第4回:議会と執行機関はどう役割分担してる?地方公共団体のしくみをやさしく解説

地方自治法
議会と執行機関 ― 地方公共団体のしくみをやさしく解説

これまで、地方公共団体の種類や、条例・規則といったルールの作り方を見てきました。

今回は、地方公共団体の中で「誰が何を決めて、誰が実行するのか」という役割分担の話です。決める役割を持つのが議会、実行する役割を持つのが執行機関(長・委員会・委員)です。

この章でいちばん大事なのは、「これは議会の権限か、それとも長の権限か」を正確に振り分けられるようになることです。

1

そもそも「議会」と「執行機関」って何?

地方公共団体には、住民の代表として話し合い、意思を決める「議会」と、その決定を実際に実行する「執行機関」があります。議会は「決める」役割、執行機関は「実行する」役割です。

そもそも議会と執行機関の役割って?議会は決める役割、執行機関(知事・市長、教育委員会、監査委員など)は実行する役割。どちらも住民の直接選挙で選ばれる=二元代表制
議会=決める役割/執行機関=実行する役割(二元代表制)

議会の議員も、執行機関のトップである長(知事・市町村長)も、どちらも住民の直接選挙で選ばれます。これを二元代表制と呼びます。

執行機関は、長だけではありません。長のほかに、教育委員会などの「委員会」や、監査委員のような「委員」も執行機関の一員です。ひとつの組織に権限を集中させず、複数の機関に役割を分ける、という発想です(執行機関の多元主義)。

2

議会の議決権と長の権限

条例を作ったり、予算を決めたりするのは議会の権限。決まった予算を実際に組み立てて実行するのは、長の権限です。

議会が決められること(議決事件)。条例の制定改廃、予算を定める、決算の認定、地方税の賦課徴収、重要な契約の締結、財産の取得・処分、損害賠償額の決定など
これらはすべて議会が「決める」こと

一番のひっかけになるのが「予算」です。まず長が予算を組み立て(調製)、議会に提出。議会がそれを審議して「決める」(議決する)。決まった予算を実際に使う(執行する)のは、また長の仕事です。

予算の流れ:長が予算を調製→議会に提出→議会が議決→長が執行する。議員は議案を提出できるが、予算だけは提出できない
定める=議会、調製・執行=長

つまり、予算を「定める」のは議会の仕事ですが、予算を「調製する・執行する」のは長の仕事、という役割分担になっています。しかも、議員は条例案などの議案を提出できますが、予算案だけは提出できません。予算の提案権は長だけが持っています。

もうひとつ注意したいのが「専決処分の承認」です。専決処分とは、本来議会が決めるべきことを、緊急時などに長が代わりに処理すること。これに対して議会が「承認する」手続がありますが、これは議会の「議決権」ではなく、長の仕事ぶりをチェックする「監視権(承認権)」に分類されます。

専決処分と議会の承認(監視権)。緊急時などに長が専決処分(代わりに処理)→議会が承認(監視する)→承認されなくても、すでに行われた専決処分の効果自体は変わらない
専決処分の承認=監視権。議決権ではない

承認が得られなくても、すでに行われた専決処分の効果自体は変わりません。たとえるなら、議会は「何をするか決める会議」、長は「決まったことを実際に動かす実行部隊」というイメージです。

⚠ ひっかけ注意

「予算を調製し執行することは議会の権限」は誤り(長の権限)。「議員は予算案を提出できる」も誤りで、予算は提出できません。「条例の制定改廃は長の専属権限」も誤りで、議会の権限です。

3

執行機関の多元主義と行政委員会

執行機関は長だけでなく、委員会や委員もあります。それぞれ独立して勝手に動くのではなく、長の「所轄」のもとで一体となって動きます。

執行機関の多元主義と行政委員会。執行機関は長だけでなく、教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会(公平委員会)・監査委員も含む。それぞれ独立して動くのではなく、長の所轄のもとで一体となって動く
独立ではなく、長の所轄の下で一体として

執行機関には、長のほかに、教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会(または公平委員会)・監査委員などの「委員会」「委員」が含まれます。長ひとりに権限が集中しすぎないようにするための仕組みです。ただし、長からまったく独立してバラバラに動いてよいわけではなく、長の所轄のもとで、お互いに連絡を取り合いながら一体となって行政の機能を発揮しなければなりません。

行政委員会には、どの地方公共団体に置かれるかによる区別があります。

行政委員会の設置区分。都道府県・市町村を問わずすべてに設置=教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会(公平委員会)・監査委員。市町村のみに設置=農業委員会・固定資産評価審査委員会。都道府県のみに設置=公安委員会・労働委員会・収用委員会など
市町村だけに置く行政委員会といえば、農業委員会

教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会(公平委員会)・監査委員は、都道府県・市町村を問わず、すべての地方公共団体に置かれます。これに対して、農業委員会と固定資産評価審査委員会は、市町村だけに置かなければならない委員会です。一方、公安委員会・労働委員会・収用委員会などは、都道府県だけに置かれる委員会です。

⚠ ひっかけ注意

「長以外の執行機関は、長の所轄を受けずに独立して機能を発揮する」は誤り(所轄の下に一体として)。「公安委員会は市町村のみに置く」も誤りで、都道府県のみです(市町村のみは農業委員会)。

4

長の職務代理・権限の委任

長が事故にあったり欠けたりしたときは、副知事・副市町村長が代わりを務めます。ただし、代わりに行えるのは長の仕事すべてではありません。

長の職務代理・権限の委任。長に事故・欠員があれば副知事・副市町村長が代理。権限の委任・臨時代理は一部のみOK、全部はNG。議会の解散、副知事・副市町村長の選任は、長本人の政治的判断なので代理できない
代理できるのは日常の職務。政治的判断や身分に関わる事項は代理できない

長に事故があったとき、または長の職が欠けたときは、副知事や副市町村長が長の職務を代理します。また、長は、自分の権限に属する事務の一部を、部下である職員に任せたり(委任)、一時的に代わりに行わせたり(臨時代理)することもできます。ただし、権限の「全部」を任せることはできず、あくまで「一部」に限られます。

ここで注意したいのが、職務代理には対象外となる事項がある、という点です。職務代理は、長という「人」そのものの身分や資格を代わりに引き受けるものではありません。そのため、議会を解散するかどうかの判断や、副知事・副市町村長を選ぶといった、長本人の政治的な判断に委ねられた事項は、代理の対象になりません。

たとえるなら、社長が入院している間、副社長が日常業務の大半を代行できても、「会社そのものを解散するかどうか」「新しい役員を誰にするか」といった重大な決断までは代わりにできない、というイメージです。

⚠ ひっかけ注意

「長に事故があるときの職務代理は、長の全ての職務が対象となる」は誤り(議会の解散・副知事等の選任は対象外)。「長は権限の全部を補助機関に委任できる」も誤りで、委任できるのは一部です。

★ ここだけ覚えればOK ★ 議会と執行機関は3カードで!
議会=決める、長=実行

予算は「定める」議会と「調製・執行」する長で分担。予算案は長だけが提出できる

執行機関は長+委員会+委員

市町村のみ=農業委員会、都道府県のみ=公安委員会など

職務代理は副知事・副市町村長

議会の解散・副知事等の選任は代理できない

📒 この記事のまとめ

地方公共団体では、「決める」役割を議会が、「実行する」役割を執行機関(長・委員会・委員)が担っています。

  • 議会=決める、長=実行する(予算は特にこの区別が重要。予算案は長のみ提出可)
  • 専決処分の承認は議決権ではなく監視権(承認がなくても処分の効果は変わらない)
  • 執行機関は長+委員会+委員。市町村のみ=農業委員会、都道府県のみ=公安委員会等
  • 職務代理(副知事・副市町村長)でも、議会の解散・副知事等の選任は代理できない

「誰の権限か」を正確に振り分けられるようになれば、この分野は確実に得点源になります。

📝 CHECK

確認問題(全5問)

問 1

地方自治法が定める議会の議決権に分類されるものとして、誤っているものはどれか。

  1. 条例の制定
  2. 決算の認定
  3. 長の専決処分の承認
  4. 重要な契約の締結
💡 ヒント

専決処分の承認は、長を「チェックする」権限でした。議決権と同じ性質でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

長の専決処分の承認は、議会の監視権(承認権)の一つであり、純粋な議決権とは性質が異なります。議会の承認が得られなくても専決処分の効果に影響はありません。他は議決事件(96条1項)です。

問 2

予算に関する記述として、妥当なものはどれか。

  1. 予算を調製し執行するのは議会の権限である
  2. 議員は予算案を議会に提出することができる
  3. 予算の提案権は地方公共団体の長にある
  4. 決算の認定は長が単独で行う
💡 ヒント

予算の流れ「調製→議決→執行」の中で、長が担当するのはどの部分でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

予算の調製・執行・提案は長の権限です。議員は議案を提出できますが、予算については提出できません。決算の認定は議会の議決事項です。

問 3

地方自治法が定める執行機関に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 執行機関として普通地方公共団体の長がある
  2. 委員会は執行機関の一つである
  3. 執行機関の附属機関として審査会などが置かれることがある
  4. 長以外の執行機関は、長の所轄を受けずに独立して行政機能を発揮する
💡 ヒント

執行機関の多元主義は、バラバラに動くことを意味していましたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

各執行機関は、長の所轄の下に相互の連絡を図り、一体として行政機能を発揮しなければなりません(自治法第138条の3第2項)。「所轄を受けず独立して」とするDが誤りです。

問 4

法律により、市町村のみに設置しなければならない行政委員会はどれか。

  1. 教育委員会
  2. 公安委員会
  3. 人事委員会又は公平委員会
  4. 農業委員会
💡 ヒント

「市町村だけに置く行政委員会」として真っ先に思い出すべき名前でした。

✅ 正解と解説を見る

正解:D

市町村のみに設置しなければならない行政委員会は農業委員会(自治法第180条の5第3項)と固定資産評価審査委員会です。公安委員会は都道府県のみ、教育・人事等は共通です。

問 5

地方公共団体の長の職務代理などに関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 長に事故があるときは、副知事や副市町村長が職務代理者となる
  2. 長は、権限の一部を補助機関に委任することができる
  3. 長に事故があるときの職務代理は、長の全ての職務が対象となる
  4. 職務代理者は、職務代理者であることを明示して自己の名で職務権限を代理行使する
💡 ヒント

議会の解散や副知事等の選任は、代理できる事項でしたか。

✅ 正解と解説を見る

正解:C

職務代理は長の身分・資格をそのまま代理するものではないため、議会の解散や副知事・副市町村長の選任などは代理の対象となりません(自治法第152条)。「全ての職務が対象」とするCが誤りです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました