今回のテーマは、職員の身分が変わってしまう2つの処分、分限(ぶんげん)と懲戒(ちょうかい)です。
どちらも本人が望まない不利益な処分ですが、目的がまったく違います。ここを取りちがえると、具体例の振り分けでつまずきます。
今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。
ふたつの処分は、目的がちがう(第27条)
「全て職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、又は免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職され、又は降給されることがない。
3 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。」
つまり、どちらも「決められた理由がなければできない」処分です。任命権者の気分で職を奪われることはありません。
そのうえで、2つの目的はこう違います。
- 分限=公務能率の維持。仕事がうまく回らないときに、態勢を整えるための処分
- 懲戒=規律・秩序の維持。悪いことをした人への制裁
見分け方はシンプルで、「本人を責められるかどうか」です。体調をくずした、その仕事に向いていない、組織が縮小して席がなくなった。これらは本人のせいではないので分限。無断欠勤をくり返した、お金を受け取った。これは本人のせいなので懲戒です。
分限処分の種類と事由(第28条)
「職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合」
つまり、分限処分の種類は免職・降任・休職・降給の4つです(降給は条例で定める場合)。引き出しが4つある棚をイメージしてください。
ここで押さえたいのが、これらはいずれも本人に責めがなくてもできるという点です。心身の故障で長期の休養が必要な場合、休職にするのに本人の同意は要りません。組織が縮小して過員が生じたときも、降任できます。
そして、まちがえやすいのが起訴されたときの休職です。刑事事件で起訴されると、そのままでは職務に支障が出るため休職にできますが、これは「罰」ではなく、あくまで態勢を整えるための分限です。
「分限の目的は規律の維持」「心身の故障による休職には本人の同意が必要」「過員が生じても降任できない」は、いずれもまちがいです。
懲戒処分の種類と事由(第29条)
「職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律…又はこれらに基づく条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」
つまり、懲戒処分の種類は戒告・減給・停職・免職の4つです。事由は、①ルール違反、②職務上の義務違反・職務怠慢、③全体の奉仕者にふさわしくない非行の3つです。
ここでよく問われるのが諭旨免職(ゆしめんしょく)です。これは「自分から辞めるようすすめる」という実務上の運用であって、地方公務員法に定められた懲戒処分ではありません。法律書の上に乗っているカードは4枚だけ、とイメージしてください。
なお、懲戒免職を受けると、退職手当は原則として支給されず、共済の退職年金も減額されます。同じ「免職」でも、分限免職とは重みが違います。
「懲戒処分は戒告・減給・停職・免職・諭旨免職の5種類」はまちがい。法定は4種類で、諭旨免職は含まれません。
懲戒と刑事処分は、別の線路を走る
懲戒は、職員としての道義的な責任を問うものです。犯罪を裁く刑事処分とは、そもそも目的が違います。そのため、2つの結果が一致するとは限りません。線路が2本、別々に走っているイメージです。
ここから、次の4つが導かれます。
- 起訴猶予(不起訴)でも懲戒できる。刑事で処罰されなくても、非行があれば職場としての責任は問える
- 裁判が続いている間も処分できる。判決を待たなければならない決まりはない
- 後で無罪が確定しても、懲戒が当然に分限へ変わるわけではない
- 一律の時効規定はない。「行為から5年たてば処分できない」という決まりはない
「起訴猶予なら懲戒できない」「裁判中は処分を待たなければならない」「無罪なら分限に変更しなければならない」「5年を超えると処分できない」は、いずれもまちがいです。
責められない→分限、責められる→懲戒
罰ではなく能率維持の措置。本人の同意も不要
諭旨免職は法定外。起訴猶予でも懲戒できる
📒 この記事のまとめ
分限も懲戒も、職員の意に反する不利益処分ですが、目的が異なります。
- 分限の目的は公務能率の維持、懲戒の目的は規律・秩序の維持
- 分限は免職・降任・休職・降給の4つ。懲戒は戒告・減給・停職・免職の4つ
- 降任・免職の事由は、勤務実績不良/心身の故障/適格性欠如/廃職・過員
- 休職の事由は、心身の故障による長期休養/刑事事件で起訴された場合
- 諭旨免職は法定の懲戒処分ではない。懲戒免職では退職手当が原則不支給
- 起訴猶予でも懲戒でき、裁判係属中も処分でき、無罪でも当然に分限へは変わらない。一律の時効規定もない
「本人を責められるか」で振り分ければ、具体例の問題は迷わなくなります。
確認問題(全5問)
問 1
地方公務員法に定める分限処分に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 任命権者は、心身の故障のため長期の休養を要する場合でも、本人の同意がなければ休職させられない
- 任命権者は、職制の廃止や定数減により過員が生じても、職員を降任することはできない
- 任命権者は、職員が心身の故障のため職務の遂行に支障があり又は堪えない場合、その意に反して降任又は免職できる
- 任命権者は、刑事事件で起訴された職員を休職させることはできない
💡 ヒント
分限は、本人に責めがなくても行える処分でした。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
心身の故障のため職務遂行に支障があり又は堪えない場合は、その意に反して降任又は免職できます(第28条第1項第2号)。休職に本人の同意は不要(Aは誤り)、過員は分限事由(Bは誤り)、起訴は休職事由です(Dは誤り)。
問 2
分限と懲戒に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 分限の目的は、公務における規律の維持である
- 懲戒は、職務上の義務違反等に対する制裁である
- 懲戒の目的の一つは、公務における秩序の維持である
- 分限も懲戒も、職員の意に反する不利益処分である
💡 ヒント
「規律の維持」はどちらの目的として説明されていましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
分限の目的は公務能率の維持及び適正な運営の確保です。「規律の維持」は懲戒の目的であり、Aが誤りです。
問 3
懲戒処分に関する記述として、正しいものはどれか。
- 収賄行為で起訴されたときは、裁判が続いている間は懲戒処分を行えず、判決の確定を待たなければならない
- 窃盗行為で逮捕・勾留されたが起訴猶予処分となった場合でも、任命権者は懲戒処分を行うことができる
- 非違行為から5年を超えている場合は、懲戒処分を行うことができない
- 懲戒処分の後に無罪が確定した場合は、その懲戒処分を直ちに分限処分に変更しなければならない
💡 ヒント
刑事と懲戒は、別々の線路を走っていました。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
懲戒は道義的責任を問うもので、刑事処分の結果と一致する必要はありません。起訴猶予でも懲戒できます。裁判係属中も処分でき(Aは誤り)、一律の時効規定はなく(Cは誤り)、無罪でも当然に分限へ変更されるわけではありません(Dは誤り)。
問 4
処分の例と区分の組合せとして、誤っているものはどれか。
- 外来者を大声で誹謗し勤務態度を改めず、その職に必要な適格性を欠くとして免職……分限処分
- 通勤手当を不適正に受給したとして停職……懲戒処分
- 収賄事件に絡んで逮捕・起訴されたため休職……懲戒処分
- 1か月の間に無断欠勤・遅刻・早退を繰り返したとして処分……懲戒処分
💡 ヒント
起訴されたときの休職は、どちらの処分でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
刑事事件で起訴された場合の休職は分限処分です(第28条第2項第2号)。「懲戒処分」とするCが誤りです。
問 5
次のうち、分限処分に当たるものはどれか。
- 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があったとして免職する場合
- 職務上の命令に違反したとして停職する場合
- 職務を怠ったとして減給する場合
- 心身の故障のため職務の遂行に堪えないとして降任する場合
💡 ヒント
本人を責められる事由か、責められない事由かで分けてみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
心身の故障のため職務遂行に堪えない場合の降任は分限処分です(第28条第1項第2号)。ほかは義務違反・非行に対する懲戒処分です。


コメント