第8回:不利益な処分を受けたらどこに訴える?人事委員会・公平委員会と権利保障をやさしく解説

地方自治法
地方公務員が困ったときの窓口 人事委員会と公平委員会 消防昇任試験対策

ここまで、採用・服務・処分・給与と見てきました。どれも「職場が職員に対して何かをする」話でしたね。

最後は逆向きの話です。もし納得できない処分を受けたら、職員はどうすればいいのか。そして、それを外側から見張っている機関はどこなのか。

今回もまず条文を読んでから、かみ砕いていきます。

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人事委員会・公平委員会って何をする人たち?

まず、この2つは人事のことを専門にあつかう、独立した見張り役です。市長や消防長といった任命権者とは別に置かれていて、身内だけで人事を決めさせないための仕組みです。

📜 地方公務員法第7条(人事委員会又は公平委員会の設置)

都道府県及び地方自治法…第二百五十二条の十九第一項の指定都市は、条例で人事委員会を置くものとする。
2 前項の指定都市以外の市で人口十五万以上のもの及び特別区は、条例で人事委員会又は公平委員会を置くものとする。
3 人口十五万未満の市、町、村及び地方公共団体の組合は、条例で公平委員会を置くものとする。」

つまり、団体の大きさで置く委員会が変わります。仕事量が多い大きな団体ほど、手厚い委員会を置く、というイメージです。

  • 都道府県・指定都市(政令で定められた大きな市)→ 人事委員会が必ず必要
  • 人口15万以上の市・特別区 → 人事委員会公平委員会、どちらか
  • 人口15万未満の市・町村・組合公平委員会
大きな都市には人事委員会の看板、中くらいの街には人事委員会と公平委員会どちらかの看板、小さな町には公平委員会の看板
団体の大きさで置く委員会が変わる
📜 地方公務員法第9条の2第1項

「人事委員会又は公平委員会は、三人の委員をもつて組織する。」

どちらの委員会も3人の委員で組織します。働き方には差があって、人事委員会の委員は常勤(フルタイム)でも非常勤でもよいのに対し、公平委員会の委員は非常勤です。

これは仕事の量が違うからです。人事委員会は採用試験の実施まで担当するので毎日忙しく、公平委員会はもめごとが起きたときに集まるのが中心、というちがいがあります。

左は人事委員会の3人が書類と試験問題に囲まれて毎日働く場面で常勤も非常勤も、右は公平委員会の3人が必要なときに集まって話し合う場面で非常勤
どちらも委員は3人。働き方にちがいがある
ここ注意

「指定都市は公平委員会を置けば足りる」「委員はいずれも常勤でなければならない」は、いずれもまちがいです。

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委員会は「チェック係」。採る・動かすのは任命権者

📜 地方公務員法第8条第1項(抜粋)

「人事委員会は、次に掲げる事務を処理する。
…五 給与、勤務時間その他の勤務条件に関し講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告すること。
六 職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこと。
…九 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
十 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。」

つまり人事委員会の仕事は、規則をつくる、勤務条件の改善要求を審査する、不利益処分への訴えに判断を下す、採用試験・選考を実施する、給与などについて議会と長に勧告する、必要なら証人を呼ぶ、といったものです。

ここが大事なところで、職員を任命するのは任命権者であって、委員会ではありません。委員会は「試験をする・審査する・意見を言う」係で、「採る・動かす」係ではないのです。

たとえるなら、試験の運営と審判をする人が委員会、選手を起用する監督が任命権者、というイメージです。審判が選手を起用してしまったら、公平さが保てませんよね。

左は審判が試験問題とチェックリストを持つ委員会、右は選手を起用する監督が任命権者。審判が選手を起用しようとする場面には大きなバツ印
審判は選手を起用しない

なお公平委員会は、改善要求の審査と訴えへの判断が中心で、試験や任用は原則行いません。

ここ注意

「職員の任命は人事委員会の権限である」はまちがい。任命するのは任命権者です。

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納得できないときの2つの窓口

職員が声を上げる方法は、大きく2つあります。まず条文を見てみましょう。

📜 地方公務員法第49条の2第1項(審査請求)

「前条第一項に規定する処分を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求をすることができる。」

📜 地方公務員法第46条(勤務条件に関する措置の要求)

「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。」

つまり、こう使い分けます。

  • すでに受けてしまった処分が納得できない(懲戒など、自分の意に反する不利益な処分)→ 審査請求
  • これからの働き方を良くしてほしい(給与・勤務時間などの勤務条件)→ 措置要求

過去を振り返るのが審査請求、これから先を見るのが措置要求、というイメージです。そしてどちらの窓口も「人事委員会または公平委員会」。ここは1つ覚えれば両方に効きます。

左は処分の通知書を手に過去を振り返る職員で審査請求、右はカレンダーと時計を見て未来を向く職員で措置要求。中央に人事委員会・公平委員会の建物
向く方向は逆でも、行き先は同じ

出題で最もまちがえやすいのが、人事院との取りちがえです。人事院は国家公務員のための機関であって、地方公務員の窓口ではありません。「地方の職員は、地方に置かれた委員会へ」と押さえておきましょう。お金の使い方をチェックする監査委員でもありません。

3つの窓口のうち中央の人事委員会・公平委員会に緑の矢印、左の人事院と右の監査委員への矢印には赤いバツ印
向かう先は真ん中の窓口

なお、措置要求の申出を故意に妨げた人には罰則もあります。声を上げること自体を守るための規定です。

ここ注意

「不利益処分の審査請求は人事院に対して行う」「監査委員に対して行う」は、いずれもまちがいです。

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罰則があるもの・ないもの

ここで、第3回に出てきた区別がもう一度登場します。

  • 懲戒=職場の中のペナルティ(戒告・減給・停職・免職)
  • 罰則=裁判で科される刑罰

義務違反はすべて懲戒の対象になり得ますが、刑罰まで科されるのは、法律が特に定めたものだけです。

  • 罰則がある…守秘義務違反(秘密をもらす)、平等取扱いの原則違反、争議行為のあおり・そそのかし、措置要求の申出を故意に妨げた者、証人喚問に従わなかった者など
  • 罰則がない職務専念義務違反(懲戒の対象にはなる)
上段は罰則ありとして秘密の受け渡し・差別・争議のあおり・相談の妨害の4場面、下段は懲戒のみとして居眠りする職員に上司が書面を渡す場面
刑罰まで科されるのは、法律が特に定めたものだけ

まじめに働かなかったこと自体は刑罰の対象にはならないけれど、秘密をもらしたり、人を差別したり、声を上げるのを妨げたりすることは、社会全体に関わるので刑罰の対象になる。そんな線引きだと考えると腑に落ちます。

ここ注意

「職務専念義務違反には罰則がある」「守秘義務違反には罰則がない」は、いずれもまちがいです。

★ ここだけ覚えればOK ★ 人事機関と権利保障は3カードで!
都道府県・指定都市は人事委員会

公平委員会の委員は非常勤

窓口は委員会

審査請求も措置要求も人事委員会または公平委員会(人事院ではない)

専念義務違反は罰則なし

守秘義務違反などには罰則がある

📒 この記事のまとめ

人事委員会・公平委員会は、人事を外側からチェックし、職員の声を受け止める機関です。

  • 都道府県・指定都市は人事委員会が必置。人口15万以上の市・特別区はどちらか、15万未満の市町村・組合は公平委員会
  • 委員は3人。人事委員会の委員は常勤又は非常勤、公平委員会の委員は非常勤
  • 委員会の権限は、規則制定・措置要求の審査・審査請求の裁決・試験や選考の実施・勧告など。職員の任命は含まれない
  • 不利益処分への審査請求も、勤務条件の措置要求も、窓口は人事委員会又は公平委員会(人事院ではない)
  • 措置要求の申出を故意に妨げた者には罰則がある
  • 守秘義務違反・平等取扱い違反などには罰則があるが、職務専念義務違反には罰則がない

「置かれる委員会」「窓口はどこか」「罰則があるか」の3点を押さえておきましょう。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

人事委員会と公平委員会の設置の組合せとして、誤っているものはどれか。

  1. 都道府県……人事委員会
  2. 指定都市……公平委員会
  3. 特別区……人事委員会又は公平委員会
  4. 町村……公平委員会
💡 ヒント

いちばん大きな街には、どちらの看板が立っていましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:B

都道府県と指定都市は、条例で人事委員会を置くものとされています(第7条第1項)。「公平委員会」とするBが誤りです。

問 2

人事委員会・公平委員会に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 委員会は3人の委員をもって組織する
  2. 人事委員会の委員は、常勤又は非常勤とする
  3. 公平委員会の委員は、非常勤とする
  4. 人事委員会・公平委員会の委員は、いずれも常勤でなければならない
💡 ヒント

もめごとが起きたときに集まる委員会は、毎日出勤していたでしょうか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

人事委員会の委員は常勤又は非常勤、公平委員会の委員は非常勤とされています。「いずれも常勤」とするDが誤りです。

問 3

人事委員会の権限に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 職員の任命
  2. 勤務条件に関する措置要求の審査
  3. 不利益処分の審査請求に対する裁決
  4. 職員の競争試験及び選考の実施
💡 ヒント

審判と監督、選手を起用するのはどちらでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:A

職に欠員を生じた場合に職員を任命するのは任命権者の権限です(第17条第1項)。「職員の任命」は人事委員会の権限ではありません。

問 4

地方公務員が、その地位や給与に関し意に反して著しく不利益な処分を受けた場合、審査請求すべき機関はどれか。

  1. 監査委員
  2. 人事院
  3. 人事委員会又は公平委員会
  4. 知事又は市町村長
💡 ヒント

人事院は、どの公務員のための機関でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

不利益処分を受けた職員は、人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査請求ができます(第49条の2第1項)。人事院は国家公務員のための機関です。

問 5

地方公務員法上、罰則が定められていないものはどれか。

  1. 守秘義務に違反して秘密を漏らした者
  2. 平等取扱いの原則に違反する差別をした者
  3. 勤務条件に関する措置要求の申出を故意に妨げた者
  4. 職務専念義務に違反した者
💡 ヒント

職場の中のペナルティで終わるのは、どれでしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

職務専念義務違反は懲戒処分の対象ですが、罰則の規定はありません。ほかの3つには罰則があります。

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