これまで地方自治法シリーズで、地方公共団体のしくみやお金の使い方を見てきました。
ここからは新しく「地方公務員法」に入ります。テーマは、そこで働く地方公務員が、どんなルールで採用され、動かされているかです。
今回は、地方公務員の概念と近代的な公務員制度の原則、そして職員を採用・配置する「任用」のルールを扱います。とくに、任用が何に基づいて行われるか(成績主義)が、この科目全体の背骨になります。
そもそも「地方公務員」ってなに?
地方公務員とは、地方公共団体に対して労働を提供し、その反対給付として給与を受ける関係にある者の全てをいいます。この概念はかなり広く、常勤・非常勤、単純労務職員かどうかも問わないのが原則です。
「地方公務員とは、非常勤職員以外の職員をいう」というように、勝手に対象を狭める説明は誤りです。給与を受ける関係にある者は、常勤か非常勤か、単純労務職員かどうかにかかわらず、すべて地方公務員に含まれます。
また、地方公務員は一般職と特別職に分かれます。地方公務員法は、原則として一般職に適用されるルールです(特別職には原則として適用されません)。
近代的公務員制度の4原則
近代的公務員制度が備えるべき原則は、公務の公開・平等、成績主義(メリットシステム)、公務の政治的中立、人事行政機関の独立の4つです。
ここで注意したいのが、職階制による開放型任用制は、近代的公務員制度の必須原則とはいえない、という点です。空きポストを都度公募する開放型任用制(アメリカ)に対し、日本は新卒採用・年功序列・終身雇用を基本とする閉鎖型任用制です。職階制(昭和25年の職階法)は人事慣行になじまず、すでに廃止されています。
たとえるなら、近代原則の4つは「必ず揃えるべき部品」ですが、職階制・開放型任用制は「一部の国だけが採用した、日本にはなじまなかった部品」というイメージです。
「近代的公務員制度の原則に職階制による開放型任用制が含まれる」は誤りです。日本では職階制はすでに廃止されています。
任用の根本基準=成績主義
職員の任用は、受験成績・人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければなりません(成績主義、第15条)。情実や政治的つながり(猟官制=スポイルズシステム)ではなく、能力の実証に基づく、というのがこの科目の背骨です。
条文の言い回しは「受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて」であり、「住民の信任に基づいて」「学歴に基づいて」とするのは誤りです。試験でも、この言い回しの取り違えがよく狙われます。
「職員の任用は住民の信任に基づいて行われなければならない」「学歴に基づいて行われなければならない」はいずれも誤り(能力の実証に基づく)。
任命権者の権限と任命の4方法
任命権者は、職員の任命のほか、休職・免職・懲戒等を行う権限をもちます(第6条)。そして、職に欠員を生じた場合、任命権者は採用・昇任・降任・転任のいずれかの方法で職員を任命できます(第17条)。
欠員補充は採用に限られない、という点を押さえておきましょう。「欠員が生じたら必ず新規採用する」というイメージを持ちがちですが、実際は、内部の職員を昇任・降任・転任させることでも欠員を埋められます。
「欠員補充は採用に限られる」は誤りです。採用・昇任・降任・転任の4方法があります。
公開平等・成績主義・政治的中立・機関の独立(職階制は×)
住民の信任・学歴ではない
採用・昇任・降任・転任
📒 この記事のまとめ
地方公務員とは、地方公共団体に労働を提供し、その反対給付として給与を受ける関係にある者の全てです。
- 地方公務員=給与を受ける関係にある者の全て(常勤・非常勤・単純労務職員も含む)
- 近代的公務員制度の原則は、公開平等・成績主義・政治的中立・機関の独立の4つ。職階制は含まれない
- 任用の根本基準は「能力の実証」(成績主義)。住民の信任・学歴ではない
- 任命権者は任命のほか休職・免職・懲戒等を行える。任命の方法は採用・昇任・降任・転任の4つ
「誰が」「何に基づいて」「どう任命するか」を整理しておけば、この分野は得点源になります。
確認問題(全5問)
問 1
地方公務員の概念に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 地方公務員とは、地方公共団体に勤務する職員のうち、非常勤の職員以外の職員をいう
- 地方公務員とは、地方公共団体に対して労働を提供し、その反対給付として給与を受ける関係にある者の全てをいう
- 地方公務員とは、単純労務職員を除いた全ての職員をいう
- 地方公務員とは、長・議員等の公選で選出された者を除く全ての職員をいう
💡 ヒント
「非常勤を除く」「単純労務職員を除く」といった限定は、本文でどう説明されていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
地方公務員とは、地方公共団体に対して労働を提供し、その反対給付として給与を受ける関係にある者の全てをいいます。非常勤や単純労務職員を除く限定はいずれも誤りです。
問 2
近代的公務員制度の原則として、妥当でないものはどれか。
- 公務の公開・平等の原則
- 成績主義
- 公務の政治的中立
- 職階制による開放型任用制
💡 ヒント
職階制は、日本の人事慣行になじんで今も使われているルールでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
日本は閉鎖型任用制を基本とし、職階制(昭和25年の職階法)は人事慣行になじまずすでに廃止されています。よって「職階制による開放型任用制」を原則とするのは妥当ではありません。
問 3
職員の任用の根本基準に関する記述として、最も妥当なものはどれか。
- 職員の任用は、住民の信任に基づいて行われなければならない
- 職員の任用は、学歴に基づいて行われなければならない
- 職員の任用は、受験成績・人事評価その他の能力の実証に基づいて行われなければならない
- 職員の任用は、任命権者の自由な裁量に基づいて行われなければならない
💡 ヒント
成績主義という言葉の中身を、条文の言い回しで思い出してみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
任用は受験成績・人事評価その他の能力の実証に基づいて行います(成績主義、地公法第15条)。住民の信任・学歴・自由裁量はいずれも誤りです。
問 4
任命権者に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 任命権者は、職員の任命のほか、休職・免職・懲戒等を行う権限を有する
- 任命権者は、職に欠員を生じた場合、採用・昇任・降任・転任のいずれかの方法で職員を任命できる
- 欠員補充の方法は、採用に限られる
- 職員は、その職務を行うに当たって、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない
💡 ヒント
欠員が出たとき、必ず新しく採用しなければならないのでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
欠員補充の方法は、採用・昇任・降任・転任の4つです(地公法第17条)。「採用に限られる」とするCが誤りです。
問 5
一般職・特別職に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 地方公務員法は、特別職に対して原則として適用される
- 地方公務員は一般職と特別職に分かれ、地方公務員法は原則として一般職に適用される
- 一般職と特別職の区分は、地方公務員法には規定されていない
- 特別職の職員も、一般職と全く同じ規律に服する
💡 ヒント
地方公務員法が主に対象としているのは、どちらの職でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
地方公務員は一般職と特別職に分かれ、地方公務員法は原則として一般職に適用されます。特別職には原則として適用されないため、A・C・Dはいずれも誤りです。


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