「勉強しているのに、覚えられない」。そう感じたことのある方は、少なくないと思います。
勉強のやり方は、心理学の分野で何十年も研究が積み重ねられていて、効果が高い方法と効果が薄い方法が、かなりはっきり分かれています。
しかも困ったことに、多くの人がふだんやっている勉強法ほど、効果が薄いという結果が出ています。
今回は、研究で効果が確かめられている勉強法を4つだけにしぼって紹介します。どれも今日から変えられるものばかりです。
そもそも、勉強法は「比べられている」
10種類の勉強法に、成績表がついている
勉強法というと、人それぞれの好みの問題だと思われがちです。
ですが実際には、2013年にアメリカの心理学者ダンロスキーらのチームが、よく使われる勉強法10種類について、それまでの研究をすべて集めて比較しています。
そして、それぞれの勉強法に「使える度」という評価を、高・中・低の3段階でつけました。
高・中・低に分かれた10種類
結果を並べると、次のようになります。
- 練習テスト(自分で自分にテストする)
- 分散学習(間隔をあけて復習する)
- インターリービング(種類を混ぜて解く)
- 「なぜそうなるのか」を自分に問いかける
- 自分の言葉で説明し直す
- 再読(もう一度読み返す)
- マーカー・下線を引く
- 要約ノートを作る
- 語呂合わせ/イメージ化
よく知られた方法ほど「低」に並んでいる
注目していただきたいのは「低」のグループです。
読み返す・線を引く・ノートにまとめる。多くの人が「勉強」と聞いてまず思い浮かべる方法が、そろって低い評価になっています。
ここから先は、「高」と「中」に入った方法を、ひとつずつ見ていきます。
「効果が低い」は「意味がない」ではありません。線を引くこと自体は下ごしらえとして役に立ちます。問題は、そこで終わってしまうことです。
読み返すな、思い出せ
いちばん効果が高いのは「思い出す練習」
いちばん効果が高いと評価されたのが、思い出す練習です。専門用語では「想起練習(そうきれんしゅう)」といいます。
やることは単純で、テキストを閉じて、「さっき何が書いてあったか」を自分の頭から引っぱり出す、それだけです。
読み返しているときは、文字を目で追いながら確認しているだけです。思い出すときだけ、何もない状態から取り出すという作業が起きます。
この「引っぱり出す」作業が入るかどうかが、あとになって効いてきます。
その差をはっきり示したのが、次の実験です。
1週間後に順位がひっくり返った実験
2006年に行われた実験を紹介します。大学生に文章を読ませたあと、3つのグループに分けました。
- A:読み返すだけのグループ(4回とも読み返す)
- B:読み返し3回+テスト1回のグループ
- C:1回読んで、あとはテスト3回のグループ
5分後にテストをすると、正答率はA=83%、B=78%、C=71%。読み返し組の勝ちでした。
ところが、1週間後にもう一度テストすると、順位がひっくり返ります。
| グループ | 5分後 | 1週間後 |
|---|---|---|
| A:読み返すだけ | 83% | 40% |
| B:読み返し3回+テスト1回 | 78% | 56% |
| C:1回読んでテスト3回 | 71% | 61% |
5分後にいちばん強かったAが、1週間後にはいちばん下になっています。
直後の手応えと、あとに残る量は別だということです。
読んだ回数は4分の1以下だった
さらに驚くのは、文章を読んだ回数です。
A組は平均14.2回読んでいたのに対し、C組が読んだのは3.4回だけでした。
読んだ回数は4分の1以下。それでも1週間後の成績は上だった、ということになります。時間をかけたほうが負けた、という結果です。
覚えたい内容は、ページを閉じてから口に出すか、白紙に書き出す。思い出せなかったところだけ開いて確認する。この順番を守るだけで、残り方が変わります。
一気にやらず、間をあける
同じ時間なら、分けたほうが残る
2つ目は分散学習(ぶんさんがくしゅう)です。
同じ合計時間を使うなら、まとめて1回でやるより、間をあけて何回かに分けたほうが記憶に残る、という考え方です。
2006年に発表された大規模な分析では、317の実験・839件の結果が集められ、間隔をあけたほうが成績が良いことが確認されています。
一度にたくさん流し込んでも、受け取れる量には限りがあります。
時間をあけると、そのあいだに受け取る準備ができる、というイメージです。
どのくらい間をあければいいのか
気になるのは「どのくらいあけるか」です。
1,354人を対象にした2008年の研究によると、目安は「試験までの期間の10〜20%程度」でした。
表にすると、次のようになります。
| 試験までの期間 | 復習をはさむ間隔の目安 |
|---|---|
| 1週間後に試験 | 1日あけて復習 |
| 1か月後に試験 | 1週間あけて復習 |
| 1年後に試験 | 3週間あけて復習 |
「1週間後の試験なら、前日にもう一度」くらいの感覚で十分です。
何週間もあける必要はありません。試験が先であるほど、間隔も長めにとる、と覚えておけば足ります。
直前の詰め込みが本番までもたない理由
同じ3時間なら、1日でまとめて3時間やるより、3日に分けて1時間ずつ。
まとめてやると、その日は「覚えた」という手応えがあります。ですが、間をあけていないぶん、忘れかけたところを思い出す機会がないまま終わってしまいます。
試験直前の詰め込みが本番までもたないのは、この思い出す機会が足りていないからです。
1回あたりの時間を短くしてかまいません。大切なのは長さではなく、いったん忘れかけてから、もう一度思い出す回数のほうです。
そろえずに、混ぜて解く
同じ種類を続けて解かない
3つ目はインターリービングです。日本語にすると「交互配置」ですが、意味はかんたんで、問題の種類を混ぜて解くということです。
ふつう問題集は、第1章の問題がまとまって並び、次に第2章の問題が並んでいます。これを章の順にそのまま解くのが「そろえて解く」やり方です。
これに対して、章をまたいでバラバラの順に解くのが「混ぜて解く」やり方になります。
見分ける手間がかかるぶん、混ぜたほうが時間はかかります。
それでも成績が上だったことを示したのが、次の実験です。
787人を4か月追いかけた実験
2020年に発表された研究では、中学1年生787人を4か月間追いかけました。
片方のクラスは「同じ単元をまとめて」宿題を解き、もう片方のクラスは「単元を混ぜて」宿題を解きます。宿題の量も内容も同じで、並べる順番だけを変えました。
そのうえで、1か月後に抜き打ちテストを実施した結果が、こちらです。
どちらのクラスも、解いた問題の数も内容も同じです。
違いは並び順だけで、20点以上の差がつきました。
本番で必要なのは「見分ける力」
なぜここまで差がつくのか。理由はシンプルです。
同じ単元をまとめて解くと、問題文をきちんと読まなくても「今はこの解き方だ」と分かってしまいます。解き方を選ぶ場面がないまま、作業として終わってしまうのです。
混ぜて解くと、まず「これは何を聞かれている問題か」を自分で見分けるところから始まります。本番の試験問題は、当然ながら章の順には並んでいません。必要になるのは、この見分ける力のほうです。
混ぜて解くと、正答率はいったん下がり、やりにくく感じます。その手応えの悪さは失敗のサインではなく、見分ける練習ができている合図です。
寝る時間は削らない
記憶は寝ている間に固定される
最後は睡眠です。勉強法の話なのに睡眠、と思われるかもしれませんが、ここは削ってはいけない部分です。
覚えた内容は、覚えた瞬間に固まるわけではありません。寝ている間に脳の中で整理され、長期の記憶として固定されます。
多数の実験データをまとめた分析でも、学習後に睡眠をとったほうが記憶が良くなることが、はっきりと確認されています。
つまり、机に向かっている時間だけが勉強ではない、ということになります。
寝るまでが勉強、と考えたほうが実態に近いのです。
同じ2時間でも、分け方で残り方が変わる
睡眠を削って勉強するのは、覚えたそばから捨てながら覚えているようなものです。
夜中まで粘るより、早めに切り上げて寝る。同じ2時間なら、寝る前の30分と、翌朝の90分に分けたほうが、②の分散学習にもなって一石二鳥になります。
寝る前に「今日やったことを思い出す」時間を5分だけ取ると、①の想起練習と④の睡眠が同時に効きます。ここがいちばん手軽な組み合わせです。
なぜ「効果の薄い勉強法」ばかりやってしまうのか
読み返す人が83.6%、自分でテストする人が10.7%
ここが、いちばんの落とし穴です。
2009年の調査では、学生の83.6%が「読み返す」を自分の勉強法として挙げ、そのうち54.8%が「いちばんよく使う方法」だと答えました。
いっぽう、「自分でテストする」を挙げた人は10.7%。いちばんの方法だと答えた人は、わずか1.1%でした。
効果が高いと分かっている方法に、ほとんど人が集まっていないことになります。
「分かった気」になれるかどうかの差
理由は、読み返すと「分かった気」になれるからです。
すらすら読めると、頭に入っている感じがします。ですがそれは、文字を目で追いながら思い出しているだけで、何もない状態から引っぱり出す力は鍛えられていません。
反対に、思い出す練習はつらいものです。出てこない、思い出せない、という手応えの悪さがあります。
しかし、その「うまくいっていない感じ」こそが、記憶が定着しているサインです。
ラクなほうの道は、歩いているあいだの気分は良いのですが、行き着く先が違います。
そして厄介なことに、歩いている本人には、その違いが見えません。
迷ったら「しんどいほう」を選ぶ
勉強法に迷ったときは、「ラクで進んでいる感じがするほう」ではなく「しんどいほう」を選ぶ。
これが、いちばんかんたんな見分け方になります。
やりやすさと、身についているかどうかは別物です。手応えの良さを基準に勉強法を選ぶと、効果の薄いほうへ寄っていきます。
効果が確かめられている3つのやり方
→ 読み返さない。閉じてから口や紙に出す
→ まとめてやらない。試験までの10〜20%が目安
→ 章の順にそろえない。またいでバラバラに解く
まとめ
効率のいい勉強法は、才能でも根性でもなく、やり方の問題です。そして、そのやり方はすでに研究で比べられています。
明日から変えられることは、次の4つです。
- テキストを閉じて、思い出してから開く
- 同じ時間を、日をまたいで分ける
- 問題集は、章をまたいで混ぜて解く
- 寝る時間は削らない
読んで安心する勉強から、思い出してしんどい勉強へ。切り替えたところから、結果は動き始めます。
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
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- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed Practice in Verbal Recall Tasks: A Review and Quantitative Synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.
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- Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112(1), 40–52.
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