前回は、職員を任命するときの根本のものさし(成績主義)を見ました。今回は、実際の入り口の話です。
試験に受かれば、その日から正式な職員になれるのでしょうか。そもそも、公務員になれない人はいるのでしょうか。
今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。
入り口には3つの関門がある
職員になるまでには、3つの関門を順番に通ります。門が3つ並んでいる、とイメージしてください。
- ①どのルートで入るか=競争試験か選考か
- ②お試し期間を通れるか=条件付採用
- ③そもそも入る資格があるか=欠格条項(けっかくじょうこう)
この順番に見ていきます。
競争試験と選考(第17条の2)
「人事委員会を置く地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験によるものとする。ただし、人事委員会規則…で定める場合には、選考(競争試験以外の能力の実証に基づく試験をいう。)によることを妨げない。
2 人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする。」
つまり、職員になるルートは2本あります。
- 競争試験=大勢が同じ問題を解いて、点数で競う方法(いわゆる採用試験)
- 選考=条文のとおり「競争試験以外の能力の実証に基づく試験」。資格や経歴、面接などで、その仕事に向いているかを確かめる方法
そして、どちらのルートを使えるかは、その団体に人事委員会(職員の採用試験や給与のことを専門にあつかう機関)があるかないかで変わります。
- 人事委員会あり…原則は競争試験。ただし規則で定めた場合は選考でもよい(脇道がある)
- 人事委員会なし…競争試験または選考。どちらでもよい(道が2本、同じ太さで並んでいる)
なお、人事委員会を置かない団体では、選考は原則として任命権者が行います。また人事委員会は、ほかの地方公共団体や国の機関と共同したり、委託したりして試験や選考を行うこともできます。小さな団体が自分たちだけで試験を作らなくてもよい、という現実的な仕組みです。
「人事委員会を置かない団体では、採用は原則として選考による」はまちがい。条文は「競争試験又は選考」で、選考に限定されていません。
条件付採用=お試し期間(第22条)
「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。この場合において、人事委員会等は、人事委員会規則…で定めるところにより、条件付採用の期間を一年を超えない範囲内で延長することができる。」
つまり、採用されても、その日からいきなり正式な職員になるわけではありません。まずは6か月のお試し期間があり、その間しっかり仕事ができて、はじめて正式採用になります。
スポーツチームのテスト入団をイメージするとわかりやすいです。仮のユニフォームで練習に参加し、実力が確かめられてから、正式なユニフォームをもらえる、という流れです。
ポイントは2つ。ひとつは、一般職の採用は全て条件付だということ。競争試験で入った人も、選考で入った人も、扱いは同じです。もうひとつは、延長しても1年を超えない範囲だということです。
「競争試験で採用された職員は、条件付採用としないことができる」はまちがい。入り方に関係なく、全員が条件付です。
欠格条項=そもそも職員になれない条件(第16条)
「次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
二 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者」
つまり欠格条項とは、そもそも職員になる資格がない条件のリストです。門の前で「あなたは入れません」と止められる条件、と考えてください。
拘禁刑(こうきんけい)は、以前の懲役と禁錮をひとつにまとめた刑のことです。これ以上の刑を受けて、その執行が終わるまでの人は職員になれません。ここで気をつけたいのが、執行猶予中の人も該当するという点です。「猶予されているのだからセーフ」ではありません。
一方で、破産した人(破産手続開始の決定を受けた人)は該当しません。お金の失敗と、公務員になる資格は別、ということです。
もうひとつ押さえたいのが、在職中に該当してしまったときの話です。この場合、任命権者がわざわざ免職の手続をとらなくても、当然に失職します。自動的に扉が閉まるイメージです。
また、欠格条項に当たる人をうっかり採用してしまった場合でも、その人はすでに働いています。そのため、支払った給料を返させる問題は原則として起こりません。
「給料は必ず返還させる」「破産した人は欠格条項に該当する」「執行猶予中なら該当しない」は、いずれもまちがいです。
または選考
選考だけに限定されない
原則6か月・延長しても1年まで
失職は自動・給料の返還は原則不要
📒 この記事のまとめ
職員になるまでには、ルート選び・お試し期間・そもそもの資格という3つの関門があります。
- 人事委員会あり=原則競争試験(規則で定めれば選考も可)、なし=競争試験または選考
- 人事委員会を置かない団体の選考は、原則として任命権者が行う
- 一般職の採用は全て条件付。原則6か月、延長しても1年を超えない範囲
- 拘禁刑以上の刑(執行猶予中を含む)・懲戒免職から2年以内は欠格。破産した人は欠格ではない
- 在職中に欠格に当たれば当然に失職。誤って任用しても給料の返還は原則不要
「どこで止められるか」を1つずつ確かめておけば、この範囲はこわくありません。
確認問題(全5問)
問 1
職員の採用の方法に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 人事委員会を置く団体では、職員の採用は競争試験によるが、人事委員会規則で定める場合は選考によることができる
- 人事委員会を置かない団体では、選考は原則として任命権者が行う
- 人事委員会を置かない団体では、職員の採用は原則として選考による
- 人事委員会は、他の団体や国の機関との協定により共同して、又は委託して採用試験・選考を行うことができる
💡 ヒント
条文は「競争試験又は選考」でした。どちらかに限定していたでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
人事委員会を置かない団体では、採用は「競争試験又は選考」によります(第17条の2第2項)。選考に限定する記述が誤りです。
問 2
条件付採用に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 一般職の職員の採用は、全て条件付のものとされている
- 条件付採用の期間は、原則として6か月である
- 条件付採用の期間は、1年を超えない範囲内で延長することができる
- 競争試験によって採用された職員は、条件付採用としないことができる
💡 ヒント
入り方(競争試験か選考か)で、お試し期間の扱いは変わったでしょうか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
一般職の採用は採用方法にかかわらず全て条件付です(第22条)。競争試験組だけ条件付を外すことはできません。
問 3
職員の欠格条項に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 欠格条項に該当することを知らずに任用した場合、その者が在職中に受けた給料は必ず返還させなければならない
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者は欠格条項に該当する
- 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、2年を経過しない者は欠格条項に該当する
- 破産手続開始の決定を受けた者は、欠格条項に該当しない
💡 ヒント
その人は、すでに働いてしまっています。働いた分はどう扱うのでしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
欠格条項に当たる人を誤って任用しても、すでに勤労が提供されているため、給料の返還の問題は原則として起こりません。
問 4
地方公務員の任用に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 任用は、任命権者の情実や政治的なつながりに基づいて行ってよい
- 条件付採用の期間は、延長することができない
- 一般職の採用は全て条件付であり、原則6か月の期間を経て正式採用となる
- 人事委員会を置かない団体では、採用は競争試験のみによる
💡 ヒント
前回学んだ成績主義と、今回のお試し期間のルールを合わせて考えてみましょう。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
一般職の採用は全て条件付で、原則6か月を経て正式採用となります。任用は能力の実証によります(Aは誤り)。延長は1年を超えない範囲で可能(Bは誤り)、置かない団体は競争試験又は選考です(Dは誤り)。
問 5
人事委員会を置かない地方公共団体における職員の採用に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 採用は必ず競争試験によらなければならず、選考によることはできない
- 採用は、競争試験又は選考のいずれかの方法による
- 選考は、原則として住民が行う
- 採用の方法について、地方公務員法に定めはない
💡 ヒント
「なし」の町では、2本の道が同じ太さで並んでいました。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
人事委員会を置かない団体では、採用は競争試験又は選考によります(第17条の2第2項)。選考は原則として任命権者が行うため、Cも誤りです。


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