第3回:やる気に頼らない「続ける仕組み」の作り方

勉強法
やる気に頼らない続け方 消防昇任試験対策

最初の1週間は続いた。2週間目から怪しくなって、3週間目には教材を開かなくなっていた。

こうなったとき、多くの方が「自分はやる気が続かない人間だ」と考えます。ですが、続けることの研究を見ていくと、原因はやる気そのものではありませんでした。

続いた人と続かなかった人を分けていたのは、始める前に何を決めてあったかです。

第1回は「どう覚えるか」、第2回は「どう机に向かうか」でした。今回は「どう続けるか」の話です。

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そもそも、やる気は当てにならない

「やる気が出たらやる」は順番が逆

やる気は、天気に近いものです。上がる日もあれば、まったく出ない日もあります。自分では選べません。

それなのに「やる気が出たらやる」という決め方をすると、勉強するかどうかを選べないものに預けていることになります。

続かないのは当たり前で、やる気が出ない日は、そのまま何もしない日になるからです。

やる気の波にゆられるボートと、波の上にまっすぐ架かった橋の対比
波に乗るのではなく、波の上に橋を架けておく

ですから、目指すのは「やる気を高めること」ではありません。

やる気が低い日でも動ける形を、先に用意しておくことです。

気持ちを高めるだけでは、行動は変わらなかった

これは精神論ではなく、実験で確かめられています。

くわしくはセクション1で紹介しますが、「なぜやったほうがいいのか」を丁寧に説明してやる気を高めたグループは、何もしなかったグループとほとんど変わりませんでした

気持ちが動いても、行動は動かなかったということです。

この記事の前提

ここから紹介するのは、気合いの入れ方ではなく、決め方と段取りの話です。どれも紙とペンがあれば今日できます。

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「いつ・どこで・何を」を先に決める

1行書くだけの方法

いちばん効果がはっきりしているのが、実行意図(じっこういと)と呼ばれる方法です。

やることは簡単で、次の形の文を1行つくるだけです。

「◯曜日の◯時に、◯◯で、◯◯をする」

「毎日がんばる」ではなく「木曜の21時に、自分の机で、第1章を1節ぶん解く」。ここまで細かく決めます。

つかめない雲のような「やる気が出たら」と、はっきり書かれた「木曜21時 机で 第1章」の対比
つかめる形にしておくと、迷わずに手が動く

38%・35%・91%

2002年に行われた、248人を対象にした実験があります。

参加者を3つのグループに分け、2週間のあいだに運動をするかどうかを調べました。

  • 何もしないグループ
  • やる気を高めるグループ(運動の大切さを丁寧に説明された)
  • やる気を高めたうえで、1行決めたグループ(いつ・どこで運動するかを自分で書いた)

結果が、こちらです。

グループ実際に運動した人の割合
何もしない38%
やる気を高めただけ35%
やる気+「いつ・どこで」を1行決めた91%
やる気を高めただけの群は、何もしない群を下回った

やる気を高めただけのグループは、何もしなかったグループとほぼ同じでした。

そこに1行を足しただけで、91%まで跳ね上がっています。決めた内容は「いつ・どこで」だけです。

94件の研究をまとめても、同じ結論だった

この方法は、その後もくり返し検証されています。

94件の研究をまとめた2006年の分析では、「いつ・どこで・どうやるか」を決めておくと、目標を達成できる割合がはっきり上がることが確認されました(効果量 d=0.65、中〜大の効果)。

効果は2種類に分かれていて、始められないときにも、途中で脱線しそうなときにも効いていました。

やり方

「時間がある日にやる」ではなく、曜日・時刻・場所まで書いてください。カレンダーやスマホの予定に、人との約束と同じ形で入れてしまうのがいちばん確実です。

2

締切は、最後にまとめず小刻みに置く

試験日だけが締切だと、後ろに寄る

試験勉強で締切といえば、ふつうは試験日ひとつです。

ところが締切が遠くに1つだけあると、人は必ず後ろに寄せます。まだ先だから今日でなくてもいい、という判断が毎日できてしまうからです。

最後に荷物をまとめて運ぼうとしてつぶれる場面と、3つに分けて運ぶ場面の対比
同じ量でも、区切りの数で運びやすさが変わる

3つの締切の置き方を比べた実験

2002年に行われた実験では、参加者に3週間で3つの文章を校正してもらいました。締切の置き方だけを、3種類に分けています。

  • 均等に区切る(7日ごとに1つずつ提出)
  • 自分で決める(3週間のなかで自由に締切を設定)
  • 最後にまとめて(3週間後に3つとも提出)

作業量はどれも同じです。変えたのは締切の置き方だけでした。

締切の置き方見つけた誤りの数かけた時間
均等に区切るいちばん多い約84分
自分で決めるその中間約70分
最後にまとめていちばん少ない約51分
均等に区切った条件が、成績も提出の早さもいちばん良かった

締切を均等に区切ったグループがいちばん成績が良く、提出の遅れもいちばん少なくなりました。

興味深いのは、自分で締切を決めたグループが真ん中だったことです。自分で締切を置くのは何もしないよりずっと良いのですが、それでも人任せに区切ってもらったほうが上でした。

試験日から逆算して、途中に旗を立てる

やることは単純です。試験日までのあいだに、自分で締切を何本か立てる

「9月末までに第3章まで」「10月中旬までに過去問1周」のように、区切りを先に置いてしまいます。

置いた締切は、できれば人に言っておくか、目に見えるところに貼っておいてください。自分の中だけに置いた締切は、静かに動いていきます。

ここが大事

区切りは細かすぎなくて構いません。大事なのは、締切が「今週の話」になっていることです。遠い1本より、近い3本のほうが効きます。

3

計画は、必ず短く見積もられる

予測34日、実際56日

計画を立てるとき、私たちは所要時間を必ず短く見積もります。これは性格の問題ではなく、誰にでも起きるクセとして知られています。

1994年の研究では、卒業論文を書いている学生に「あと何日で終わるか」を予測してもらい、実際にかかった日数と比べました。

地図の上のまっすぐな短い線と、曲がりくねった実際の長い道のりの対比
頭の中の道はまっすぐで短い。実際の道は曲がっている

悲観的に見積もっても、まだ足りなかった

結果が、こちらです。

見積もり/実際日数
うまくいった場合の予測約27日
ふつうに考えた予測約34日
すべてうまくいかなかった場合の予測約49日
実際にかかった日数約56日
いちばん悪い場合を想定した予測でも、実際には届かなかった

注目してほしいのは、いちばん下から2番目の行です。

「すべてうまくいかなかったら」とわざと悲観的に見積もった数字ですら、実際より短かったのです。

そして、自分が予測した日までに終えられた人は、全体の約3割しかいませんでした。

対策は「1.5倍」と「過去の実績」

やっかいなのは、このクセは知っていても直らないことです。「短く見積もりがちだ」と分かっていても、次もやはり短く見積もります。

ですから対策は、意識を変えることではなく、数字のほうを機械的にいじることになります。

  • 見積もった日数を、そのまま1.5倍して計画に入れる
  • 想像ではなく、前回かかった実際の時間を基準にする

「1章を読むのに30分」ではなく、「先週1章にかかったのは50分だった」から始めるということです。

ここが大事

計画が崩れたとき、多くの人は自分を責めてやめてしまいます。ですが崩れた原因の多くは、意志ではなく最初の見積もりのほうにあります。

4

習慣になるまでは、思っているより長い

「21日で習慣になる」は本当か

「21日続ければ習慣になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。

実際に測った研究では、もっと長い数字が出ています。

2010年の研究では、96人に新しい行動を12週間続けてもらい、「意識しなくてもできる」状態になるまでの日数を毎日記録しました。

習慣になるまでの日数日数
いちばん早かった人18日
まん中の人(中央値)66日
いちばん遅かった人254日
個人差が大きく、21日で足りる人はむしろ少数だった

まん中の人で66日。2か月以上かかっています。

そして幅が非常に広く、18日で身についた人もいれば、254日かかった人もいました。

ここから言えるのは、3週間続けてまだしんどいのは、失敗ではないということです。むしろ、そこはまだ途中です。

1日抜けても、崩れなかった

同じ研究で、もうひとつ大事なことが分かっています。

参加者が1日サボった日の前後を調べたところ、その翌日以降の身につき方に長期的な悪影響は見られませんでした

1日抜けても、道はそのまま続いていたということです。

長い階段を上る場面。1段だけ足あとのない段があるが、階段は途切れずに続いている
1日抜けても、階段そのものは欠けない

やめるのは「1日サボった翌日」

続かなくなる人の多くは、1日サボったことでやめるのではありません。

1日サボったあとに「もうダメだ」と判断してやめています。研究の結果を見るかぎり、その判断のほうが間違いです。

抜けた日は、なかったことにして翌日から戻る。それで問題ありません。

ここが大事

「毎日やる」より「同じ時間・同じ場所でやる」を優先してください。習慣は回数ではなく、条件がそろうことで身につきます。

5

記録をつけると、続く

138件の研究がそろって示していること

最後は、いちばん地味で、いちばん確実な方法です。やったことを記録するだけです。

138件の研究・約2万人分のデータをまとめた2016年の分析では、進み具合を記録するようにうながすと、目標を達成できる割合が上がることが確認されています。

足あとが消えてしまう場面と、足あとがチェック印として残る場面の対比
残っているものが見えると、次の一歩が出やすくなる

効果が上がる記録のしかた

この分析では、どんな記録のしかたが効果を高めるかも調べられています。

記録のしかた効果
頭の中で振り返るだけ弱い
紙やアプリに形として残す高い
人に伝える・見えるところに出す高い
頭の中で終わらせず、形にして外に出すほど効いた

ポイントは、頭の中で終わらせないことです。

カレンダーに丸をつける、ノートの端に「◯月◯日 第2章」と1行書く。この程度で構いません。大切なのは、あとから見て積み上がりが目に入ることです。

記録は、計画の材料にもなる

記録にはもうひとつ役割があります。セクション3で出てきた、見積もりの材料になることです。

「1章に50分かかった」という記録が10個たまれば、次の計画は想像ではなく実績から立てられます。

続けるための記録が、そのまま計画の精度を上げてくれる、というわけです。

やり方

記録は凝らないでください。日付とやった範囲、かかった時間の3つだけで十分です。記録そのものが面倒になった時点で、続かなくなります。

★ ここだけ覚えればOK ★
やる気ではなく、決め方を変える
1行決める

→ 「いつ・どこで・何を」まで書く

締切を小刻みに

→ 遠い1本より、近い3本が効く

記録を残す

→ 頭の中で終わらせず、形にして出す

まとめ

続かないのは、やる気が足りないからではありません。やる気に判断を任せてしまっているからです。

やる気は選べませんが、決め方は選べます。今日から変えられることは、次の5つです。

  • 「いつ・どこで・何を」を1行にして書き出す
  • 試験日までに、自分で締切を何本か立てる
  • 見積もった日数は1.5倍して計画に入れる
  • 3週間でしんどくても、まだ途中だと考える
  • やった日付と範囲を、形にして残す

気持ちを奮い立たせるのをやめて、気持ちが乗らない日でも動ける形を作る。続いている人がやっているのは、だいたいこれだけです。

📚 参考文献
  1. Milne, S., Orbell, S., & Sheeran, P. (2002). Combining motivational and volitional interventions to promote exercise participation: Protection motivation theory and implementation intentions. British Journal of Health Psychology, 7(2), 163–184.
  2. Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.
  3. Ariely, D., & Wertenbroch, K. (2002). Procrastination, Deadlines, and Performance: Self-Control by Precommitment. Psychological Science, 13(3), 219–224.
  4. Buehler, R., Griffin, D., & Ross, M. (1994). Exploring the “Planning Fallacy”: Why People Underestimate Their Task Completion Times. Journal of Personality and Social Psychology, 67(3), 366–381.
  5. Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.
  6. Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229.

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