前回までは「どうやって職員になるか」という入り口の話でした。
ここからは、職員になったあとに守るルール=服務(ふくむ)に入ります。仕事中の心がまえから、知ってしまった秘密の扱いまでを決めたルールです。
今回も、条文を一度そのまま読んでから、かみ砕いていきます。
そもそも「服務」ってなに?
「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」
つまり、職員は「みんなのために働く人」だということです。特定の誰か(お世話になった人、支持してくれた人、上司個人)のために働くのではありません。この一文が、服務のすべての土台になります。
「職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
つまり、守るのはルール(法令・条例・規則など)と上司の職務上の命令の2本立てです。この2つが、これから見ていく細かい義務の土台になります。
職務専念義務と、その免除(第35条)
「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」
つまり、勤務時間中は、時間も注意力もすべてその仕事に向けなさい、ということです。これを職務専念義務といいます。
ただし、まったく外せないわけではありません。研修に出るとき、休暇をとるとき、適法な交渉に出るときなどは、この義務が外されます(免除)。
ここで大事なのが、その免除を決められるのは「法律または条例」だけだという点です。規則や要綱では外せません。仕事につながれた鎖を開ける鍵は、「法律」と「条例」の2本しかない、とイメージしてください。
「職務専念義務の免除は規則で定める」はまちがい。条文どおり法律又は条例です。
違反したらどうなる?「懲戒」と「罰則」のちがい
ここで、よく混ざってしまう2つの言葉を整理します。
- 懲戒処分=職場の中でのペナルティ。戒告・減給・停職・免職の4つ
- 罰則=刑罰。つまり裁判で科される刑(懲役や罰金など)
職務専念義務に違反すると、懲戒処分の対象にはなりますが、罰則(刑罰)はありません。一方で、このあと見る守秘義務違反や、平等取扱いの原則違反には、罰則の規定があります。
「職務専念義務に違反した者には罰則が科される」はまちがい。懲戒○・罰則×で覚えましょう。
秘密を守る義務(第34条)
「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者…の許可を受けなければならない。
3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。」
つまり、仕事を通じて知った秘密は外に出してはいけません。しかも、退職して職員でなくなった後も、この義務は続きます。「辞めたから話してもいい」は通用しません。
また、裁判などで証人や鑑定人になり、職務上の秘密にあたることを話す場合には、任命権者の許可が必要です。ただしこの許可は、法律に特別の定めがある場合を除いて拒むことができないとされています。裁判の妨げにならないようにするためです。
なお「秘密」とは、一般に知られていない事実であって、それを知らせることが誰かの利益を害すると客観的に認められるものをいいます。本人が「これは秘密だ」と思っているだけでは足りません。
そして、いちばんまちがえやすいのが漏らしたときの根拠です。職員が秘密を漏らすと、懲戒処分に加えて刑事罰の対象にもなりますが、それは地方公務員法第34条違反(罰則は第60条)です。刑法の秘密漏示罪ではありません。刑法のその規定は、医師・薬剤師・弁護士・宗教者などの職業の人に向けられたもので、地方公務員は入っていないからです。
「刑法の秘密漏示罪で処罰される」「退職後は守秘義務を負わない」「職務上の秘密の発表に許可は不要」は、いずれもまちがいです。
法律または条例。規則・要綱では外せない
守秘義務違反には罰則がある
漏えいは地公法違反。刑法の秘密漏示罪ではない
📒 この記事のまとめ
服務の土台は「全体の奉仕者」。そのうえで、勤務中の専念と、秘密の管理が求められます。
- 職員は全体の奉仕者として勤務し、法令等と上司の職務上の命令に従う(第30条・第32条)
- 勤務時間中は職務に専念する。免除の根拠は法律又は条例(規則・要綱ではない)
- 職務専念義務違反は懲戒処分の対象。ただし罰則(刑罰)はない
- 職務上知り得た秘密は、退職後も漏らしてはならない
- 証人等として職務上の秘密を発表するには任命権者の許可が必要。その許可は原則として拒めない
- 漏えいは地方公務員法第34条違反(罰則は第60条)。刑法の秘密漏示罪ではない
「どこまでが懲戒で、どこからが刑罰か」を分けて覚えると、この範囲はすっきりします。
確認問題(全5問)
問 1
次のうち、地方公務員法上の罰則が定められていない(罰則がない)ものはどれか。
- 平等取扱いの原則に違反する差別をした者
- 守秘義務に違反して秘密を漏らした者
- 職務専念義務に違反する行為を行った者
- 勤務条件に関する措置の要求の申出を故意に妨げた者
💡 ヒント
職場の中のペナルティ(懲戒)と、裁判で科される刑(罰則)を分けて考えましょう。
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正解:C
職務専念義務違反は懲戒処分の対象になりますが、罰則の規定はありません。ほかの3つには罰則の規定があります。
問 2
職務専念義務に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 職務専念義務の免除を定めるのは、規則又は要綱である
- 職務専念義務の免除を定めるのは、法律又は条例である
- 職務専念義務に違反した者は、必ず刑事罰を科される
- 職務専念義務は、上司の口頭の命令によってのみ免除される
💡 ヒント
鎖を開ける鍵は2本だけ、というイラストを思い出してください。
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正解:B
免除の根拠は法律又は条例です(第35条)。規則・要綱では免除できず、違反しても罰則はありません(懲戒の対象)。
問 3
職員の秘密を守る義務に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 職務上知り得た秘密を漏らすことは、刑法の秘密漏示罪として処罰される
- 職務上知り得た秘密は、退職後であっても漏らしてはならない
- 法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合は、任命権者の許可を受けなければならない
- 秘密とは、一般に知られていない事実で、知らせることが一定の利益の侵害になると客観的に認められるものをいう
💡 ヒント
刑法のその規定が向けられているのは、どんな職業の人たちでしたか。
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正解:A
地方公務員が職務上の秘密を漏らした場合は、地方公務員法第34条違反(罰則は第60条)です。刑法の秘密漏示罪は医師・弁護士・宗教者等に適用される規定で、地方公務員は含まれません。
問 4
服務に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならない
- 職員は、法令等及び上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない
- 守秘義務は、その職を退いた後も同様に及ぶ
- 職務専念義務違反は、懲戒処分のほか、必ず刑事罰の対象ともなる
💡 ヒント
「必ず」という言い切りに注目してみましょう。
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正解:D
職務専念義務違反は懲戒処分の対象ですが、罰則の規定はありません。「必ず刑事罰の対象」とする記述が誤りです。
問 5
職務上の秘密の発表に関する記述として、妥当なものはどれか。
- 証人として職務上の秘密を発表する場合でも、許可を受ける必要はない
- 許可を受ける相手は、その地方公共団体の議会である
- 許可を受ける相手は住民の代表者であり、住民投票による同意を要する
- 任命権者の許可が必要であり、その許可は法律に特別の定めがある場合を除き拒むことができない
💡 ヒント
条文の第2項と第3項をあわせて読んでみましょう。
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正解:D
法令による証人・鑑定人等として職務上の秘密を発表するには任命権者の許可が必要で(第34条第2項)、その許可は法律に特別の定めがある場合を除き拒むことができません(同条第3項)。


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