これまで学んだ「行政行為」は、役所が「許可します」「命令します」とハンコを押して決める働きでした。
でも役所の仕事はそれだけではありません。ルールを作る仕事(行政立法)と、「お願いします」と頼む仕事(行政指導)があります。今回はこの2つを扱います。
頻出ポイントは「法規命令と行政規則の違い」と「行政指導は国賠○・不服審査/取消訴訟×」です。
役所が作るルールには「外向き」と「内向き」がある
法律を作るのは国会です。でも法律には大きなことしか書けません。「細かいところは役所が決めてね」となっているので、役所もルールを作ります。これが行政立法です。
ここで大事なのは、役所が作るルールには2種類あるということ。学校にたとえてみましょう。
- 校則:生徒全員が守らなければいけないルール → これが法規命令のイメージ
- 職員室の内規(先生同士の取り決め):先生たちだけのルールで、生徒は縛られない → これが行政規則のイメージ
法規命令は、国民みんなを縛る「外向き」のルール。政令・省令などがこれです。法律を実施するための執行命令と、法律から「ここは任せた」と委任された委任命令があります。委任命令は任された範囲を超えてはいけません(何でも自由に決めていい「白紙委任」はNG)。
行政規則は、役所の中だけの「内向き」のルール。上司から部下への指示書のようなもので、通達が代表例です。国民は縛られませんし、裁判所も縛られません。
「通達は国民を直接拘束し、裁判所も拘束する」は誤り。通達は内向きの内部ルールで、対外的な拘束力はありません。
外向きルールは「発表」しないと効力なし
校則を作っても、生徒に知らせず職員室の引き出しにしまっていたら、誰も守れませんよね。
それと同じで、国民を縛る法規命令は、外に発表(=公布)して初めて効力が生じます。公布していない法規命令は効力を生じません。「公布の必要はない」という記述は誤りです。
ほかにも法規命令には、①正当な権限のある行政官庁が定めること、②上級の法令に反しないこと、③法の定める手続・形式をふむこと、という条件があります。これらと「④公布」がセットです。
逆に、内向きの行政規則(通達)は発表しなくてOK。役所の中の指示にすぎないからです。作るのに法律の根拠もいりません。
そしてもうひとつ大事なのがこれ。通達に違反した処分でも、それだけで直ちに違法にはなりません。通達はあくまで「内部の指示」であって法律ではないから、破っても「法律違反」に直結しないのです。
「法規命令は公布しなくても効力を生じる」→誤り。「通達に違反した行政行為は直ちに違法となる」→誤り。「行政規則の発令には法律の根拠が必要」→誤り。この3つが定番のひっかけです。
行政指導は「命令」ではなく「お願い」
行政指導とは、役所が「こうしてもらえませんか」とお願い・アドバイスをすることです。法律の言葉では、指導・勧告・助言と呼ばれます(行政手続法2条6号)。
行政行為(処分)との違いは、強制力がないこと。従うかどうかは相手の自由です。あくまで「お願いベース」。だから法律の世界では「処分ではない」と扱われます。
お願いにもいろいろあって、規制するようなものばかりではありません。もめごとの間を取り持つ調整的な指導や、応援・手助けする助成的な指導も多くあります。なお、役所がお願いの基準としてまとめた「指導要綱」は、法令ではなく行政指導の基準にすぎません。
そして、お願いベースだからこそ、役所側には守るべきマナーがあります。
- 従わなかった人に仕返し(不利益な取扱い)をしてはいけない
- 口でお願いした内容は、相手に求められたら原則紙に書いて渡す
- 行き過ぎたお願いは、相手が「やめてください」(中止等)を求めることができる
「行政指導の内容はほとんどが強制的」→誤り(調整的・助成的な指導も多い)。「指導要綱は法令の一種」→誤り(法令ではなく行政指導の基準)。「相手が書面を求めても交付する必要はない」→誤り(原則交付が必要)。
お願いのせいで損をしたら? ― 救済のルール
役所の間違ったお願い(違法な行政指導)のせいで損をしてしまったら、どうやって救済されるのでしょうか。国民の反撃方法は主に2つあります。
- 「その決定を取り消して!」と争う(不服審査・取消訴訟)→ 使えません✕。この手続きは「処分」を争うためのもの。行政指導はただのお願いで処分ではないので、土俵に乗らないのです
- 「損した分のお金を払って!」と請求する(国家賠償)→ 使えます○。国家賠償法の「公権力の行使」は役所の活動を広く含むと考えられているので、お願いも対象。違法なお願いで損をさせたら弁償の対象になります
つまり「取消し✕・お金○」。これがこの記事でいちばん問われるポイントです。
「行政指導は行政不服審査・取消訴訟の対象となる」→誤り。「行政指導は国家賠償の対象とならない」→誤り。○×を逆にして出すのが定番です。「国賠○・不服審査/取消訴訟×」をワンセットで即答できるようにしましょう。
法規命令=外向き・公布必須/行政規則(通達)=内向き・公示不要・法律の根拠不要
通達は法律ではなく内部の指示。破っても法律違反に直結しない
行政指導は処分ではない→不服審査・取消訴訟は✕、国家賠償は○
📒 この記事のまとめ
役所は「ハンコ」だけでなく、「ルール作り」と「お願い」でも動いています。
- ルールは2種類:外向き(法規命令)=公布が必要/内向き(通達)=公示不要
- 通達を破った処分も、直ちに違法にはならない
- 行政指導は「お願い」→ 取消しでは争えない✕、国家賠償はできる○
次回は第4章の後半、「行政裁量と行政計画・契約・調査」です。
確認問題(全5問)
問 1
法規命令に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 法規命令は、正当な権限を有する行政官庁が定立しなければならない。
- 法規命令は、上級の法令に抵触してはならない。
- 法規命令は、公布する必要はなく、定立と同時に効力を生じる。
- 法規命令は、法の定める手続・形式に適合しなければならない。
💡 ヒント
国民を縛る外向きのルールは、外に発表しなくても効力が生じるでしょうか。
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正解:C
法規命令は外部に公布(発表)して初めて効力を生じます。公布を欠く法規命令は効力を生じません。
問 2
行政規則である訓令・通達に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 訓令や通達は、形式上は法源ではなく行政の内部規律である。
- 訓令や通達の発令には、法律の根拠を要しない。
- 訓令や通達は、国民に対して法的効果を及ぼさない。
- 訓令や通達は、公示することが効力発生の要件である。
💡 ヒント
「発表が必要」なのは外向きのルールでした。通達は外向きだったでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
訓令・通達は内部行為的な性質をもつため、公示は効力発生の要件ではありません。A〜Cは正しい記述です。
問 3
行政手続法上の行政指導に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 行政指導とは、行政機関が所掌事務の範囲内で特定の者に作為・不作為を求める指導・勧告・助言その他の行為で、処分に該当しないものをいう。
- 行政指導に従わなかったことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない。
- 口頭でされた行政指導は、相手方が書面の交付を求めても、交付する必要はない。
- 一定の場合、相手方は行政指導の中止等を求めることができる。
💡 ヒント
お願いする側の3つのマナーを思い出してください。紙に書いて渡すルールはどうだったでしょうか。
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正解:C
口頭の行政指導は、相手方から書面の交付を求められたときは、行政上特別の支障がない限り書面を交付しなければなりません(行政手続法35条)。
問 4
行政指導に関する記述として、正しいものはどれか。
- 行政指導は、行政不服審査の対象となる。
- 違法な行政指導により損害を受けた者は、国家賠償を請求できる。
- 行政指導は、取消訴訟の対象となる。
- 指導要綱は、法令の一種である。
💡 ヒント
2つのドアのうち、開いていたのはどちらだったでしょうか。
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正解:B
行政指導は国家賠償法1条の「公権力の行使」に当たり、違法な指導による損害は賠償請求できます。処分ではないため不服審査・取消訴訟の対象にはならず(A・Cは誤り)、指導要綱は法令ではなく行政指導の基準です(Dは誤り)。
問 5
行政指導に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 行政指導の内容は、そのほとんどが強制的な内容を伴う。
- 行政指導には、調整的な指導や助成的な指導も多い。
- 指導要綱は、法令ではなく行政指導の基準にすぎない。
- 行政指導は、相手方の任意の協力によって成り立つ。
💡 ヒント
行政指導は「お願いベース」でした。強制ばかりだったでしょうか。
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正解:A
行政指導は法的強制力のない事実行為であり、強制的な内容ばかりではなく、調整的・助成的な指導も多くあります。B〜Dは正しい記述です。


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