国民主権と天皇― 国の主役は誰?
1からわかる消防昇任試験対策/日本国憲法の超基本
「主権」「国権」「統治権」… 似たような言葉が並んでいて、見ただけでちょっとイヤになりませんか。
でも、ここを押さえないと先へ進めません。日本国憲法のいちばん大事な背骨は、この「主権が誰にあるか」という話だからです。
安心してください。整理してしまえば、難しい話ではありません。1つずつ、ゆっくりほどいていきましょう。
「主権」って何?
結論から言うと、「主権」とは “国のあり方を最後に決める力” のことです。
たとえばクラスでルールを決めるとき、「最終的に誰の意見で決まるか」がありますよね。それと同じで、国にも「最後に決める人」が必要です。それを「主権」といいます。
日本国憲法では、この主権は「国民」にあるとハッキリ書かれています。昔の大日本帝国憲法では「天皇」にありましたが、戦後にガラッと変わりました。
用語メモ:混同しやすい3つ
| 用語 | 意味 | 持っているのは |
|---|---|---|
| 主権 | 国の大事なことを最終的に決める権利 | 国民 |
| 国権 | 国家が持っている権力そのもの | 国家 |
| 統治権 | 国を治める権限。日本国憲法では使われていない | (旧憲法用語) |
「日本国憲法における統治権は…」のように、わざと出てくることがあります。統治権という言葉は、日本国憲法には1度も出てきません。これだけ覚えておくと、選択肢の段階で1つ消せます。
主権は「国民」にある
ここが日本国憲法のいちばん大事な背骨です。戦前と戦後で、「国の主役」がガラッと入れ替わりました。
戦前と戦後の比較
大日本帝国憲法(戦前)
主権は天皇に
(天皇主権)
日本国憲法(今)
主権は国民に
(国民主権)
「国民が決める」って、どうやって?
「全員集まって話し合うわけにもいかないし、本当に国民が決めてるの?」と思うかもしれません。そこで用意されているのが、選挙と国民投票です。
- 選挙:国民の代わりに話し合ってくれる人(国会議員)を選ぶ
- 国民投票:憲法を変えるかどうかなど、特に大事なことを国民が直接判断する
「国は国民のもの」
これが日本国憲法の出発点です。
天皇は「日本の象徴」
では、天皇はどういう立場になったのか。ここで登場するのが第1条です。
天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴である。
「象徴」とは、ザックリ言えば「日本という国を思い浮かべるとき、自然と頭に浮かぶ存在」。「ハト=平和の象徴」と同じイメージです。
大事なのは、天皇は政治の実権を持たないということ。法律・予算・外交方針など「国を動かす仕事」は内閣や国会が行います。
ザックリ覚え方:役割分担
国を動かすのは
国民・国会・内閣
国を象徴するのは
天皇
天皇の「国事行為」
実権はないと言いましたが、天皇にも形式的なお仕事があります。これを国事行為(こくじこうい)といいます。
ここは消防昇任試験で最頻出のひっかけポイントです。1問は出ると思って丁寧に押さえましょう。
大原則
すべての国事行為は、内閣の助言と承認に基づいて行われます。天皇が自分の判断で行うわけではありません。
主な国事行為(第6条・第7条)
| 国事行為 | 誰が決めて、天皇が何をするか |
|---|---|
| 内閣総理大臣の任命 | 国会が指名 → 天皇が任命 |
| 最高裁判所長官の任命 | 内閣が指名 → 天皇が任命 |
| 憲法改正・法律・政令・条約の公布 | 内閣の助言と承認による |
| 国会の召集/衆議院の解散 | 内閣の助言と承認による |
| 総選挙の施行を公示 | 内閣の助言と承認による |
| 栄典の授与/外国大使の接受 など | 内閣の助言と承認による |
★超頻出ひっかけ★ 3点
内閣総理大臣の任命
国会が指名 → 天皇が任命
最高裁長官の任命
内閣が指名 → 天皇が任命
法律・条約の公布
「国会の承認」ではなく
内閣の助言と承認
要するに 「指名するのは誰か」(長官=内閣/総理=国会)と、「公布は内閣がOKを出す(国会ではない)」の2軸でひっかけが作られます。
「国は国民のもの」が出発点
政治の実権は持たない(第1条)
すべて内閣の助言と承認が必要
総理任命=国会/長官任命=内閣
この記事のまとめ
戦前は天皇が「国の主役」でしたが、日本国憲法では国民が主役に変わりました。天皇は政治の実権を持たない「日本の象徴」という位置づけになり、行うのは形式的な国事行為だけ。そしてその国事行為はすべて内閣の助言と承認で動きます。
- 主権は国民にある
- 天皇は日本の象徴
- 国事行為は内閣の助言と承認で行う
ひっかけは「指名するのは誰か」と「公布は内閣の承認」を中心に出ます。問題文を読んだら、まずこの2点を確認しましょう。
確認問題(全5問)
問 1
日本国憲法における「主権」の定義として最も適切なものはどれか。
- 国家が他国に対して持つ独立した地位
- 国を治めるために天皇が有する伝統的権能
- 国のあり方を最終的に決定する力
- 国家がその領域に対して有する支配権
💡 ヒント
本文冒頭の「主権とは何か」を思い出してください。”最後に決める” という観点が鍵です。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
本記事では「主権」を「国のあり方を最後に決める力」と定義しています。Aは国家主権、Bは大日本帝国憲法下の天皇大権、Dは統治権の説明に近く、いずれも不適切です。
問 2
「主権」「国権」「統治権」の3つの用語に関する記述として、正しいものはどれか。
- 「統治権」は日本国憲法に明記された主要な概念である
- 「国権」は国家が有する権力であり、国家に属するとされる
- 「主権」は日本国憲法上、内閣に属するものとされている
- 「主権」と「統治権」は日本国憲法上、同義として扱われる
💡 ヒント
用語メモの表を思い出してください。3つの言葉の “持ち主” がそれぞれ違います。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
国権は国家に属する権力です。Aは誤りで、「統治権」という語は日本国憲法では用いられていません(典型的なひっかけ)。Cは誤りで主権は国民に属し、Dも別概念です。
問 3
日本国憲法第1条が天皇について規定する内容として、最も適切なものはどれか。
- 天皇は国家の元首として行政権の長を兼ねる
- 天皇は内閣の構成員として国政に参与する
- 天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である
- 天皇は国民の選挙によりその地位を有する
💡 ヒント
「象徴」という言葉が出てくる条文がどれだったかを確認してください。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
第1条は天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と位置づけ、政治の実権を持たないことを明確にしています。
問 4
天皇の国事行為に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 内閣総理大臣の任命は、国会の指名に基づいて天皇が行う
- 最高裁判所長官の任命は、内閣の指名に基づいて天皇が行う
- 法律や条約の公布は、国会の承認に基づいて天皇が行う
- 国事行為には、内閣の助言と承認が必要とされる
💡 ヒント
「公布は誰のOKで行うか」を思い出してください。超頻出ひっかけの代表例です。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
法律・条約の公布は「国会の承認」ではなく「内閣の助言と承認」に基づいて行われます。A・B・Dはいずれも正しい記述です。
問 5
天皇の国事行為に該当しないものはどれか。
- 国会の召集
- 衆議院の解散
- 外国大使の接受
- 条約の締結
💡 ヒント
「条約」については、天皇は何をする役割でしたか?「結ぶ」のと「世に知らせる」のとでは別の話です。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
条約の締結は内閣の事務であり、天皇の国事行為ではありません。天皇が行うのは条約の「公布」です。A・B・Cはいずれも国事行為に該当します。

コメント