第1回:防災って何?――災害対策基本法の用語と指定機関

防災
災害対策基本法って何? 防災の用語の定義と指定機関 消防昇任試験対策

今回から「防災」の分野に入ります。中心になるのは、防災行政の骨格となる法律、災害対策基本法(略して「災対法」)です。

この分野で押さえるべきことは、じつはハッキリしています。「用語の定義」「会議や本部のトップは誰か」「指定するのは誰か」。この3つです。

第1回は、その土台になる「用語の定義」と「指定◯◯機関」を扱います。まず、この法律がどんな法律なのかから始めましょう。

1

そもそも災害対策基本法って何?

📜 災害対策基本法第1条(目的・要約)

「この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」

つまり災害対策基本法は、日本の防災のいちばん大もとになる法律です。「国・都道府県・市町村・住民は、それぞれ何を担当するのか」「災害の前・最中・後に、誰が何をするのか」という、防災全体の役割分担と段取りを決めた設計図にあたります。

この法律が生まれたきっかけは、昭和34年(1959年)の伊勢湾台風です。5,000人を超える犠牲者を出したこの災害で、「組織ごとにバラバラに動くのではなく、国全体で統一した防災のしくみが必要だ」という反省から、昭和36年(1961年)に制定されました。

もう1つ押さえておきたいのは、防災はこの法律1本では完結しないということです。災対法を骨格(背骨)として、災害救助法・水防法・大規模地震対策特別措置法・国民保護法などの個別の法律が手足のように連携して動きます。だからこそ、「この文はどの法律のものか」を見分けられるかがカギになります(セクション3で扱います)。

災害対策基本法を太い幹とする大きな木。枝に災害救助法・水防法・大規模地震対策特別措置法・国民保護法の札が下がっている
災対法は防災の「幹」。個別の法律が枝として連携する
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「防災」と「防災計画」の定義

📜 災害対策基本法第2条第2号(防災の定義)

「防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。」

つまり「防災」とは、①未然防止(予防)→ ②被害拡大の防止(応急)→ ③復旧という、時間の流れにそった3段階をまとめて一語で表した言葉です。

まちがえやすいポイント:「防災とは災害を未然に防止することをいう」という文は、②と③が抜けているのでまちがい。文の一部だけを抜いた選択肢に注意してください。

防災の3段階。①未然防止(予防)の備蓄・点検、②被害拡大の防止(応急)の水防活動、③復旧の工事が時間軸でつながる
「防災」は予防・応急・復旧の3段階ぜんぶを含む言葉
📜 災害対策基本法第2条第7号(防災計画)

「防災計画 防災基本計画、防災業務計画及び地域防災計画をいう。」

つまり「防災計画」は、防災基本計画・防災業務計画・地域防災計画の「3つセット」の総称です。

  • 防災基本計画中央防災会議が作成(国の防災の大もとの計画)
  • 防災業務計画指定行政機関の長等・指定公共機関が作成(各省庁などの仕事の計画)
  • 地域防災計画 … 都道府県・市町村などの地域の計画

まちがえやすいポイント:「防災計画とは、防災基本計画と防災業務計画の二つをいう」はまちがい。地域防災計画を落とした文は、とてもまぎらわしいので注意してください。

防災計画の箱に防災基本計画・防災業務計画・地域防災計画の3冊がセットで収まる。作成者は中央防災会議・指定行政機関の長など・都道府県市町村
防災計画は3冊セット。「2つでは足りない」
ザックリ覚え方

防災計画=基本・業務・地域の3点セット」と数で覚えるのが近道です。

3

基本理念――1つだけ「別の法律」が紛れこむ

📜 災害対策基本法第2条の2(基本理念・要約)

「①災害の発生を常に想定し、被害の最小化と迅速な回復を図ること ②国・地方公共団体・公共機関の適切な役割分担と連携協力を確保し、住民一人一人が自ら行う防災活動や自主防災組織等の活動を促進すること ③科学的知見と過去の災害から得られた教訓を踏まえ、絶えず改善を図ること ④災害の状況を的確に把握し、人の生命及び身体を最も優先して保護すること ⑤被災者の年齢・性別・障害の有無などの事情を踏まえ、適切に援護すること ⑥速やかに施設の復旧と被災者の援護を図り、災害からの復興を図ること」

つまり基本理念は、「常に備える」「みんなで分担する」「学んで改善する」「命を最優先する」「被災者一人一人に寄りそう」「すばやく立て直す」という6本の柱です。

この理念でまぎらわしいのは、災対法の理念のなかに、1つだけ別の法律の文が紛れこむ「混ぜこみ型」です。見分けるキーワードは2つ。

  • 「応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図る」→ 災害救助法第1条の目的
  • 「国民の生命・身体・財産を火災から保護する」→ 消防組織法第1条(消防の任務)
5枚のカードのうち4枚は災対法の理念、1枚だけ災害救助法。虫めがねで見破る。救助・社会秩序は災害救助法、火災から保護は消防組織法
仲間はずれの1枚を見抜く。「救助・社会秩序」と「火災から保護」がサイン
ここ注意

救助・社会秩序ときたら災害救助法、火災から保護ときたら消防組織法」。このひも付けだけで、混ぜこみ型は見抜けます。

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指定◯◯機関の4分類――国は総理、地方は知事

📜 災害対策基本法第2条(指定機関の定義・要約)

「指定行政機関=内閣府・各省庁等の国の行政機関で、内閣総理大臣が指定するもの/指定地方行政機関=指定行政機関の地方支分部局等/指定公共機関=日本銀行・日本赤十字社・NHK・電気・ガス・輸送等の公共的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するもの/指定地方公共機関=地方の公共的施設の管理者等で、都道府県知事が指定するもの」

つまり「指定◯◯機関」は4種類ありますが、覚え方はシンプルで、「誰が指定するか」で整理します。

  • 国レベル(指定行政機関・指定公共機関)→ 内閣総理大臣が指定
  • 地方レベル(指定地方公共機関)→ 都道府県知事が指定
  • 指定地方行政機関は、指定行政機関の地方の出先(管区警察局・地方整備局など)

国=総理、地方=知事」。これだけで指定主体の問題は即断できます。

左は国レベルで内閣総理大臣が指定行政機関と指定公共機関に指定のバッジを授け、右は地方レベルで都道府県知事が指定地方公共機関に授ける対比図
指定の主体は「国=総理、地方=知事」で整理

まちがえやすいポイント:「指定公共機関は都道府県知事が指定する」はまちがい(総理が指定)。また、日本赤十字社やNHKは「指定行政機関」ではなく「指定公共機関」です。役所ではなく公共的な法人だから、と考えると迷いません。

日本赤十字社・NHK・電力・ガスのキャラクターが、省庁のみの指定行政機関の門ではなく、指定公共機関の門へ入っていく
日赤・NHK・電力・ガスは「指定公共機関」の門へ
ここ注意

日赤・NHKは指定公共機関。「指定行政機関である」と書かれていたらまちがいです。

★ ここだけ覚えればOK ★
防災 第1回の3ポイント
防災計画は3点セット

→ 基本(中央防災会議)・業務(指定行政機関の長等)・地域。「二つ」ときたらまちがい

理念の混ぜこみに注意

→ 「救助・社会秩序」は災害救助法、「火災から保護」は消防組織法の文言

国=総理、地方=知事

→ 指定行政機関・指定公共機関は総理、指定地方公共機関は知事が指定。日赤・NHKは指定公共機関

まとめ

災対法の入り口は、「言葉の定義を正確に」がすべてでした。

  • 災対法=伊勢湾台風を教訓に生まれた、防災の骨格になる法律
  • 防災=未然防止・被害拡大の防止・復旧の3段階ぜんぶ
  • 防災計画=基本・業務・地域の3点セット
  • 指定機関は「国=総理、地方=知事」。日赤・NHKは指定公共機関

次回は、防災会議と災害対策本部――「会議=常時、本部=臨時」の世界に進みます。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

災害対策基本法に定める「防災計画」の説明として、正しいものはどれか。

  1. 防災基本計画と防災業務計画の二つの計画をいう。
  2. 防災基本計画と地域防災計画の二つの計画をいう。
  3. 防災基本計画、防災業務計画及び地域防災計画をいう。
  4. 防災業務計画と地域防災計画の二つの計画をいう。
  5. 防災基本計画のみをいう。
💡 ヒント

「防災計画」の箱に収まっていた本は、何冊だったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

防災計画とは、防災基本計画・防災業務計画・地域防災計画の3つの総称です(災害対策基本法第2条第7号)。「二つの計画」とする選択肢はいずれも誤りです。

問 2

災害対策基本法に定める用語等に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 防災とは、災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。
  2. 防災基本計画は、中央防災会議が作成する。
  3. 防災業務計画は、指定行政機関の長等が作成する。
  4. 指定行政機関は、内閣総理大臣が指定する。
  5. 防災計画とは、防災基本計画及び防災業務計画の二つの計画をいう。
💡 ヒント

「二つ」という数に注目してください。防災計画は何点セットだったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:E

防災計画には地域防災計画も含まれ、計3つです(第2条第7号)。A〜Dはいずれも正しい記述です。

問 3

災害対策基本法の基本理念として規定されている事項について、誤っているものはどれか。

  1. 災害の発生を常に想定するとともに、被害の最小化及び迅速な回復を図ること。
  2. 住民一人一人が自ら行う防災活動及び自主防災組織等の活動を促進すること。
  3. 国、地方公共団体及び公共機関の適切な役割分担及び相互の連携協力を確保すること。
  4. 災害に際して、国が関係団体及び国民の協力の下に、応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図ること。
  5. 科学的知見及び過去の災害から得られた教訓を踏まえて絶えず改善を図ること。
💡 ヒント

「救助」「社会秩序の保全」というキーワードは、どの法律のサインだったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

Dは災害救助法第1条に規定する目的であり、災害対策基本法の基本理念ではありません。「混ぜこみ型」の典型です。

問 4

災害対策基本法の基本理念として規定されている事項について、誤っているものはどれか。

  1. 的確に災害の状況を把握し、人の生命及び身体を最も優先して保護すること。
  2. 国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、地震等の災害を防除し、被害を軽減すること。
  3. 被災者の年齢、性別、障害の有無その他の事情を踏まえ、適切に被災者を援護すること。
  4. 災害が発生したときは、速やかに施設の復旧及び被災者の援護を図ること。
  5. 過去の災害から得られた教訓を踏まえて絶えず改善を図ること。
💡 ヒント

「火災から保護」という文言は、どの法律のものだったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

Bは消防組織法第1条に規定する消防の任務の一部であり、災害対策基本法の基本理念ではありません。

問 5

災害対策基本法に定める指定機関等に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 指定公共機関は、都道府県知事が指定する。
  2. 指定行政機関は、内閣総理大臣が指定する。
  3. 指定地方行政機関は、指定行政機関の地方支分部局その他の国の機関である。
  4. 指定公共機関には、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会等が含まれる。
  5. 指定地方公共機関は、都道府県知事が指定する。
💡 ヒント

「国=総理、地方=知事」。指定公共機関は、国と地方のどちらのレベルだったでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

指定公共機関は国レベルの機関であり、内閣総理大臣が指定します。都道府県知事が指定するのは指定地方公共機関です。

防災 第1回(最初の記事です) 第2回:防災会議と災害対策本部(近日公開予定)

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