前回は、内閣の構成と議院内閣制を見ました。今回はその続きです。
取り上げるのは、内閣総理大臣の地位と権限、そして内閣の職務と政令。
ポイントは、「指名と任命はだれがやるのか」「総理は大臣をどこまで動かせるのか」、そして「政令で罰則を作れるのはどんなときか」。ひっかけが集中する分野です。
内閣総理大臣の地位
内閣総理大臣は、内閣の「首長(しゅちょう)」です。首長とは、そのチームのトップ・リーダーのこと。総理は、ほかの国務大臣の上に立つ存在です。
ここは歴史と比べると分かりやすいところ。明治憲法(大日本帝国憲法)の時代、総理大臣は「同輩中の首席(どうはいちゅうのしゅせき)」——つまり「大臣たちの中の代表者」にすぎず、ほかの大臣と対等な立場でした。
これに対して、今の日本国憲法では、総理大臣に強い権限が与えられています。「みんなの代表」から「明確なトップ」へと、立場が大きく変わったのです。
📌 総理の資格
内閣総理大臣は、文民であり、かつ国会議員でなければなりません。
内閣総理大臣の権限
総理大臣には、トップとして次の権限があります。試験で頻出のポイントです。
📌 指名と任命の流れ
総理大臣が選ばれる流れは、国会議員の中から、国会の議決で「指名」され(第67条1項)、そのうえで指名された人を天皇が「任命」します(第6条1項)。
ここが定番のひっかけ。指名するのは国会、任命するのは天皇。「総理大臣を任命するのは国会である」は誤りです。「指名=国会/任命=天皇」とセットで覚えましょう。
📌 国務大臣の任免権
総理大臣は、国務大臣を任命します。その過半数は国会議員でなければなりません(全員でなくてよい/第68条1項)。
さらに、総理大臣は国務大臣を任意に罷免(ひめん)できます(第68条2項)。「罷免」とはやめさせること。これは総理の一存ででき、閣議の決定や国会の同意は不要です。「国務大臣の罷免には閣議の決定が必要」は誤りです。
📌 訴追同意権
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追(そつい)されません(第75条)。「訴追」とは刑事裁判にかけること。ただし、総理の同意があれば訴追されます。「国務大臣は在任中いかなる場合も訴追されない」は誤りです。
内閣の職務と政令(第73条)
内閣は、行政のトップとして、第73条でさまざまな職務を担っています。主なものは次のとおりです。
- 法律を誠実に執行し、国務を総理する
- 外交関係の処理、条約の締結(事前または事後に国会の承認が必要)
- 予算の作成・国会への提出
- 政令の制定
- 恩赦(おんしゃ)の決定
📌 政令と罰則
「政令(せいれい)」とは、内閣が定めるルールのこと。法律を実施するために作られます。
注意点は罰則。政令には、原則として罰則を設けられません。ただし、法律の委任がある場合に限り、政令で罰則を設けられます(第73条6号但書)。「政令にはいかなる場合も罰則を設けられない」も、「政令でも自由に罰則を設けられる」も、どちらも誤りです。
📌 条約・予算・連署
条約の締結は内閣の仕事ですが、事前または事後に国会の承認が必要です。「条約の締結に国会の承認は不要」は誤りです。
また、予算を「作成」するのは内閣、それを「議決」するのは国会です(作る人と決める人が違う)。なお、法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署(れんしょ)します(第74条)。
予備費の支出は「事後」に国会の承諾を得ます(第87条)。「事前」ではありません。また、国会が議決した法律案に対して、内閣に拒否権はありません。
総理は国会議員から国会が指名、天皇が任命
閣議決定も国会同意も不要/過半数が国会議員/訴追には総理の同意
条約は国会承認が必要/予備費は事後承諾
📒 この記事のまとめ
今回は、内閣総理大臣の地位・権限と、内閣の職務・政令を見てきました。
- 総理は内閣の「首長」で強い権限を持つ(明治憲法の「同輩中の首席」とは違う)
- 指名は国会・任命は天皇/国務大臣は任意に罷免できる(過半数が国会議員)
- 国務大臣の訴追には総理の同意が必要
- 政令の罰則は法律の委任があればOK/条約は国会承認/予備費は事後承諾
次回は内閣の最終回として、内閣の総辞職と衆議院の解散を整理します。
確認問題(全5問)
問 1
内閣総理大臣の指名・任命に関する記述として、正しいものはどれか。
- 内閣総理大臣は、国会が指名し、天皇が任命する
- 内閣総理大臣は、国会が指名し、国会が任命する
- 内閣総理大臣は、天皇が指名し、天皇が任命する
- 内閣総理大臣は、国民が直接選挙で選ぶ
💡 ヒント
「指名」と「任命」を、それぞれ誰が行うかを分けて思い出してください。
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正解:A
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名され(第67条1項)、天皇が任命します(第6条1項)。「指名=国会/任命=天皇」が基本です。任命を国会が行うわけでも、国民が直接選ぶわけでもありません。
問 2
内閣総理大臣による国務大臣の罷免に関する記述として、正しいものはどれか。
- 国務大臣を罷免するには、閣議の決定が必要である
- 国務大臣を罷免するには、国会の同意が必要である
- 国務大臣を罷免するには、天皇の認証だけで足り、総理の判断は不要である
- 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる
💡 ヒント
罷免に、閣議決定や国会の同意は必要だったかを思い出してください。
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正解:D
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免できます(第68条2項)。これは総理の一存ででき、閣議の決定や国会の同意は不要です。明治憲法下の「同輩中の首席」と異なり、強い権限が与えられている点の表れです。
問 3
国務大臣の訴追に関する記述として、正しいものはどれか。
- 国務大臣は、在任中いかなる場合も訴追されない
- 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない
- 国務大臣の訴追には、国会の同意が必要である
- 国務大臣は、在任中いつでも自由に訴追される
💡 ヒント
訴追に「誰の同意」が必要だったかを思い出してください。
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正解:B
国務大臣は、在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されません(第75条)。逆にいえば、総理の同意があれば訴追されるので、「いかなる場合も訴追されない」(A)は誤りです。国会の同意が必要なわけでもありません(C)。
問 4
政令に関する記述として、正しいものはどれか。
- 政令には、いかなる場合も罰則を設けることができない
- 政令には、法律の委任がある場合に限り、罰則を設けることができる
- 政令には、法律の委任がなくても自由に罰則を設けられる
- 政令は、国会が制定する
💡 ヒント
政令の罰則は「原則禁止、ただし◯◯があれば可」という形でした。
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正解:B
政令は、特に法律の委任がある場合に限り、罰則を設けることができます(第73条6号但書)。一切設けられないわけでも(A)、委任なく自由に設けられるわけでもありません(C)。政令を制定するのは内閣です(D)。
問 5
内閣の職務に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 条約の締結には、事前または事後に国会の承認が必要である
- 予算を作成するのは内閣であり、議決するのは国会である
- 予備費の支出は、事前に国会の承諾を得なければならない
- 法律および政令には、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する
💡 ヒント
予備費の承諾は「事前」だったか「事後」だったかを思い出してください。
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正解:C
予備費の支出は「事後」に国会の承諾を得るものです(第87条)。「事前」とするCが誤りです。条約の締結には国会の承認が必要(A)、予算の作成は内閣・議決は国会(B)、法律・政令には主任の国務大臣の署名と総理の連署が必要(D)で、いずれも正しい記述です。


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