前回までは「立法」を担う国会を見てきました。ここからは「行政」を担う内閣に入ります。
「行政」とは、ざっくりいうと国会が決めたルール(法律)に従って、実際に国を動かしていく仕事のこと。その中心が内閣です。
内閣でまず押さえたいのが議院内閣制という仕組み。内閣は、国会の信任があってはじめて成り立っている、という関係を理解するのが出発点です。今回は、内閣の構成・議院内閣制とは何か・議院内閣制の4つの特徴を整理します。
内閣とは(第65条・第66条)
まず、行政権は「内閣」に属します(第65条)。行政権とは、さきほどの「法律に従って国を動かす力」のことです。
その内閣は、内閣総理大臣(首長=トップ)と、その他の国務大臣(各分野の担当大臣)で組織される合議体(ごうぎたい)です(第66条1項)。
「合議体」とは、一人で決めるのではなく、みんなで話し合って決める集まりのこと。内閣の方針は、総理がひとりで決めるのではなく、大臣たちの会議(閣議)で決めていきます。
「行政権は内閣総理大臣に属する」は誤り。行政権が属するのは内閣です(第65条)。主役は「総理個人」ではなく「内閣という合議体(チーム)」だ、と覚えましょう。
議院内閣制とは(第66条3項)
日本は議院内閣制を採用しています。むずかしい言葉ですが、意味はシンプル。内閣が国会(とくに衆議院)の信任の上に成り立ち、国会に対して責任を負う仕組みのことです。
ここで「信任(しんにん)」とは、「この人たちに任せてよい」という国会のお墨付きのこと。内閣のトップ(内閣総理大臣)は国民が直接選ぶのではなく、国会が指名します。さらに、いったん成立した後も、衆議院に「信任できない」と突きつけられれば(不信任決議)、内閣は総辞職か解散を選ばなければなりません。
つまり内閣は、はじめも・その後も、国会の支持があるかどうかに運命をにぎられている。これが「国会の信任に基づいて成立する」という意味です。
そして憲法第66条3項は、こう定めています。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。(第66条3項)
これを分けて読むと——「内閣は」「行政の進め方について」「国会に対して」「連帯して(=チーム全員でまとまって)」「責任を負う」。
ポイントは「連帯して」です。これは、大臣ひとりひとりが個別に責任を負うのではなく、内閣というチーム全体でいっしょに責任を負うという意味。ある大臣の失敗でも「うちは関係ない」とは言えず、内閣全体の責任になります。だからこそ、不信任を受けたときは(特定の大臣だけでなく)全員まとめて総辞職することになります。
📌 議院内閣制の本質は2つ
① 国会の信任に基づいて成立すること(お墨付きで成り立つ)
② 国会に対して連帯して責任を負うこと(チームでまとまって責任を負う)
内閣の責任は「連帯して」負うもの。「各大臣が個別に国会へ責任を負う」は誤りです。「連帯=みんなで一緒に」と覚えましょう。
議院内閣制の4つの特徴
議院内閣制をめぐって、憲法が定める特徴は次の4つです。
- ① 内閣総理大臣は、国会が指名する(そのうえで天皇が任命)
- ② 内閣総理大臣+国務大臣の過半数は、国会議員
- ③ 内閣総理大臣およびその他の国務大臣は、文民でなければならない
- ④ 内閣は、国会に対して連帯責任を負う
📌 文民とは?
③の「文民(ぶんみん)」とは、ひとことで言うと「軍人ではない人」のこと(英語の civilian)。試験では現役の自衛官は文民にあたらないと押さえておきましょう。
なぜこんな規定があるかというと、戦前に軍部が政治を動かして暴走した反省から。軍事力を持つ組織を、軍人でない人(政治家)がコントロールする——これをシビリアン・コントロール(文民統制)といいます。
この4つのうち、③の文民規定は、議院内閣制そのものの「本質的要素」ではありません。文民規定はあくまでシビリアン・コントロールの規定です。「文民規定は議院内閣制を支える本質的要素である」という選択肢は誤り。議院内閣制の本質は「信任に基づく成立」+「連帯責任」の2つで、文民規定は“別の趣旨のおまけ”と整理しましょう。
📌 「過半数」がポイント
②について、過半数が国会議員であればよく、全員が国会議員である必要はありません(民間からの登用も可能)。この点は次回くわしく扱います。
総理個人ではなく、合議体としての内閣
国会の信任で成立し、連帯して責任を負う
シビリアン・コントロールの規定(ひっかけ頻出)
📒 この記事のまとめ
今回は内閣の入口として、行政権の所在・内閣の構成・議院内閣制を見てきました。
- 行政権は「内閣」(合議体)に属する(総理個人ではない)
- 議院内閣制の本質=国会の信任に基づく成立+連帯責任
- 「連帯して」=大臣個別ではなく内閣全体でまとまって責任を負う
- 文民規定は議院内閣制の本質ではない(シビリアン・コントロール)
次回は内閣の続きとして、内閣総理大臣の地位と権限(指名・任命、国務大臣の任免権など)と、内閣の職務・政令を整理します。
確認問題(全5問)
問 1
行政権の所在に関する記述として、正しいものはどれか。
- 行政権は内閣に属する
- 行政権は内閣総理大臣に属する
- 行政権は国会に属する
- 行政権は各国務大臣に個別に属する
💡 ヒント
主役は「総理個人」だったか、「内閣というチーム」だったかを思い出してください。
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正解:A
行政権は内閣に属します(第65条)。内閣総理大臣個人でも、国会でも、各国務大臣個別でもありません。主役は「内閣という合議体」です。
問 2
内閣の国会に対する責任に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う
- 内閣の責任は、各国務大臣がそれぞれ個別に国会に対して負う
- 内閣は、内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織される
- 内閣は、合議体である
💡 ヒント
「連帯して」は、個別の責任を意味する言葉でしたか。
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正解:B
内閣は「連帯して」責任を負います(第66条3項)。これはチーム全体でまとまって責任を負うという意味で、各大臣が個別に負うものではありません。したがってBが誤りです。
問 3
議院内閣制に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 議院内閣制の本質は、国会の信任に基づく成立と、国会に対する連帯責任である
- 内閣は、国会の信任に基づいて成立する
- 文民規定は、議院内閣制を支える本質的要素である
- 内閣は、国会に対して連帯して責任を負う
💡 ヒント
文民規定は何のための規定でしたか(シビリアン・コントロール)。
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正解:C
文民規定はシビリアン・コントロール(文民統制)の規定であり、議院内閣制そのものの本質的要素ではありません。したがってCが誤りです。議院内閣制の本質は「信任に基づく成立」と「連帯責任」の2つです。
問 4
内閣の構成に関する記述として、正しいものはどれか。
- 国務大臣は、全員が国会議員でなければならない
- 国務大臣の過半数は、国会議員でなければならない
- 内閣総理大臣は、国会議員でなくてもよい
- 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなくてもよい
💡 ヒント
国会議員でなければならないのは「全員」でしたか、「過半数」でしたか。
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正解:B
国務大臣の過半数が国会議員であればよく、全員である必要はありません(第68条1項)。よってAは誤り。内閣総理大臣は国会議員でなければならず(C誤り)、総理・国務大臣は文民でなければなりません(D誤り)。
問 5
議院内閣制を説明したものとして、最も適切なものはどれか。
- 内閣が、国会の信任に基づいて成立し、国会に対して連帯して責任を負う制度
- 国民が直接、内閣総理大臣を選挙で選ぶ制度
- 内閣が国会から完全に独立して活動する制度
- 裁判所が内閣を指揮監督する制度
💡 ヒント
「信任」と「連帯責任」という2つのキーワードを思い出してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
議院内閣制は、内閣が国会の信任に基づいて成立し、国会に対して連帯して責任を負う制度です。国民が直接首相を選ぶのは大統領制に近い仕組みで(B)、内閣は国会から独立しておらず(C)、裁判所が内閣を指揮監督する制度でもありません(D)。


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