前回は「働く条件」と「給料」の話でした。今回は、その先にあるもしものときと、職員生活の終わり方です。
病気になったら、ケガをしたら、定年を迎えたら。どれも誰にでも関わる話なので、制度の役割分担から順番に整理していきます。
共済制度は「公務員版の社会保険」
民間の会社員が健康保険と厚生年金に入っているように、地方公務員には共済組合があります。役割は大きく2つに分かれていて、2階建ての家をイメージすると整理しやすくなります。
- 短期給付=民間の健康保険にあたるもの。「いま困っていること」に対応する
(療養の給付、休業給付〔傷病手当金など、働けない間の生活を支えるお金〕、災害給付〔弔慰金など〕) - 長期給付=民間の厚生年金保険にあたるもの。「この先ずっと」の暮らしを支える
(退職共済年金、障害共済年金、障害一時金、遺族共済年金など)
「短期=いますぐ」「長期=この先ずっと」と時間軸で分けると、どちらの給付か迷いません。このほか共済組合は、保健事業や保養施設、財産形成の支援といった福祉事業も行っています。
費用は「掛金」と「負担金」の折半
共済の給付にはお金がかかります。その財源は、次の2つです。
- 掛金…組合員(常勤職員)が出す分
- 負担金…雇い主である地方公共団体が出す分
この2つを折半するのが原則です。民間の社会保険料が会社と本人で折半されているのと同じ発想で、働く人だけに負担を背負わせない仕組みになっています。
積立金の運用益もありますが、あくまで補助的なものです。「掛金と運用益だけで賄っている」わけではありません。
「給付に係る費用は、組合員の掛金とその運用益で賄われている」はまちがい。正しくは掛金と負担金の折半です。
公務災害補償は「公務中のケガ」担当
ここで、共済との役割分担をはっきりさせておきましょう。窓口が2つある、と考えるとわかりやすくなります。
- 私生活での病気やケガ(休みの日にスキーで骨折など)→ 共済の短期給付
- 公務中のケガや病気(消防活動中の受傷など)→ 公務災害補償
つまり公務災害補償は、業務の遂行中に起きた「人」の損害を補うための制度です。ここから、次の線引きが導かれます。
- 第三者に殴られてケガ…業務中なら対象。加害者が別にいることと、職場が補償することは別の話です
- 火災現場で屋根を踏み抜いて転落…本人にうっかりがあっても、業務上のことなら対象
- 私物の腕時計の破損…対象外。この制度が補うのは「人」の損害であって、「物」の損害ではありません
- 精神的ショックだけ…当然には対象とならず、業務起因性(その業務が原因で起きたといえる関係)が認められて初めて対象になります
- 消火活動に協力した市民(消防作業従事者等)…職員でなくても補償の対象となり得ます。住民に協力を求める以上、その人を守る必要があるからです
「第三者の加害行為による受傷は対象外」「私物の物的損害も対象」「本人に過失があれば一切補償されない」は、いずれもまちがいです。
定年退職は「最初の3月31日まで」
定年に達した職員は、その日以後における最初の3月31日までの間で、条例の定める日に退職します。誕生日にその場で職を離れるわけではありません。
なぜ年度末に合わせるかというと、行政の仕事が年度単位で動いているからです。年度の途中で急に抜けると、事務の引継ぎや人員配置に穴が空いてしまいます。「区切りのよいところまで勤めてから」という考え方です。
このほか、押さえておきたい点が3つあります。
- 職務の特殊性などを要件に、定年後も引き続き勤務させる勤務延長ができる
- 定年退職の特例も条例で定められる
- 非常勤職員には、定年退職の適用がない(そもそも任期などで区切られているため)
「定年に達した日以後における最初の12月31日までの間に退職する」「非常勤職員にも定年退職の適用がある」は、いずれもまちがいです。
組合員の掛金+地方公共団体の負担金
第三者加害でも業務中なら○。物的損害は×
非常勤には適用なし
📒 この記事のまとめ
もしものときを支えるのが共済と公務災害補償、職員生活の区切りが定年退職です。
- 共済の短期給付は健康保険に、長期給付は厚生年金保険に相当する
- 給付費用は、組合員の掛金と地方公共団体の負担金で折半するのが原則
- 私生活の病気・ケガは共済、公務中のケガは公務災害補償が担当
- 公務災害補償は業務中の人的損害が対象。第三者加害でも対象、物的損害は対象外
- 精神的ショックのみは業務起因性が必要。消火活動の協力者も対象となり得る
- 定年退職日は、定年に達した日以後の最初の3月31日までの間で条例が定める日
- 勤務延長・特例は条例で定められ、非常勤職員には定年退職の適用がない
「誰が支えるか」「何が対象か」「いつ辞めるか」の3点で整理しておきましょう。
確認問題(全5問)
問 1
地方公務員の共済制度に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 短期給付は民間の健康保険に、長期給付は民間の厚生年金保険に相当する
- 短期給付には、療養の給付、休業給付、弔慰金などの災害給付がある
- 給付に係る費用は、原則として組合員の掛金とその運用益で賄われている
- 共済組合は、福祉事業として組合員の保健・保養などに資する事業も行う
💡 ヒント
貯金箱にコインを入れていたのは、何人でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
給付に係る費用は、原則として組合員(常勤職員)の掛金と地方公共団体の負担金とで折半します。運用益は補助的なもので、「掛金とその運用益で賄う」とするCが誤りです。
問 2
公務災害補償に関する記述として、正しいものはどれか。
- 救急活動現場で、傷病者の友人(第三者)に殴打されて受傷した場合、第三者の加害行為であっても補償の対象となる
- 消防活動現場で自己所有の腕時計を破損した場合、その物的損害も補償される
- 火災現場で残火処理中に屋根を踏み抜いて転落した場合、本人に過失があれば一切補償されない
- 消火活動に協力した一般市民が負傷しても、職員でないため一切補償されない
💡 ヒント
この制度が補うのは「人」でしたか、「物」でしたか。
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正解:A
業務遂行中に発生したものであれば、第三者の加害行為でも補償の対象となります。物的損害は対象外(Bは誤り)、業務上なら過失があっても補償され(Cは誤り)、消火活動の協力者も補償の対象となり得ます(Dは誤り)。
問 3
地方公務員の定年退職に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 定年退職日は条例で定められる
- 職務の特殊性などを要件に勤務延長が可能である
- 定年に達した日以後における最初の12月31日までの間に退職する
- 非常勤職員には定年退職の適用はない
💡 ヒント
ゴールテープが張られていたのは、何月何日のページでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
定年に達した日以後における最初の3月31日までの間で、条例の定める日に退職します。「最初の12月31日まで」とするCが誤りです。
問 4
共済制度・公務災害補償・定年退職に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 共済の給付費用は、全額を地方公共団体が負担する
- 公務災害補償は、業務外の私的な災害も広く対象とする
- 定年退職は、定年に達した日にその場で退職するものである
- 業務遂行中の第三者による加害で受傷した場合、公務災害補償の対象となり得る
💡 ヒント
3つの制度の線引きを、それぞれ思い出してみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
業務遂行中の第三者加害による受傷は公務災害補償の対象となり得ます。共済費用は掛金と負担金の折半(Aは誤り)、公務災害は業務上の災害が対象(Bは誤り)、定年退職は最初の3月31日までの間の条例で定める日です(Cは誤り)。
問 5
共済制度の給付に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 退職共済年金や遺族共済年金は、短期給付に区分される
- 療養の給付や休業給付は短期給付、退職共済年金や遺族共済年金は長期給付に区分される
- 療養の給付や休業給付は、長期給付に区分される
- 共済組合は、給付を行うだけで福祉事業を行うことはできない
💡 ヒント
「いますぐ」が1階、「この先ずっと」が2階でした。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
療養の給付・休業給付・災害給付は短期給付、退職共済年金・障害共済年金・遺族共済年金などは長期給付です。共済組合は保健・保養などの福祉事業も行います(Dは誤り)。


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