第4回:政治活動や副業はどこまでOK?平等取扱いと営利企業への従事制限をやさしく解説

地方自治法
地方公務員の勤務時間の外のルール 政治活動と副業 消防昇任試験対策

前回は、勤務時間の中のルール(職務専念義務と秘密を守る義務)を見ました。

今回は、勤務時間の外にも関わってくるルールです。休みの日に政治活動をしてもいいのか、副業やアルバイトはどこまで許されるのか。イメージだけで判断するとまちがえやすいところです。

今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。

0

平等取扱いの原則と、国籍のあつかい(第13条)

📜 地方公務員法第13条(平等取扱いの原則)

「全て国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならず、人種、信条、性別、社会的身分若しくは門地によつて、又は第十六条第四号に該当する場合を除くほか、政治的意見若しくは政治的所属関係によつて、差別されてはならない。」

つまり、人種・信条(考え方や信仰)・性別・社会的身分・門地(家がら)・政治的意見などを理由に、扱いを変えてはいけない、ということです。

ところが、ここに1つだけ例外があります。国籍による区別です。公権力の行使(住民に対して権力をふるう仕事)や、公の意思形成(自治体の方針を決めること)に携わる職には日本国籍が必要、という考え方があり(いわゆる「当然の法理」)、最高裁も、国籍を理由に管理職の選考試験を受けさせなかった扱いを合憲としています。

天秤の左の皿には人種・信条・性別・社会的身分・政治的意見のアイコンに赤いバツ印、右の皿にはパスポートと国籍の札に緑のマル印。下に公権力の行使に関わる職の庁舎
合理的とされる区別は「国籍」
ここ注意

「合理的な区別はどれか」と問われたら、答えは国籍による区別です。人種・信条・性別などによる区別は認められません。

1

政治的行為の制限① 全国どこでもダメなもの(第36条第1項)

📜 地方公務員法第36条第1項(政治的行為の制限)

「職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。」

つまり、政党などをつくることに関わる、その役員になる、「入ってください」「やめてください」と勧誘して回る。この3つは、場所を問わずダメです。自分の市の外でやってもダメ、という意味です。

これは、職員が政治的に中立であることで、行政が公正に運営されるようにするためのルールです。

日本地図全体に赤い斜線。政党の看板を立ち上げる場面と入党を勧誘する場面にそれぞれ大きなバツ印。区域の外でもダメの札
結成への関与・役員就任・勧誘運動は、区域の外でもダメ
2

政治的行為の制限② 区域の外なら許されるもの(第36条第2項)

📜 地方公務員法第36条第2項(抜粋)

「職員は、特定の政党…を支持し、又はこれに反対する目的をもつて…次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域…外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。
一 公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二 署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三 寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四 文書又は図画を…庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五 前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為」

つまり、投票の勧誘運動(第1号)、署名運動への積極的な関与(第2号)、寄付金など金品の募集への関与(第3号)、条例で定める政治的行為(第5号)は、自分の勤め先の自治体の区域の外でなら、することができます

同じ行為でも、市の境界線の内側か外側かで扱いが変わる、というイメージです。

市の境界線をはさんで、区域の中では署名集めと募金の呼びかけにバツ印、区域の外では同じ行為にマル印
同じ行為でも、境界線の内と外で扱いが変わる

ただし、第4号(庁舎・施設・資材・資金の利用)はただし書に入っていません。役所の建物や備品、お金を政治活動に使うことは、区域の外であっても許されません。

ここ注意

「政治的行為の制限はすべて全国一律で、区域の外でも一切許されない」はまちがい区域の外なら許される行為があります(署名運動への積極的関与、寄付金募集への関与など)。

3

営利企業への従事等の制限(第38条)

📜 地方公務員法第38条第1項(抜粋)

「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業…を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則…で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。」

つまり、任命権者のハンコ(許可)が必要なのは、次の3つのパターンです。

  • ① 営利企業の役員などを兼ねる
  • 自分で営利企業を営む(お店を開くなど)
  • 報酬を得て事業や事務に従事する

大事なのは、「絶対にできない」のではなく「許可を受ければできる」という点です。「例外なく禁止されている」という説明はまちがいです。また条文のただし書のとおり、非常勤職員(一部を除く)はこの制限の対象外です。

許可のハンコから3本の線がのび、役員席に座る人・自分の店の看板を掲げる人・報酬の封筒を受け取る人の3場面につながる
許可がいるのは「役員」「自営」「報酬」の3つ

では、許可がいらないのはどんな場合でしょうか。代表例が、自分の家で食べる分の米や野菜を作ることです。売って利益を出すわけでも、報酬をもらって働くわけでもないので、この3つのどれにも当てはまりません。

境目は「食べる分か、売って収入にするか」です。同じ野菜づくりでも、店先に並べて売れば話は変わってきます。

左は自家消費のために野菜と米を収穫して自宅へ運ぶ場面にマル印、右は同じ野菜を店先で売ってお金を受け取る場面にバツ印
食べる分なら許可不要。売って収入にすると話は別
ここ注意

「営利企業の役員を兼ねることは例外なく禁止」「自家消費程度の野菜づくりにも許可が必要」「非常勤職員も一律に対象」は、いずれもまちがいです。

★ ここだけ覚えればOK ★ 勤務時間の外のルールは3カードで!
合理的な区別=国籍

人種・信条・性別などによる差別は不可

区域の外なら許される行為がある

署名運動への積極的関与・寄付金募集への関与など

許可がいるのは3つ

役員兼任・自営・報酬を得る従事。自家消費の米野菜は許可不要

📒 この記事のまとめ

勤務時間の外にも、平等取扱い・政治的中立・副業のルールが関わってきます。

  • 人種・信条・性別・社会的身分・門地・政治的意見による差別は禁止(第13条)
  • 国籍による区別は合理的とされる。公権力の行使等に携わる職は日本国籍が必要
  • 政党の結成への関与・役員就任・入党等の勧誘運動は、区域を問わず禁止
  • 投票の勧誘運動、署名運動への積極的関与、寄付金募集への関与などは、区域の外なら許される
  • 庁舎・施設・資材・資金の利用は、区域の外でも許されない
  • 許可が必要なのは役員兼任・自営・報酬を得る従事の3つ。自家消費程度の米・野菜づくりは許可不要
  • 非常勤職員(一部を除く)は、営利企業への従事等の制限の対象外

「場所で変わるのか」「許可で変わるのか」を意識すると、この範囲は整理しやすくなります。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

すべて国民は地方公務員法の適用について平等に取り扱われるが、次のうち合理的な区別とみられるものはどれか。

  1. 政治的意見による区別
  2. 信教による区別
  3. 人種による区別
  4. 国籍による区別
💡 ヒント

公権力の行使や公の意思形成に携わる職には、何が求められていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

公権力の行使又は公の意思形成に携わる職には日本国籍を要するとされ、国籍による区別は合理的とされています(いわゆる当然の法理)。最高裁も国籍条項を合憲としています。

問 2

政治的行為の制限のうち、その職員の属する地方公共団体の区域外であれば許されるものはどれか。

  1. 寄附金その他の金品の募集に関与すること
  2. 特定の政党を支持する目的で職務上の地位を利用すること
  3. 地方公共団体の庁舎や資金を政治的目的で利用すること
  4. 部下に特定政党への加入を強制すること
💡 ヒント

条文のただし書に挙げられていた号を思い出してみましょう。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

寄附金その他の金品の募集への関与(第36条第2項第3号)は、区域外であれば許されます。庁舎・資金の利用(第4号)はただし書に含まれず、区域外でも許されません。地位利用や強制も、区域を問わず制限されます。

問 3

次のうち、地方公務員法に違反しないと考えられるものはどれか。

  1. 許可を受けずに、有給で農業協同組合の役員となった
  2. 内職として、自ら雑貨店を始めた
  3. 勤務時間外に、自家用の飯米や野菜の生産を行っている
  4. 上司の許可を受けずに友人の会社の事務を手伝い、報酬を得た
💡 ヒント

「食べる分か、売って収入にするか」で分かれる、というイラストを思い出してください。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

自家消費程度の米・野菜の生産は、営利企業を営むことにも、報酬を得る従事にも当たらないため、任命権者の許可は不要です。ほかの3つは、許可のない役員兼任・自営・報酬を得る従事にあたります。

問 4

営利企業への従事等の制限に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 職員が営利企業の役員等を兼ねることは、例外なく禁止されている
  2. 職員は、任命権者の許可を受けなければ、自ら営利企業を営んではならない
  3. 職員は、任命権者の許可を受けなければ、報酬を得て事業・事務に従事してはならない
  4. 非常勤職員(一部を除く)は、この従事制限の対象外である
💡 ヒント

条文の書き出しは「任命権者の許可を受けなければ」でした。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

従事制限は任命権者の許可によって解除され得るもので、「例外なく禁止」ではありません(第38条)。

問 5

政治的行為の制限に関する記述として、妥当なものはどれか。

  1. 政党その他の政治的団体の役員となることは、区域の外であれば許される
  2. 政治的団体への加入を勧誘する運動は、区域の外であれば許される
  3. 政党その他の政治的団体の結成に関与することは、区域を問わず禁止される
  4. 庁舎や資金を政治的目的で利用することは、区域の外であれば許される
💡 ヒント

第1項に書かれた行為に、区域による例外はあったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

政治的団体の結成への関与・役員就任・勧誘運動は第36条第1項の禁止であり、区域による例外はありません(A・Bは誤り)。庁舎・資金の利用は第2項第4号で、ただし書の対象外です(Dは誤り)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました