院)

日本の国会は、衆議院参議院の2つからなる二院制です。

2つの議院がお互いをチェックし合うことで、慎重な審議社会のさまざまな層の意思の反映ができる、という長所があります。

一方で、両院の意思をそろえる必要があるため、立法の手続きが複雑になり、決定が滞りやすいという短所もあります。「二院制は一院制より行き詰まりが生じにくい」という選択肢は誤りです。

二院制:衆議院(任期4年・解散あり・被選挙権25歳以上・定数465人)と参議院(任期6年・3年ごとに半数改選・被選挙権30歳以上・定数248人・解散なし)の比較
衆議院と参議院の比較
項目衆議院参議院
任期4年(解散あり)6年(3年ごとに半数改選)
被選挙権満25歳以上満30歳以上
定数(現在)465人248人
選挙小選挙区・比例代表選挙区・比例代表
解散あるない
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衆議院の優越

両院の議決が食い違ったとき、一定の事項では衆議院の議決が優先されます。これを「衆議院の優越」といいます。

衆議院の優越が認められるのは、主に次の4つです。

  • 法律案の議決
  • 予算の議決
  • 条約の承認
  • 内閣総理大臣の指名
衆議院の優越:①法律案の議決②予算の議決③条約の承認④内閣総理大臣の指名。憲法改正の発議は両院対等(優越なし)
衆議院の優越が及ぶ4つ。憲法改正の発議は両院対等

📌 予算先議権と議決のルール

予算は、必ず先に衆議院に提出されます(予算先議権/第60条)。「予算は先に参議院に提出する」は誤りです。

予算・条約・首相の指名で両院の議決が異なり、両院協議会でも一致しないとき、または参議院が一定期間内に議決しないとき(予算・条約は30日、首相指名は10日)は、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。

法律案については、参議院が衆議院の可決後60日以内に議決しないときは否決とみなすことができ、衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立します(第59条)。

⚠ ひっかけ注意

憲法改正の発議には、衆議院の優越はありません。憲法改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要で、両院は対等です(第96条)。「憲法改正の発議にも衆議院の優越がある」は誤りです。

★ ここだけ覚えればOK ★ 国会①は3カードで!
①最高機関=政治的美称(優越しない)②衆議院の優越=法律・予算・条約・首相指名③憲法改正の発議は両院対等
「最高機関」=政治的美称

優越しない。立法は国会・公布は天皇

衆議院の優越=法律・予算・条約・首相指名

予算は衆議院に先議

憲法改正の発議は両院対等

優越なし(各議院総議員の3分の2以上)

📒 この記事のまとめ

今回は国会の入口として、地位・二院制・衆議院の優越を見てきました。

  • 「最高機関」は優越を意味しない政治的美称(立法は国会・公布は天皇)
  • 衆議院の優越=法律案・予算・条約の承認・内閣総理大臣の指名
  • 予算は衆議院に先議/憲法改正の発議だけは両院対等

次回は国会の続きとして、国政調査権・国会議員の特権・参議院の緊急集会を整理します。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

国会の地位に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である
  2. 「最高機関」とは、国会が直接国民を代表する機関であることを示す表現である
  3. 国会は最高機関であるため、司法および行政に法的に優越する
  4. 法律を制定するのは国会である
💡 ヒント

「最高機関」は優越を意味する言葉だったかどうかを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

「最高機関」は政治的な美称であり、国会が司法・行政に法的に優越することを意味しません(三権分立)。したがってCが誤りです。A・B・Dはいずれも正しい記述です。

問 2

法律の公布に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 成立した法律の公布は、国会が行う
  2. 成立した法律の公布は、天皇が内閣の助言と承認により行う
  3. 法律の公布は、内閣総理大臣が単独で行う
  4. 法律の公布は、最高裁判所が行う
💡 ヒント

法律を「つくる」のと「公布する」のは、別の機関でした。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

法律を制定するのは国会ですが、成立した法律の公布は天皇の国事行為であり、内閣の助言と承認により行われます(第7条1号)。公布を国会・内閣総理大臣・最高裁判所が行うわけではありません。

問 3

次のうち、衆議院の優越が認められていないものはどれか。

  1. 予算の議決
  2. 条約の承認
  3. 内閣総理大臣の指名
  4. 憲法改正の発議
💡 ヒント

「両院が対等」とされていた事項を思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

憲法改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要で、両院は対等です(第96条)。衆議院の優越は及びません。予算の議決・条約の承認・内閣総理大臣の指名には衆議院の優越が認められています。

問 4

二院制および予算に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 予算は、先に参議院に提出される
  2. 予算は、先に衆議院に提出される(予算先議権)
  3. 二院制は、一院制に比べて立法上の行き詰まりが生じにくい
  4. 参議院には、任期途中の解散がある
💡 ヒント

予算を「先に」審議するのはどちらの院だったかを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

予算は先に衆議院に提出されます(予算先議権・第60条)。二院制は両院の意思統一が必要で立法が滞りやすく(Cは誤り)、解散があるのは衆議院です(A・Dは誤り)。

問 5

衆議院と参議院に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 参議院議員には、任期途中の解散がある
  2. 衆議院議員の任期は4年で、解散がある
  3. 参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数を改選する
  4. 被選挙権は、衆議院が満25歳以上、参議院が満30歳以上である
💡 ヒント

「解散」があるのは、衆参どちらの院だったかを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

解散があるのは衆議院であり、参議院に解散はありません。したがってAが誤りです。B・C・Dはいずれも正しい記述です。

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