いよいよ憲法シリーズの最終回。今回は憲法改正と最高法規を見ていきます。
ポイントは、「憲法を変えるには、どんな手続が必要か」と「憲法を守る義務を負うのは誰か」。とくに数字(3分の2・過半数)と、尊重擁護義務の対象が、ひっかけの定番です。
憲法改正の手続/最高法規性/尊重擁護義務の3つを整理します。
憲法改正の手続(第96条)
日本国憲法は、硬性憲法(こうせいけんぽう)です。これは、普通の法律よりも、改正の手続がきびしい憲法のこと。簡単には変えられないようにしてある、ということです。
改正の手続は、次の3ステップです。
📌 改正の3ステップ
① 国会が発議する…各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要。
② 国民投票で承認…過半数の賛成が必要(直接民主制のひとつ)。
③ 天皇が公布する…国民の名で、内閣の助言と承認により公布。
ふだんの法律は「出席議員の過半数」で成立しますが、憲法改正の発議は「総議員の3分の2以上」と、ハードルがぐっと高くなっています。
発議=総議員の3分の2/承認=過半数。数字を入れ替えるひっかけが定番です(「国民投票の承認に3分の2が必要」は誤り。承認は過半数)。また、憲法改正の発議に衆議院の優越はありません(両院対等)。国民投票で承認された時点で確定し、その後にもう一度国会で審議する必要はありません。
最高法規性(第98条)
憲法は、国の「最高法規(さいこうほうき)」です。これは、国のルールの中でいちばん上に立つ、最強のルールという意味。
したがって、憲法に反する法律・命令・国務に関する行為は、効力を持ちません(無効)(第98条1項)。たとえ国会がつくった法律でも、憲法に違反していれば無効です。(この最高法規性を守るのが、前に学んだ裁判所の違憲審査権でした。)
📌 条約・国際法規の遵守
日本が結んだ条約や、確立された国際法規は、誠実に遵守しなければなりません(第98条2項)。「国際法規は守らなくてよい」は誤りです。
憲法尊重擁護義務(第99条)
最後は憲法尊重擁護義務(けんぽうそんちょうようごぎむ)。憲法を尊重し、守る義務のことです。
ここが超頻出のひっかけ。この義務を負うのは、天皇・摂政・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員です。そして大事なのは——「国民」は、この義務を負う対象に含まれていません。
📌 なぜ国民は含まれない?
意外に感じるかもしれませんが、これは憲法の根本的な考え方(立憲主義)の表れです。憲法はそもそも、国家権力を縛り、国民の権利を守るためのもの。だから「憲法を守りなさい」と義務づけられるのは権力を持つ側(公務員など)であって、守られる側である国民ではない、というわけです。「一般国民も憲法尊重擁護義務を負う」は誤りです。
硬性憲法。発議に衆議院の優越なし/承認で確定(再審議不要)
条約・国際法規は誠実に遵守
立憲主義(憲法は国家権力を縛るもの)
📒 この記事のまとめ
今回で憲法シリーズは完結。憲法改正と最高法規を見てきました。
- 改正=発議は総議員の3分の2・承認は国民投票の過半数・公布は天皇(硬性憲法)
- 発議に衆議院の優越はない(両院対等)/承認で確定(再審議不要)
- 憲法は最高法規で、反する法律・命令は無効/条約・国際法規は誠実に遵守
- 尊重擁護義務を負うのは公務員等で、国民は含まれない(立憲主義)
第1回の「憲法とは何か」から始まり、人権・統治機構・財政・地方自治、そして改正・最高法規まで——憲法の骨組みをひと通り押さえられました。お疲れさまでした。
確認問題(全5問)
問 1
憲法改正の発議に関する記述として、正しいものはどれか。
- 各議院の出席議員の過半数の賛成で発議できる
- 各議院の総議員の3分の2以上の賛成で発議する
- 衆議院の議決のみで発議できる
- 内閣が発議する
💡 ヒント
硬性憲法の「高いハードル」。発議に必要なのは過半数か、3分の2以上か。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
憲法改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議します(第96条1項)。出席議員の過半数(A)や衆議院の議決のみ(C)では発議できず、発議するのは内閣ではなく国会です(D)。
問 2
憲法改正の手続に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 国民投票で過半数の賛成を得て承認される
- 日本国憲法は硬性憲法である
- 国民投票の承認には、3分の2以上の賛成が必要である
- 国民の承認を経たのち、天皇が国民の名で公布する
💡 ヒント
「発議=3分の2/承認=過半数」。数字を入れ替えた選択肢に注意。
✅ 正解と解説を見る
正解:C
国民投票での承認は「過半数」であり、3分の2ではありません(3分の2は発議の要件)。よってCが誤りです。日本国憲法は硬性憲法で、承認後は天皇が国民の名で公布します。
問 3
憲法改正に関する記述として、正しいものはどれか。
- 憲法改正の発議について、両院は対等である
- 憲法改正の発議には、衆議院の優越がある
- 国民投票で承認されても、再度国会の議決が必要である
- 憲法改正に国民投票は不要である
💡 ヒント
衆議院の優越が及ばない事項として、以前にも出てきました。
✅ 正解と解説を見る
正解:A
憲法改正の発議には衆議院の優越はなく、両院は対等です(各議院の総議員の3分の2以上が必要)。よってBは誤り。国民投票で承認された時点で確定し再議決は不要(C誤り)、国民投票も必要です(D誤り)。
問 4
憲法の最高法規性に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 憲法は、国の最高法規である
- 国会が制定した法律は、憲法に反していても有効である
- 憲法に反する法律・命令は、効力を有しない
- 日本が締結した条約や確立された国際法規は、誠実に遵守する
💡 ヒント
憲法を頂点とするピラミッド。頂点に反するルールはどうなりましたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:B
憲法は最高法規であり、これに反する法律・命令は効力を有しません(第98条1項)。国会の法律でも憲法に反すれば無効なので、Bが誤りです。条約・国際法規は誠実に遵守します(D)。
問 5
憲法尊重擁護義務(第99条)に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 国務大臣は、憲法尊重擁護義務を負う
- 国会議員は、憲法尊重擁護義務を負う
- 裁判官は、憲法尊重擁護義務を負う
- 一般国民は、憲法尊重擁護義務を負う
💡 ヒント
憲法は「誰を縛る」ものでしたか(立憲主義)。守る義務を負うのは、守られる側でしたか。
✅ 正解と解説を見る
正解:D
憲法尊重擁護義務を負うのは、天皇・摂政・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員であり、一般国民は含まれません(第99条)。これは、憲法が国家権力を縛るものであるという立憲主義の表れです。よってDが誤りです。


コメント